エピタキシャル成長

Epitaxial growth えぴたきしゃるせいちょう

解説

エピタキシャル成長とは、半導体製造の薄膜結晶成長技術のひとつで、半導体の単結晶の基板上に、新しく単結晶の薄膜を成長させること。

基板結晶の上に基板結晶と同じ格子定数を持つ結晶を成長させる場合をホモエピタキシャル成長と呼び、格子定数が一致しているため、最も欠陥の少ない良質の結晶が得られる。代表的な例として、シリコンのエピタキシャルウエーハがある。一方、基板結晶と格子定数が異なる、あるいは結晶方位や材質が異なる結晶を成長させる場合をヘテロエピタキシャル成長と呼ぶ。この場合、両者の格子定数などの差がわずかであれば良質な結晶が得られるが、差が大きいと格子不整合によりミスフィット転位と呼ばれる欠陥を生じる。そのため、基板結晶とエピタキシャル結晶層の間にバッファ層と呼ばれる中間層を導入して、ミスフィット転位を入りにくくする工夫がなされることもある。

※エピタキシャル成長の方法には、気相中の成分を基板結晶表面に堆積させる気相エピタキシャル成長(VPE:Vapor Phase EpitaxyまたはCVD:Chemical Vapor Deposition)と、過飽和溶液から基板結晶表面に結晶成分を析出させる液相エピタキシャル成長(LPE:Liquid Phase
Epitaxy)、基板結晶表面に堆積する材料を電子ビーム照射などにより加熱して、基板結晶と同じ結晶構造に変える固相エピタキシャル成長(SPE:Solid Phase Epitaxy)がある。また、超高真空(10-8~10-9Pa)中で目的の結晶を構成する元素あるいは元素を含む材料を加熱蒸発させ、加熱された基板結晶上に結晶を堆積させる分子線エピタキシャル成長(MBE:Molecular BeamEpitaxy)もある。

※青色LEDや白色LED、青紫色半導体レーザなど、GaN系発光素子では、VPEの一種であるMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いて生産するのが一般的である。MOCVDでは有機金属ガスなどを原料に使う。青色LEDであればサファイア基板やSiC基板上に、青紫色半導体レーザであればGaN基板上に、MOCVD装置を使って、GaN系半導体層をエピタキシャル成長させている。