タングステン

tungsten たんぐすてん

解説

タングステンとは、元素記号Wで表す金属元素のこと。
金属の中で最も融点が高いことから、白熱電球フィラメントや、放電ランプ電極に使われる。

原子番号は74、原子量183.84、1気圧での融点は3,653K1)、1気圧での沸点は5,800K1)である。融点が高く、非常に硬く重い金属で、化学的にも安定していることから、多くの分野で用いられる。地殻中に約1ppmしか存在しないと言われ、産業上・軍事上、非常に重要なレアメタルの一種である。

1) 金属データブック(丸善)

 ※製造方法 : 鉄マンガン重石または灰重石を原料とする。鉄マンガン重石はアルカリで、灰重石は塩酸で処理し、湿式で精錬してパラタングステン酸アンモニウムの結晶を作り、気中または水素雰囲気で加熱分解し、酸化タングステンとする。次に水素気流中800~1,200Kで還元して金属タングステン粉とする。金属タングステン紛を50~500MPaでプレス成形後、水素気流中1,300~1,500Kで予備焼結し、電気抵抗加熱で約3,000~3,300Kで焼結する。得られた焼結体をスエージング加工ならびに線引き加工を行い線材とする。線棒以外の製品は焼結体あるいは線棒を素材として、鍛造あるいは圧延により製作する。

※結晶成長 : 冷間で塑性加工したタングステンを焼き鈍しすると、境界を挟む結晶間の転位密度の差に基づく歪みのエネルギー差が駆動力となって、歪みの回復とともに組織中にサブグレインが形成される(一次再結晶)。さらに高温では歪みのない再結晶粒が形成する。すなわち、一次再結晶完了後少数の結晶粒が他の一次再結晶粒を侵食しつつ、選択的に成長する(二次再結晶)。この結晶成長の駆動力は粒界エネルギーである。

※純タングステン : 純タングステンの再結晶粒は、等軸結晶組織となり比較的丸く、線軸に垂直な粒界を多くもつ。このため、純タングステン線で作られたフィラメントコイルは、高温使用においては、フィラメントの半径方向に伸びる結晶粒界での滑りのために、自重など、わずかの外力によって容易に変形(クリープ変形)し、局部的加熱を起こし断線する。このような高温での変形をサグ(垂下)と言い、サグは再結晶粒界の滑りと空孔の拡散に起因する。

※ドープタングステン : これを防ぐために、白熱電球、特にハロゲンランプのように高温で動作するフィラメントにはドープタングステンが使われる。酸化トリウムやカリウムを微量添加したドーブタングステンでは、フィラメントの半径方向の結晶粒成長が抑制されるため、その再結晶粒は加工方向に長く伸びた長大結晶となる。タングステン結晶粒界に細かく分散したThO2は、高温で安定なため、粒界の移動を阻止し、粒成長を抑制して再結晶粒を小さくする。カリウムは、スエージング加工ならびに線引き加工で線の軸方向に伸び分断され、高温で微細なバブルの列を形成し、粒の半径方向への成長を抑制して、加工方向である線軸方向に伸びた長大再結晶粒を形成する。フィラメントの半径方向の粒界成長が抑制されるため、純タングステンに比べて高温での強度が高い。トリウムあるいはカリウムを添加したタングステンの二次再結晶温度は2,000K以上と高い。放電ランプでタングステンを電極に用いる場合、電極に求める機能などにより、ドープタングステンと純タングステンのそれぞれの特徴を生かして使い分けられる。