ウシオ、大気社と共に東京都立大学の「ダイレクトエアーキャプチャ―(DAC)」の研究開発へ参画


ウシオ電機株式会社(本社:東京都、代表取締役社長 内藤 宏治、以下 ウシオ)は、この度、株式会社大気社(本社:東京都、代表取締役社長 長田 雅士、以下 大気社)と共に東京都立大学(学長 大橋 隆哉)の「ダイレクトエアーキャプチャ―(以下 DAC)」の共同研究開発に参画し、大気中の二酸化炭素(CO2)を回収・植物工場などに利用できるDAC装置の開発を開始しましたのでお知らせいたします。

IPCC※1からの指摘にもあるように、気候変動の要因の1つとして、地下から石炭、石油、天然ガスといった炭素を掘り起こすことで発生する大気中のCO2濃度の上昇があげられています。2050年のカーボンニュートラルに向けて地下からの炭素に依存しない社会基盤や技術開発が進められる一方、完全にCO2の放出量をゼロにするために、大気中のCO2を直接回収、利用する技術であるDACが提案されています。しかしこの技術は、大気中の低濃度のCO2(400ppm)を回収するには、効率・コストの面で改善の余地があり、現在、高効率な材料やシステムが望まれています。

そのような中、東京都立大学 大学院理学研究科 化学専攻 山添 誠司教授らの研究グループは、既存技術を大きく凌駕する、非常に高いCO2の吸収特性を持つ材料「イソホロンジアミン」を見出し、DACにとって理想的な物質であることを明らかにしました※2
そこで、ウシオはこの度、東京都立大学のDACの実用化に向けて、CO2の吸収の効率化を支援する吸収材の実装と、CO2の脱離の省エネ化を実現するための集光・集熱技術を活用し、大気社が保有する高効率ガス循環・熱交換システムと組み合わせることで、DACの装置化に取り組みます。

これにより回収したCO2は植物工場やハウス栽培での利用や、農作物や藻工場等のグリーンカーボンにも応用できるほか、燃料・化学品合成に活用することも可能になります。
今回、ウシオと東京都立大学、大気社の3社は、この大気中のCO2をSkyCarbon®と名付け、そのSkyCarbonをカーボンオフセットに活用する「SkyCarbon構想」の実現を目指します。その一環として、まずは大気社グループが保有する植物工場にこのDAC装置を実装 (図1)し、気候変動対策だけでなく食料対策や豊かな生活を可能にする炭素循環型社会に向けて、研究開発や実証実験を開始することで、2030年までの事業化を目標としています。
 

図1:植物工場へのDAC装置の実装
DAC装置は、「大気中のCO2のみを吸収するためのCO2吸収材」、「吸収したCO2回収に必要となる熱源(太陽光活用)」、「熱をCO2吸収材に伝える伝熱技術」、「制御技術」で構成されます。イソホロンジアミンを活用してウシオ独自に固体化したCO2吸収材に、同じくウシオが開発中の円筒型太陽光集熱器を使って太陽光を効率よく熱に変換して電熱し、CO2を低エネルギーで回収します。また、回収したCO2を植物工場に供給する際、加熱した気体の温度を低減するため、植物工場の排水を活用します。




図2:SkyCarbon構想イメージ図
大気中の二酸化炭素を回収して身近で有用なものに変換し、カーボンニュートラル、大気中のカーボンネガティブに貢献する構想


ウシオは今後、Vision 2030で定めた「光のソリューションカンパニーへ」の達成に向けて地球温暖化対策においても、社会実装を通して「地上炭素ネットゼロと、人々の幸せを両立できる世界」に貢献していきます。


※1 Intergovernmental Panel on Climate Changeの略。日本語では「気候変動に関する政府間パネル」と呼ばれ、 1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立された政府間組織のこと。

※2 S. Kikkawa, K. Amamoto, Y. Fujiki, J. Hirayama, G. Kato, H. Miura, T. Shishido, S. Yamazoe 
Direct Air Capture of CO2 Using a Liquid Amine-Solid Carbamic Acid Phase-Separation System Using Diamines Bearing an Aminocyclohexyl Group, ACS Environ. Au, 2, 354-362 (2022).


 

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