成長製品の拡大とともに、グループの収益の柱へ成長させていきます
ウシオ電機
システムソリューション事業部長川村 直樹
前中計の振り返りをお願いします
今後、成長拡大していくために重要課題であった「生産性」を大幅に改善することができました。また2010年にウシオグループに加わったアドテックエンジニアリング(ウシオ電機の100%子会社)においても、プリント基板市場でダイレクトイメージング(DI)露光装置分野において、確固たる地位を築くに至りました。また、開発と事業化を同時に推進してきたマスク検査用EUV光源についても、お客様先での稼働を開始し、半導体の微細化に貢献しており大きな期待をいただいております。
新中計で注力する製品・事業について教えてください
重点的に注力するのは「EUV光源の飛躍」、「最先端ICパッケージ基板向け露光装置の競争力維持」、「DI露光装置の拡大と競争力向上」の3点です。半導体の微細化において非常に強いニーズがある「EUV光源の飛躍」に関しては、今後より一層の性能向上・安定稼働を実現するとともに、生産・調達の安定化や収益の柱となるリファブ・サービス事業の体制確立に取り組んでまいります。
次に「最先端ICパッケージ基板向け露光装置の競争力維持」においては、現状では主力製品の「UX-5」が半導体先端パッケージ市場でほぼ独占に近いシェアがあり、市場拡大期に入っています。一方、取り巻く市場は微細化の進行が早いため、今後、事業の持続的成長には、後継機種のスピーディーな開発と性能達成が重要となります。他社との協業なども視野に入れながら、いち早い次世代機の市場投入を目指し競争力とシェアを維持してまいります
最後に、「DI露光装置(アドテック)の競争力向上」においては、中国メーカー等の参入により競争環境は激化してきておりますが、プリント基板の先端市場において性能と信頼性の向上、そしてタイムリーな市場投入を図ることで、この市場での確固たる地位の維持・向上を目指してまいります。
また上記3つの有望製品に共通して、保守サービスやリプレイスランプ事業などのストックビジネスの強化をしてまいります。加え、事業全体として引き続き生産性向上に注力するなど、更なる経営効率改善と品質改善にも取り組むことで、より一層の安定した収益構造を目指してまいります。
ステークホルダーの皆様へメッセージをお願いします
新型コロナウイルスの影響で、全世界的に危機的状況が続いております。
そのような中、5GやIoTによる通信インフラの浸透は今後のウィズコロナ、アフターコロナにおいて一層重要になっており、新中計で注力する製品が拡大することで大きく貢献できるものと考えています。
目標達成に向け、より一層グループ一丸となり、取り組みを進めてまいります。
定量目標
アクションプラン
成長製品の果実刈り取りフェーズ入りにより、光源事業に並ぶ収益の柱へ進化
マスク検査用EUV光源 シェア100%の維持/中長期的に、保守メンテナンス拡大による高収益モデルを構築
・生産能力1.5倍へ
・高スペックEUV光源の継続開発(生産能力拡大と合わせ約35億円/年の成長投資を継続)
・原価低減(主要部品内製化などにより利益率改善)
最先端ICパッケージ基板向け投影露光装置 シェア100%の維持/保守メンテナンス契約へ
・成長投資約10億円/年(次世代ロードマップ対応)
・映像伝送技術開発とマーケティングを推進
DI露光装置 市場の拡大(5G)と競争力で収益拡大/保守サービスの拡大
・成長投資15億円/年(スマートフォン、自動車向けなどの競争力強化/ハイエンド機種のさらなる高解像度化/ミドルエンド機種の生産性向上)
・海外部品調達による原価低減
アフターコロナを見据えた事業の選択と集中を着実に実行していきます
クリスティ・デジタル・システムズ CEO神山 和久
前中計の振り返りをお願いします
クリスティ・デジタル・システムズ(Christie Digital Systems 以下、クリスティ)はウシオの映像装置事業の中核を成すグループ会社ですが、シネマと一般映像市場の両市場において、ボリュームゾーンのプロジェクターで競争が激化、またシネマ領域においてRGBレーザプロジェクタの市場投入が遅れたことにより収益が悪化しました。それに加え、シネマ分野における新事業(広告、メニューボード事業など)の収益化が計画通りに進まず、業績を圧迫しました。
このような状況の中、事業の選択と集中を進め不採算事業の整理・売却を実施した結果、2019年度においてはボリューム、率の双方において収益の改善がなされました。しかしながら、昨年度末からの新型コロナウイルス感染拡大の影響により、第4四半期で大きく売上げが低迷。結果的に、期初計画は達成することができませんでした。
新中計で注力する事業や分野、取り組みについて教えてください
前中計は主として構造改革を通じて、経営リソースの最適化およびバランスシートのスリム化を推進しました。そして新中計では、シネマ市場においては、デジタルシネマプロジェクターの置き換えが始まり、この中計期間も含め今後10年程度、新たなRGBレーザープロジェクターの安定した市場醸成が見込まれていたこと、また一般映像市場では2019年度に投入したレーザープロジェクターの販売を拡大、さらに新製品としてマイクロタイルLEDを搭載したビデオウォールの販売拡大を前提とした事業計画を策定していました。しかし、シネマ・一般映像市場における新型コロナウイルスの影響は甚大で、アフターコロナの市場を想定して戦略を大きく見直す必要が出てきております。このようなコロナ禍における事業環境変化をピンチとしてのみとらえるのではなく、ウィズ・アフターコロナにおいては安心・安全をニーズとする新ビジネスなども想定されるため、それらの新市場に参入するチャンスでもありそのための準備を進める一方、既存事業における持続的な収益拡大の実現に向け取り組んでまいります。
具体的には、特にシネマ・一般映像市場はアフターコロナの先行きの不透明感が強く、またその影響を大きく受けることが想定されるため、次の3項目をアフターコロナを見据えた重要アクションとして中計の達成に向け取り組みます。1.利益率水準引上げに向けて、コスト削減や選択と集中による経営効率化、サステイナブルな将来のための体力づくり
前中計における取り組みに引き続き、増収による増益といった特に営業利益の額にフォーカスしたボリューム戦略から、サプライチェーンの最適化、品質ロスコストの削減、製造原価低減、リードタイムの短縮等による事業効率の改善、即ち利益率の改善による増益、利益率水準引上げに向けて、経営リソースの最適化を進めます。 一方、事業を永続的に存続させ、より多くの社会的な問題・課題を解決できるようそのための体力づくりとしてバランスシートの改善・強化に継続して努めます。市場・お客様とのコミュニケーションを質、量とも増やすことによる市場ニーズの正確な把握、より正確な事業予測による在庫の最適化、リスクに見合った債権管理などに努めることによりキャッシュフロー、資金収支や運転資本の改善に努めてまいります。2.競合と差別化が可能な事業分野、マーケットである超ハイエンド市場へのリソース投入強化
ウシオの映像装置事業の一番の強みを発揮できる分野、光源と映像装置資産を持つウシオが最大のシナジーを発揮し他社との差別化が出来る分野、世界最高峰のダイナミックな映像体験を提供する超ハイエンド市場(シネマプレミアムスクリーン、エキスポ、オリンピック、ワールドカップなどグローバルな主要イベント)には重点的にリソースを投入しオンリーワンの、クリスティ独自の映像ソリューションを強化してまいります。3.ハードからサービス・ソリューションプロバイダーへの転身・強化
これまで、主としてハード(箱)を提供し市場・お客様のニーズ、お困りごとに応えていた物売りビジネスから(物を通じた)サービス・ソリューションビジネスへの転身を図ります。
例えば、NOC※1などのサービスを主要業務とするプロフェッショナルサービス事業に関して、従来のシネマ市場向けのみならず一般映像市場への参入も強化し、ニーズに合った最適なソリューションを提供致します。また、光源事業で取り組んでいる「Care222™」などのコロナ禍で需要が高まっている環境衛生製品と映像製品・サービスを一体化させ、「安心・安全な空間」と「圧倒的なビジュアル体験」「システムの安定効率稼働」といった時代の変化に適した高付加価値ソリューションを提供することによりクリスティブランドの更なる強化に努めてまいります。
常に変化し続ける事業環境・市場ニーズへの対応のため、お客様の困りごとを自社目線ではなく、市場・顧客目線で捉えスピーディーに最適ソリューションを提供できるような組織、経営リソースの整備に努めます。 さらに将来の更なる成長に向けて、アフターコロナの状況と今後の先行きが見えた段階で次期中計、その後の成長に向けたM&Aや他社との協業、R&D戦略などへの投資を進めてまいります。※1 Network Operations Centerの略で、映像データ配信の通信ネットワークを管理、運用するための施設のこと
ステークホルダーの皆様へメッセージをお願いします
残念ながら中計期間におけるアフターコロナの市場は、規模的には自律的にビフォアーコロナの市場規模には戻らないことが想定されるため、新中計においてもその前提で各種アクションプランを策定しています。
ただし、今回のコロナ禍における大きな変化はネガティブなことだけではなく、多くの新たなビジネスを生み出すチャンスでもあると考えており、Care222™を活用した映像分野でのソリューションをはじめとした、他のウシオグループ製品とのシナジーを高められる大きなチャンスと捉えています。
また今後、ストリーミング技術の発展に伴い、映画の視聴方法も変わることも想定されます。そのような環境変化に対しどのような形で価値提供をしていけるかを常に考え、スピード感をもって取り組んでまいります。
アフターコロナの市場についてはまだ不透明であり、今後しばらくの間、厳しい事業環境が継続すると見込まれますが、今までに培った人的資産、経験、能力、長期間培ってきた技術、ブランド力を最大限に発揮し、この危機を乗り越え、その先の持続的成長につなげることで、人々の感動・幸福に貢献していきたいと考えています。
定量目標
アクションプラン
シネマ
・高付加価値分野であるプレミアムラージスクリーン向けのソリューションを強化
ノンシネマ
・ニッチな超ハイエンド領域をさらに強化
・映像伝送技術開発とマーケティングを推進
共通
・サービス強化を目指し、サービス部門を事業部化
・次世代技術の開発
・製造原価・品質ロスコストの低減
・生産・販売体制の最適化を推進
3つの戦略実現への積極投資により、企業価値向上を目指します
ウシオ電機 経営統括本部長朝日 崇文
新中計期間におけるキャッシュアロケーション方針
今まで築き上げてきたユニークなビジネスモデルにより、強固な財務体質を構築し、実質フリーキャッシュフローは、過去10年以上平均で大幅な黒字を維持してきている一方で、思い切った投資に踏み込めず、財務余力を企業価値向上に活かせていない、との課題があります。
新中計では、3つの戦略(防ぐ、攻める、束ねる戦略)を明確化し、それぞれの実現の原資としてキャッシュなどの財務余力を積極的に活用していく考えです。
「防ぐ戦略」では、光源事業や映像装置事業の成熟分野において、新中計期間に生産拠点の統合や移管、ロスコストの削減、不採算事業の撤退などのコスト削減を中心とした「構造改革」を実行することで、収益性の維持・拡大をしていきます。主に、これら「構造改革」に要する支出に充当していく考えです。
「攻める戦略」では、光学装置における有望製品や光源事業での新たな事業分野である環境衛生分野向け製品など、今後のウシオを支えていく成長製品の事業展開がいよいよ始まります。これらの着実な事業拡大及び持続的な成長に向けた投資を積極的に行ってまいります。また、2030年にむけた長期ビジョン・ミッションのもと当中計以降の柱になることを見据えた具体的な創出事業候補も育てており、中長期でのウシオの持続的成長に向け、従来の「広く、薄く、短期的」な取り組みから、今後は「フォーカス、濃密、長期的」な投資のスタンスとして積極的に取り組んでいく考えです。
「束ねる戦略」では、従来の自立重視の連邦経営から、連帯を重視した連邦経営へ転換することで全体の最適化により経営の効率化を図ってまいります。その実現にむけたインフラとして、資金効率化のためのグループファイナンスの見直しや、管理会計の高度化、そのためのITインフラへの投資などを進めてまいります。
経営基盤強化のために、「利益を生み出す力の強化」を推進し、アフターコロナ、ウィズコロナにおいても、変化の激しい市場に柔軟に対応できる組織力を高めるため、グローバルでのグループ人材の活用、育成、働き方改革、ダイバーシティに積極的に取り組んでまいります。社会と企業との間にあるリスク管理やCSR活動につきましも引き続き積極的に取り組んでいきます。
持続可能な社会への貢献を第一義とし、経営の最重点項目としてマテリアリティの再定義・見直しを進めています。
株主還元方針
新中計初年度(2020年度)は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、大変厳しい事業環境を想定していますが、新中計期間において、新型コロナからの自立回復に加え、構造改革と有望製品の貢献による成長拡大を見込んでいることから、年間配当は下限配当として1株当たり配当を26円/年を設定しました。自社株買いについても、経営環境の変化等に対応し、機動的に実施していく考えを継続していきます。
企業価値向上に向けて
前中計において、重点施策として「既存事業の収益性維持・改善」と「新たな成長機会の追求」に取り組んできましたが、課題が残る結果となりました。希望的前提や個社最適優先によるコスト増などの課題に加え、在庫などの運転資本の増大に対する意識や収益性の低い事業に対する改善意識が弱まっていたこともその要因であるといえます。新中計においては、2030年長期ビジョン、ミッションを達成するための再基礎固めとし、楽観的見通しの排除と全社パフォーマンス最適化を優先した目標を掲げました。高い収益性を求める姿勢と効率的に資産を利益に変えることで「利益を生み出す力の強化」を進めていきます。
連邦経営における「自立」から「連帯」へのシフトチェンジや「防ぐ・攻める・束ねる戦略」などの具体的な戦略実現に向け、グループ各社の投資評価と業績モニタリングの強化により「利益重視」「経営資産の無駄遣い排除」の意識改革を図るとともに、戦略の優先順位の明確化により利益につながる事業投資の実行を進めます。