全数検査を実現する新光源

全数検査ができない現実。それはコストと技術的な理由から。

私たちの身の回りにあるスマートフォンや家電製品の中にはさまざまな電子部品や光学部品が使われていますが、その品質については必ずしも「全数検査」されていないことをご存知でしょうか。
これは私たちが日々口にしたり肌に触れたりしている食料品や化粧品、医薬品などについても同様です。
全数検査とは、商品を一つひとつ全て検査することで、検査した商品に不良や不具合が無いことを保証するものですが、多くのケースでは「抜き取り検査」をもって商品の品質を保証しています。
抜き取り検査では、検査に時間をかけることができ、必要に応じて破壊検査を実施することができる反面、消費者から見ると万が一とはいえ「品質や安全面の不安」を拭えないのも事実です。また、メーカーとしても、検査したそのロットで不良品が一つでも出ると、そのロットすべてを材料から遡って廃棄せざるを得ない場合もあり、膨大なロスコストを生じさせてしまうリスクがあります。


  • それでも、なぜ多くのメーカーでは全数検査ではなく抜き取り検査が行われているのでしょうか。大きな理由の一つが、大量に生産され、高速ラインで流れていく商品を、生産速度を落とすことなく全数検査することが技術的に難しいためです。

    近年、主に有機物の成分特定や含有量を非接触非破壊でその場測定できる有効な手法として近赤外分光が普及しています。

    しかし、近赤外光を用いた含有成分の分光検査では、対象物に光を照射し、透過してきた波長の微小な違いを見分ける必要がありますが、不透明な物質は光を通しにくいため、従来の光源では光量が足らず、測定に長い時間を要していました。一方、測定時間を短くするために強い光を照射すると、商品温度が上昇し、品質が低下するリスクもあり、透過率が低いものを全数検査するために必要なパワーと速度の両立ができていませんでした。

  • ウシオの新光源が全数検査を可能に。

    これらの課題を解決し全数検査を可能にするのが、波長が時間と共に変化する近赤外パルス光を、1秒間に数万回繰り返し出射するウシオの新光源です。この新光源を商品に照射し、透過した光の強さの時間変化を測定することで、分光スペクトルが得られます。

    測定したスペクトルを、基準となる対象物のスペクトルと比べることで、問題がある商品を見つけられるのです。
    ひとつの商品に、数百回以上のパルス光を照射・測定し、その複数の結果を積算することによりミリ秒オーダーで信頼性の高い判定結果が得られます。

    また、瞬間的に強い光が出るパルスレーザーを用いることで、熱の影響を抑制しつつ不透明な商品の測定に十分なハイパワーも実現。この、高速・高感度・高精度な全く新しい近赤外分光法により1秒間に数10~100個以上の商品の検査を可能にしました。さらに、異常判定が出た商品のみを取り出して廃棄する、または破壊検査など、より詳細な分析を行うことができるため、ロスコストの削減、プロセスの迅速な最適化やオートメーション化に繋がります。

  • 安全と効率を両立する品質管理で、毎日の生活に安心・安全を。

    現在、ウシオではこの新しい近赤外パルス光の実用化に向け、他企業とのコラボレーションの元、さまざまなテストを繰り返しています。高速・高精度な全数検査が可能になれば、メーカーでのロスコスト削減やオートメーション化の促進だけではなく、私たち自身がより安心して商品に接することができるようになります。

    私たちの技術を用いて安定した品質の商品を世の中に送り出し、安心・安全な社会に貢献していきたい。それが、光のプロフェッショナルとしての役割だと考えています。