第20回「次世代の太陽光発電システム」シンポジウム(第3回日本太陽光発電学会学術講演会)
講演予稿集 (2023.6.29-30) ©日本太陽光発電学会
フラッシュランプアニールによるペロブスカイト太陽電池の性能向上
Improving the performance of perovskite solar cells by flash lamp annealing
米田 朋加、三浦 真毅
Tomoka Yoneda, Masaki Miura
ウシオ電機株式会社
Ushio Inc.
1.はじめに
ペロブスカイト太陽電池は溶液塗布により簡便に作製でき、高い性能が得られるため、次世代太陽電池として注目されている。性能に影響する要素の一つとしてペロブスカイト膜の成膜法がある。アンチソルベント法は均一に緻密な膜が得られるため、高効率が得られる成膜法として広く研究されている一方で、大面積化が困難であるという課題がある。大面積化が容易な成膜法として2step法があるが、変換効率が低いことが課題とされている。そこで我々は、2step法により作製したペロブスカイト太陽電池の性能を向上させる方法として、フラッシュランプアニール(FLA)に着目した。
FLAはキセノンフラッシュランプを用いたマイクロ~ミリ秒の短パルス光による瞬間加熱であり、メートルサイズの処理も可能である。ペロブスカイト膜のFLAによる太陽電池性能の向上はすでに報告されている[1]が、照射条件の最適化によってさらなる高性能化が期待できる。今回は、パルス波形と照射エネルギーを変え、性能評価を行った。
2.実験方法
25mm角のGlass/FTO/c-TiO2/mp-TiO2上に、PbI2塗布後にMAI溶液に浸漬させる2step法によってMAPbI3膜を作製し、ホットプレートによる加熱焼成(TA)もしくはFLAによって処理した。フラッシュランプ照射装置には、ウシオ電機のSUS980を使用した。そこにSpiro-OMeTADとAgを積層し、それぞれの太陽電池の電流密度–電圧(J-V)特性を測定した。3.実験結果および考察
Figure 1に2step法TAおよびFLAによって作製した太陽電池セルのJ-V曲線を示す。TAのときの変換効率は7.48%であった。FLAのときは変換効率が最も高くなる照射条件で14.4%であり、TAよりもFLAの方が高い太陽電池性能が得られることが確認できた。それぞれのMAPbI3膜のSEM像をFigure 2に示す。TAは照射前と変わらずブロック結晶が積みあがった膜になっているのに対して、FLAでは緻密な膜が形成していることがわかった。このことより、TAよりもFLAの方が高い変換効率が得られたのは、キャリアの再結合が起こりやすい粒界が減少したことや、表面が平坦化したことに起因していると考えられる。結晶形成条件が最適化できていない膜に対してもFLAによって膜を緻密化できるため、より簡便な成膜法で高効率が得られることが期待できる。
発表では、パルス光の波形の検討やFLA中の膜温度計算結果についても議論する。

Fig. 1 J-V curves of the solar cells.
(a) (b) (c)

Fig. 2 SEM images of MAPbI3 (a) before annealing, (b) after TA, (c) after FLA.
4.結論
FLAによってペロブスカイト膜の結晶形状が変化し、TAよりも高い太陽電池性能が得られた。今後は照射条件の最適化によってさらなる高性能化を目指す。参考文献
[1] Lavery, B. W. et al., ACS Appl. Mater. Interfaces. 8, 8419−8426 (2016).
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