SWIR域 低背小型フリップチップLEDのサンプル提供開始
2024.08.29
ウシオ電機株式会社は、このたび、SWIR域である1050nm~1900nmの低背小型を実現した「epitex Fシリーズ」のLEDチップのサンプル提供を2024年8月より開始しました(図1、表1)。
本開発チップではInP(インジウムリン)系材料としては世界初※1となるフリップチップ構造を採用したことにより電流注入用のワイヤーが不要となるため、チップ実装に必要な空間高さを低くすることができ、低背LEDパッケージが可能となります。さらに、パッケージ側にワイヤーボンディングするスペースも不要となり、特に複数のLEDチップを並べて実装する場合に高密度実装ができるため、パッケージの小型化が簡単にできます。また、ワイヤーレスのため、発光面側のワイヤーによる影の影響がなくなり、光学的な設計も容易となります(図2)。
特性面においては、光取り出し面の電極が不要となり、光取り出し効率を高めることで、チップサイズが270μm×170μmと小さいながら、既存製品の高輝度SWIR LED「epitex Dシリーズ」の320μm×320μmチップと同等の光出力を実現しました。
このような優れた特性面を備え、低背かつ小型パッケージ化が可能という特長をもつことから、機器のフットプリントに制限があるスマートフォンなどの小型電子機器、バイタルセンシング、近接センサーなどの用途での貢献が期待できます。
※1 ウシオ調べ



図2
データシート
• C1050F-2717-X
• C1100F-2717-X
• C1200F-2717-X
• C1300F-2717-X
• C1450F-2717-X
• C1550F-2717-X
• C1650F-2717-X
• C1750F-2717-X
主な用途
• バイオセンシング用光源
• モバイル端末用バイタルセンシング光源
バイオセンシング分野での貢献
このSWIR波長域のフリップチップは、バイオセンシング分野においても貢献が期待されます。SWIR領域には、1100~1350nmの「第二の生体の窓※2」と1550~1800nmの「第三の生体の窓※2」が存在し、生体組織への生体侵入長が長いため、生体組織の内部や深部にまで光が到達し、非侵襲での深部の計測やイメージングに適しています。この特性は、生体組織の微細な構造や病変部の評価において、より正確な情報を提供することができます(図3)。さらに、SWIR領域では、水、グルコース、エタノール、コレステロールなど多くの物質の吸収域が存在するため、SWIR光の透過率や吸収率によってこれらの物質を検出し、正確に定量化できることから、重要な生体指標のモニタリングが容易になり、バイオセンシング分野における研究の進展や非侵襲生体診断の精度向上に貢献することが期待されます。
また、フリップチップは、チップに電流注入するためのワイヤーが不要なため、実装基板としてフレキシブル基板を使うことが可能です。フレキシブル基板は、軽量で自由に曲げて電子機器内に配置できるため、電子機器の軽量化と小型化が容易となります(図4)。連続的にバイタルサインをモニタリングするモバイル機器や医療用センシング機器の小型化において貢献することが期待されます。
※2 波長約700~2500nmの赤外光は、生体組織に対する散乱が小さく、分子振動による吸収が小さいことから、生体の深部の観察・センシングに適しており、この波長域を「生体の窓」と呼ばれている

