LED技術・サポート情報 epitex
epitex series 取扱い上、使用上の注意
LEDの性能を十分に発揮し、より高い信頼性をもってご使用いただくために、システム設計時や測定取扱い時、使用時にご配慮願いたい事項および注意点について説明します。
1. 絶対最大定格について
データシート・カタログに規定されている絶対最大定格は、瞬時たりといえども絶対に越えないようにしてください。
特に、次の点に注意してください。
• LED素子は、順電流の絶対最大定格を越えてドライブしますと、劣化を誘発しその信頼性が著しく損なわれます。
また、LEDをパルス駆動する場合、データシートに規定されている「Forward Current – Pulse Duration」にて規定される許容最大パルス電流値をオーバーしないことを確認してください。
• 絶対最大定格は、ケース温度(Solder Pointの温度)が 25°C における値が規定されています。したがって、温度が高くなるにつれて最大順電流や許容損失は低下し、動作範囲が制限されますので、できるだけ余裕のある設計をしてください。
• ジャンクション温度(Tj)と熱抵抗(Rthjs)との間には以下の関係があり、ジャンクション温度が絶対最大定格を超えないように注意してください。
Tj=Rthjs x Pd+Ts
ただし、
Tj: ジャンクション温度(℃)
Rthjs: ジャンクションからTsまでの熱抵抗(K/W or ℃/W)
(※一部のデータシートでは熱抵抗Rthjaの表記がございますが、Rthjsと読み替えていただきますようお願い致します。)
Ts: Solder Pointの温度(℃)
また、
Pd=VfxIf
Vf: 順方向電圧(V)
If: 順方向電流(A)
Pd: 投入電力(W)
となります。
Solder Pointの位置は下図を参照してください。

• LEDを複数並べて使用する場合、各LEDのTjは単独使用時に比べてさらに上昇し、LEDの特性や寿命に悪影響を及ぼします。所定のTjを超えないように、LED実装ピッチ等を含めた熱設計に留意し、実機環境にて事前検証することを推奨いたします。
• 絶対最大定格以上の逆電圧は絶対に印加しないでください。
2. 静電破壊について
LED素子は、静電気やサージ電圧等により破壊もしくは劣化する可能性が ありますので、静電破壊防止にご配慮ください。取扱いに際しては、以下のような注意をお願いします。
• 人体衣服に帯電した静電気による破壊を防止するため、取扱中は人体を高抵抗 (通常 500kΩ~1MΩ) を介して接地してください。
• 製品取扱い区域の生産設備・検査設備、機器類、はんだゴテ等は接地してください。
• 作業台、棚類、治具、容器等は帯電しないものを使用してください。導電性容器やアルミ箔などを使用するのが有効です。
3. 梱包仕様
3-1. SMDタイプの梱包仕様
SMDタイプの製品は、仕様に応じてカットテープや、テープ&リール、トレイなどに入れ、シリカゲルインジケーター、もしくはインジケーターカードとシリカゲルとともに、防湿袋に入れた後、熱シールにより封をします。
3-2. 砲弾型LEDの梱包仕様
砲弾型LEDは、袋詰めの場合は、500pcs毎にプラスチックバッグ、もしくは必要に応じて帯電防止袋に入れたのち、熱シールにより封をします。
また、テーピングの場合には、Φ5mmの場合には2,500pcs、Φ3mmの場合には4,000pcs単位で内装箱に入れて出荷します。
4. 保管について
下記の保管に関する注意を遵守して製品を使用してください。未開封でも、濡らしたり、直射日光や腐食性ガスや塵埃に曝したり、急激な温度変化がある場所や高湿環境下での保管は避けてください。4-1. SMDタイプの場合
• SMDタイプのLED製品は、特に指示がない限りMSL4に相当します。SMDタイプの製品が吸湿した場合、リフロー時などに、熱で水分が膨張することで、パッケージ内の界面で剥離が起こり、故障する可能性があります。
• 防湿袋に同梱しているシリカゲルインジケーターや、インジケーターカードは、吸湿すると青色から赤色に変色します。
• 防湿袋が未開封の場合、温度5~30℃ 、湿度60%以下の環境で保管し、保管期間は最大で12か月としてください。
• 防湿袋開封後は、温度5~30℃、湿度50%以下の環境で、72時間以内に実装を終えてください。
未使用のLEDが残った場合には、防湿バッグにシリカゲルとともに入れて、熱シールして保管してください。
なお、開封後に、シリカゲルとともに密閉保管している時間は72時間に含まれません。
• 保管期限を過ぎた場合は、1回を限度としてベーキング処理を行ってください。
また、保管期間内に同封のインジケーターが赤くなった場合にも、1回を限度としてベーキング処理を行ってください。
ベーキング処理は、エンボスキャリアテープよりデバイスを取り外し、100℃のオーブンで24時間のベーキングを推奨いたします。
• ベーキングに使用する乾燥器は、製品を汚染する事が無いように、内部を清浄な状態にして処置してください。
4-2. 砲弾型LEDの場合
砲弾型LEDに関しては、温度5~30℃、湿度70% RH以下で保管し、保管期間は最大12か月を限度としてください。
腐食性ガスなどにさらされると、リード部分が変質する可能性がありますので、保管する環境にはご注意ください。
5. 使用上の注意について
• 定電圧駆動の場合はLEDに流れる電流が変わり光量がばらつく可能性があるため、LED毎の定電流駆動を推奨いたします。定電圧駆動をする場合は、 LED個々に対して制限抵抗を設ける事を推奨いたします。
• LEDを並列接続回路で使用する場合、LED個々にI-V特性が異なるために個々のLEDに流れる電流値が異なり、従って光量やTj等にも影響します。
また、LEDの絶対最大定格電流やTj等を超える場合も有り得ます。上記に留意し、LED個々に適切な制限抵抗を設ける等、LEDへの印加電圧を調整してご使用ください 。
• 非点灯時には、順方向逆方向に関わらず電圧を印加しないようにご配慮ください。マイグレーションによるLED損傷を発生させる可能性があります。
• 高湿環境下で長期間使用すると素子が劣化する場合があります。高湿環境下で長期間使用される場合はご注意ください。
• 結露する環境や塵埃の多い環境では使用しないでください。そのような環境下で使用すると製品が故障する事があります。
• 急激な温度変化をさせた場合、結露が起こる可能性がありますので、急激な温度変化のある場所での保管、使用は避けてください。
• 防水・湿度・塩害対策の上、ご使用ください(特に、屋外使用の場合)。
• 封止樹脂・レンズ及びパッケージは長期の高温環境下で製品が黄変し、特性に影響を与えることがありますので、ご注意ください。
• LEDを高出力で使用したり、出力光を光学的に集光したりした状態等で光を直視しないでください。目に対して、影響を及ぼす可能性があります。
また、強い点滅光を見ると、光刺激により光過敏性発作を引き起こす恐れがあります。第三者への影響も踏まえてご配慮ください。
• LEDは、照明等の光生物学的安全性に関する規格IEC62471(ランプ及びランプシステムの光生物学的安全性)の適用範囲に含まれます。
弊社製品でも、お客様の使用条件によってはIEC62471のリスクグループ2に相当する場合がありますのでご配慮ください。
本製品を組み込んだ機器でリスクグループに該当する場合には、適切な警告表示をしてください。
また、使用時には、保護メガネや手袋・長袖着用等で、眼障害・皮膚障害に対する適切な暴露対策をしてください。
6. 取扱い上の注意について
• 製品に触れる場合、清浄なピンセットや手袋をご使用ください。素手で触れると特性に悪影響を及ぼす可能性があります。ピンセットは静電気対策がなされたものをご使用ください。
• 製品をピンセットで取り扱う際は、製品への過剰な負荷をかけないようにご注意ください。
• LED上面の封止部やレンズ部にピンセット等で触れないようご注意ください。封止部やレンズ部へのキズ等の損傷や、ワイヤーの断線や剥離
による不点灯の原因になります。
• 単体、パッキング状態、テーピング状態に関わらず、製品への強い衝撃を与えた場合や落下させてしまった場合、製品の変形や汚れ等が発生
する事がありますのでご注意ください。
• 封止部やレンズ部に付着した汚れを拭き取る場合は、イソプロピルアルコールを含ませた布で過度な力が加わらないように実施してください。
過度な力を加えると、キズなどの損傷や、ワイヤーの断線や剥離による不点灯の原因になります。
イソプロピルアルコールへの浸漬による洗浄は推奨しておりません。やむを得ず実施する場合は、十分な事前検証を行い、問題ないことを確認の上で
実施してください。
• 製品の樹脂部が侵されることがありますので、ベンジンやシンナーなどを使用しないでください。
• 超音波洗浄は使用しないでください。
• 表面実装タイプ品の実装は、自動実装機での実装を推奨いたします。
• テーピング品をリールから引き出した状態で振ったり揺らしたり長時間放置する等しないでください。また、テープを必要以上に折り曲げないで
ください。
• 製品の実装後基板を重ね積みしたり、機械的応力を加えたりしないようにしてください。封止部やレンズ部へのキズ等の損傷や、ワイヤーの断線や
剥離による不点灯の原因になります。弊社出荷時の製品外装箱の注意表示に従ってください。
7. はんだ条件について
7-1. 砲弾型(スルーホール)LEDのはんだ条件
スルーホール実装タイプのリードタイプ製品(砲弾型製品等)のはんだ付けは、レンズ底面から基板上面までの距離及びレンズ底面からはんだ付け部までの距離を3mm以上離してください。実装時の応力や駆動時の発熱等により製品が損傷する可能性があります。
また、加熱中にリードフレームに負荷がかからないようにしてください。
リード のフォーミングや切断時、パッケージ(封止部等)に機械的応力が加わらないようにしてください。パッケージにクラックが発生する等損傷する場合があります。
推奨フローはんだ条件

推奨手はんだ条件
手はんだは1回までとしてください。(※一部のデータシートにはフローはんだ条件についての記載しかございませんが、手はんだ可能です。)
手はんだでのはんだ付け時、製品のパッケージ部にはんだごてを接触させないでください。製品が損傷することがあります。
温度 | 最大350℃ |
時間 | 最大3秒 |
7-2. SMD(表面実装)タイプLEDのはんだ条件
• リフローはんだ付けは1回までとしてください。
• 加熱中にLEDに負荷がかからないようにしてください。
• SMD(表面実装)タイプLEDの手はんだは非推奨です。
推奨リフローはんだ条件

推奨リフローはんだ条件詳細
最小 | 推奨 | 最大 | 単位 | |
---|---|---|---|---|
室温から予熱温度への加熱速度 | 2 | 2.5 | K/s | |
予熱温度 | 150 | 150 | 160 | ℃ |
予熱温度から最高温度への加熱速度 | 1.4 | K/s | ||
最高温度 | 250 | ℃ | ||
予熱温度以上の加熱保持時間 | 110 | s | ||
最高温度保持時間 | 5 | s | ||
冷却速度 | 3 | 5 | K/s |
※はんだ条件のプロファイル図は参考例です。ご使用になる実使用基板、実使用設備及び条件にて事前の評価を推奨いたします。
8.設計上の注意について
• 本製品を基板実装する場合、使用される基板材料等によっては本製品と基板との熱膨張差により過大な残留応力が発生し接合部近傍が破損する場合があります。実装基板設計の際には本製品への応力負荷にご配慮ください。
• 製品使用の際は熱の発生を考慮してください。LED点灯時の素子の温度上昇は、ご使用の環境により変化します。実装基板仕様や使用環境を考慮し、Tj の絶対最大定格を超えることの無い設計にご配慮ください。
• 紫外線LEDの場合、紫外光により周辺部材が劣化する可能性があります。事前に実機使用環境にて検証の上、ご使用ください。
• 硫黄や塩素成分等を含む腐食性ガス雰囲気に晒されないようにしてください。
• 腐食性ガス等を含む雰囲気で保管またはご使用の場合、LEDパッケージに使用しているダイボンディング剤やリードフレーム金属メッキ等が侵され、光学特性やはんだ付け性低下へ影響することがあります。製品設計の際には、保管及びご使用時の周辺大気環境に加えて、LED製品周辺部材からの発⽣ガスについても充分ご注意ください。
• 腐食性ガスは、段ボール等の梱包材、ホースやパッキン等のゴム類、農薬や肥料等に硫黄成分が、また、海水、漂白剤や殺菌剤、電線被覆やプラスチック等にハロゲン成分が含まれる事があります。また、自動車排気ガス、工場排出ガス、火山活動等により大気中においても微量に含まれる事がありますのでご留意ください。
• 腐食性ガスへの留意点として、製品保管の際には密閉容器や窒素置換デシケータ等で保管してください。また、実装基板や実装装置設計の際には使用部材や周辺部材に腐食性ガスを生成する成分を含有する部材の使用は避ける等、設計時には注意してください。
• LED製品周辺部材からVOCが放出される環境下で使用した場合、LEDのレンズ表面や内部に侵入し付着したVOCが変色し、光学特性に影響を与える可能性があります(VOCとは、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)の略称で、常圧で大気中に揮発する有機化合物の総称になります。塗料、インク剤、接着剤や、樹脂やゴム等の添加剤として等幅広く使用されています)。特に、LED製品を密閉状態や狭い空間で使用する場合、影響度が大きくなります。その様な場合には、LED周辺部材の選定等ご留意いただくと共に、LED周辺部材や装置環境も含めたLED灯具実機での事前検証等をお奨めします。
9.その他注意事項とお願い
① 取り扱い上の不注意、及び誤った使用による故障・損傷である場合。
② 不当な修理及び改造等による故障・損傷である場合。
③ 火災、地震、水害、落雷、その他天災地変、公害等の不可抗力による故障・損傷である場合。
④ 出荷当時の技術水準では予見が不可能であった事由による不具合の場合。
⑤ 別途取り決めた以外の日本国外の法規制及び安全規格に準拠しないことに起因する不具合の場合。
• 弊社標準製品は、一般電子機器の用途(計測機器、通信機器、事務機器、家電機器等)に使用されることを意図しています。上記以外の用途や、高い信頼性・安全性が要求され、故障や誤動作が直接人命や人体に影響を及ぼす恐れのある特殊用途(航空宇宙機器、交通輸送機器、医療機器、安全装置類、原子力制御機器等)に使用する際は、事前に弊社営業窓口までご相談ください。
• 上記特殊用途での使用の場合、弊社製品の不具合に起因する全ての損失または損害について、事前に別途取り交わした仕様書等に明記された場合を除き、弊社は一切の責を負いません。弊社の製品が組み込まれたお客様の機器において、万一弊社製品が故障した場合でも、拡大損害などを生じさせないよう、発生し得る不具合を考慮して、十分な安全設計を施してください。
• 弊社製品が組み込まれた機器の最終需要者に対して、製品及び使用機器の取り扱い等の説明及び適切な警告・表示を実施してください。
• 弊社の許可なく、本製品を解体したり、リバースエンジニアリングに該当する行為をしたりしないでください。万一不具合が発見された場合は、本製品の解体はせずに弊社営業窓口までご連絡ください。
• 弊社資料の応用例 は代表的な使用例の説明であり、特定使用目的への適合性や商業的利用の成否を保証するものではありません。また知的財産権実施に対する保証や許諾をするものでもございませんので、知財権問題が発生しても弊社は一切の責を負いかねます。
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