LED素子/パッケージ

ナンバープレート自動認識(ANPR)に貢献するウシオのLED

2021.02.12

カメラと近赤外(NIR)LED、画像認識データベースから構成され、ETC(電子料金収受)や駐車場管理、交通監視などに広く応用されているANPR(ナンバープレート自動認識:Automatic number plate recognition)。ウシオ電機のLEDは、世界でもっともこのANPRシステムに採用されています。

ANPRシステムでは、赤外線カメラが車両のナンバープレートを鮮明に撮影。光学文字認識(Optical Character Recognition:OCR)で解析・テキスト化した情報をデータベースと照合し、様々な処理を自動で行います。

例えば、事前に登録したナンバーの配達トラックが通る時だけ入場ゲートを開けたり、運転が禁止されている人の車が走行していることが確認された際に当局にアラートを発したり、駐車場で料金が支払われてた車が出る時だけゲートを開けたりするなど、既に多くのシステムで導入されています。

さらにANPRシステム採用した交通監視システムやスマートシティへの応用も始まっており、車の速度や経路、あるいは走行時間などを分析し、自動的に燃料効率を最適化するとともに交通管制を行うなど、様々な展開が期待されています。

ANPRのメリット

  • ・瞬時に判別 – ナンバープレートを読み取り、車両ごとにゲート開閉を瞬時に判断するなど、次アクションに瞬時に進むことができます。
  •  物流など、時間に敏感な産業で特に求められる要素です。
  • ・コスト効率 -ナンバープレート確認のためにヒトが介在する必要がありません。システム設置のための初期費用を除けば人件費削減になり、
  •  長期的メリットが大きいシステムです。
  • ・ヒューマンエラーの根絶- NPRシステムは一般に99%以上の認識率を誇ります。万が一のヒューマンエラーへの訂正処理に必要な時間・コストを
  •  大きく削減できます。
  • ・セキュリティの強化 - ANPRシステムで車両の動きを追跡することで、事故や盗難の記録となります。利用者に安心感と安全性の両立は、
  •  施設そのものの価値をも高めます。
  • ・正確な時間・リソース管理 –ANPRシステムにより車両(運転者)の活動と時間を管理することで、ビジネスの効率化の改善、向上に繋がります。
  • ・データベースに基づく管理 - ANPRの利用によるデータベースの蓄積は、さらなる応用展開に繋がります。例えば、交通管理機関による車両チェックと
  •  ともに、自動車税の納税情報、保険証の番号確認、さらには盗難車情報なども合わせて照合することも可能です。実際にANPRの活用が多くの国で
  •  進んでいます。
 

ANPRシステムの照明に使われるウシオの近赤外(NIR) LED

光のスペクトルのうち、波長700~1,000ナノメートル(nm)の領域を近赤外(Near Infrared: NIR)と呼んでおり、これは可視光に最も近い赤外線領域にあたります。人間の目には見えない波長ですが、ウシオのNIR LEDは、カメラの「フラッシュ」と同じように、赤外線カメラが捉える被写体を照明するために使用されています。

ANPR システムは、例えば時速 100 km/h で走行する自動車などの移動体の画像をキャプチャするため、カメラに同期した「フラッシュ」照明でターゲット車両を照らします。このフラッシュ照明に、定常電流モード(CWモード)に比べて大電流・高照度なパルスモードのLEDを使用することで、OCRソフトウェアが画像を処理するために必要なブレのない鮮明な画像が得られます。パルスモードでは、電流およびパルス持続時間を制御し、赤外線カメラが対象物を捉えるための理想的な照度および照明時間をコントロールすることができます。

撮影された赤外線画像は、OCRソフトウェアにより文字として認識され、データとして使用されます。なお、ナンバープレートだけではなく、車両や運転者の情報を利用するシステムではキャプチャの瞬間に可視光カメラの画像が撮影されることもあります。


モールドタイプのLEDのような低出力のNIR LEDは例えば駐車場ゲートのような小型のシステムに最適ですが、交通管制システムのように遠くから照明・撮像を行うシステムには、より高出力のLEDが使用されます。「照度」は、画像の鮮明さにとって重要な指標ですが、LEDからの光を集光する光学レンズの選択によっても左右されます。より強く(挟角で)集光することで鮮明な画像の最適な高照度を得る一方、より広い空間を照明したい場合には、やや広い集光角のものが選択されます。  

あらゆるANPRシステムに対応する豊富なバリエーション

ウシオは様々なANPRシステムに適したLEDを用意しています。最も多く使われているのはMold、EDC、SMBBの各パッケージ製品群です。波長もANPR用照明には重要なファクターです。850nmが標準的に使用されますが、LEDの照明がわずかでも人の目に感じられることを避けたい場合には、より波長の長い940nmも良く使用されます。パワーもシステムの性能を決める最大の要素です。

現在市場にある製品の中で最も強力なNIR LEDであるSMBB-DSシリーズをはじめ、豊富なウシオの製品ラインナップの中から、お客様の装置に最適なLEDをご提案させていただきます。
 
 

ウシオの高出力LEDを使用するメリット

  • ・より明るく -照度が高ければ高いほど画像はより明るくなり、露出不足による画像不鮮明や読取エラーを削減できます。
  • ・より遠くを - LEDからの出力が高いほど遠くまでを照明でき、長距離を計測できます(高速道路に使用されるシステムなどにはこの性能が重視されま
  •  す)。また、LEDの出射光を集光照明する挟角レンズ付きパッケージでは、さらに遠くまで、十分な照度での照明が可能です。
  • ・より広く - 高出力にすることで、より遠くに加え、より広い範囲を照明することができます。カメラが高精細化することで広範囲の撮影をカバーできる
  •  ようになってきており、そのカメラ性能を十分に活かすために高出力LEDによる照明が使用されます。
  • ・より早く - 高速で動く物体を撮影するためには、カメラが正確で非常に速いシャッタースピードで動作し、LED照明もこれに同期した「フラッシュ」照
  •  明が求められます。さらに、照射時間が短い分、LEDには十分な明るさを得るための高出力が求めら、多くのANPR/ETCシステムで必要とされるパルス
  •  持続時間は1~10μsです。
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    最大出力5,100mWのウシオ SMBB-850シリーズ。3種のチップ、4つのレンズを選択可能

    ANPRシステム(あるいはそれを応用したETCシステム等)に適したNIR LED照明は、使用する環境、ターゲットまでの距離、照明範囲、また最終的な画像の精細度など、多くの要因に基づいて決定されます。ウシオは多くのパッケージタイプ及びレンズを取り揃えており、ここでは代表的な製品である中心波長850nmの高出力LED、SMBB850のラインナップをご紹介します。

  • ウシオの産業用LED、Epitexシリーズの中の主力製品であるSMBBファミリーは365nm~1750nmの幅広い波長ラインナップで、各分野で広く使用されているハイパワーLED製品群です。銅ヒートシンクを搭載した5mm x 5mmの表面実装型パッケージで、特に排熱性に優れ、高出力を安定してご使用いただける製品です。
  • このSMBBパッケージには最大3チップを搭載することが可能。1チップ搭載時のおよそ3倍の出力を1パッケージから出力することも可能です。
  • ANPRシステムで最もよく用いられるのは中心波長850nmのSMBB850です。850nmのチップには、スタンダードパワー、ハイパワー(D)、スーパーハイパワー(DS) の3タイプがあり、ご要望に応じて選択いただけます。
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    最も出力の高いSMBB850DSの出力はCWで1,400mW、パルスドライブでは5,100mWに達します。その上SMBBパッケージではいくつかのレンズが選択可能です。例えば、フラットタイプと05タイプは放射出力を比較的広角にする選択であり、広い範囲を照明するのに適しています。SMBB850DSの場合、フラットタイプは放射強度(radiant intensity: 光軸上の立体角当たり出力)が460mW/sr(ミリワット/ステラジアン)、05レンズタイプは2000mW/sr(ミリワット/ステラジアン)となります。逆に集光性の高い出力を必要とする用途には、02レンズタイプと03レンズタイプを使用することで、放射ビーム発散角を小さくすることができます。特に02レンズタイプは、±10°の角度という挟角照明で6,000mW/srの放射強度を得ることができます。  

  • 02レンズのような挟角照明のレンズを選択することで、光をより遠くまで照射することができます。LEDから放射された光は円錐状に広がり、遠方ほど照度が低くなっていきますが、より高出力のLEDを選ぶこと(あるいはより多くのLEDを並べて使用いただくことで)で、ご所望の投影距離での照度を確保いただくことができます。次に示す図は100mあるいは300mの遠方を照射した際に、同じ02レンズでも出力の違いがどのように照度に影響するかの例を示しています。表の最後の例では、さらに挟角の照明を実現するためにSMBBパッケージの外側にアウターレンズを付けた場合を示しています。 
 
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    EDCファミリー:高出力と小フットプリントを両立

    人気の高いSMBBファミリーをより小フットプリント化し、SMBBファミリーに迫る排熱性能と小フットプリントの両立を狙って開発されたのがEDCファミリーです。EDCファミリーは、SMBBファミリーと同じチップを搭載可能で、フットプリントは3.5mm×3.5mmと小型化を実現しています。

    EDCパッケージは、理想的なヒートシンクとして機能するセラミックベース構造を特徴としており、1mm x 1mmの1チップが搭載可能です。小フットプリントパッケージにより、照射器の小型化や、他コンポーネントを追加するためのスペースの確保に寄与します。
    EDCファミリーは、フラットとS5の2種類のレンズタイプのいずれかを選択可能です。フラットタイプは、±66°の広角照明となります。850nmのスーパーハイパワーチップを搭載したEDC850DS-1100の場合、3,700mWの出力(パルス)で、放射強度は1,200mW/srとなります。

    S5タイプのレンズは、独自形状のレンズで狭角化(±39°)を実現しています。このレンズがついたEDC850DS-1100-S5では放射強度を5,500mW/sr (パルス)まで高めることができます。

    Epitexシリーズについて

    epitexシリーズは、365nmから1750nmまでの紫外、可視、近赤外、SWIRの波長をカバーしており、その性能・品質には30年以上のチップ技術(エピタキシャル成長、プロセス等)及びパッケージング技術(放熱設計、光学設計等)の豊富な経験が活かされています。またパッケージもEDC、SMBB、SMT、マルチチップSMTなどの標準パッケージに加え数多くの形態のパッケージを提供しています。