LED素子/パッケージ

多波長使用に適したウシオのマルチチップLED

2021.04.07

ウシオのLEDデバイスである「Epitexシリーズ」は、UV、可視、NIR(近赤外)、SWIR(短波赤外)、波長でいうと365nmから1750nmまでのラインアップとそれぞれの用途に最適化した多くのパッケージタイプが存在します。その中でも複数のチップを搭載したマルチチップタイプは多波長を用いる必要のあるあらゆる用途に使用されています。

EpitexシリーズのマルチチップLEDのうち、比較的低出力なのは、SMTパッケージ及びモールドタイプの製品群です。これらは異なる波長のLEDチップを2~3個搭載することで、 2~3 波長の光を同時に出力します。代表的な用途は、バイタルサインセンサーや医療機器など、多波長を必要としながら、低消費電力や小型化と言った要請のあるアプリケーションです。一方、モールドタイプのLEDは狭角の照明が可能であることが特徴ですが、パッケージ高が比較的高くなります。そのため、パッケージの高さを低くしたい用途ではSMTパッケージが適しています。

また、多波長で高出力が求められる用途には、排熱性に優れたSMBBパッケージやEDC パッケージが適しています。

なお、カスタムにより一つのパッケージにマルチチップだけでなくフォトダイオードを組み込むことも可能です。これにより多波長発光に加えて検出の機能も1パッケージに収めることが可能となります。

ウシオEpitexシリーズ マルチチップLEDの特徴

•    標準品で2~3波長を1パッケージに搭載。小型化、小フットプリント化に寄与
•    各チップの独立駆動により、フレキシブルな照明パターンが可能
•    カスタムにより標準にない波長のチップやフォトダイオードの追加も可能
 

用途例1‐血中酸素濃度センサや心拍数モニタ

血液中の酸素濃度の測定には、一般的に660nmと940nmが使用されることはよく知られています。この2波長は、酸素を多く含んだ酸化ヘモグロビン(HbO2)と、酸化レベルが低下した還元ヘモグロビン(Hb)の吸光度差が最も大きくなる波長であり、その吸収量差から血中酸素濃度を計測しています。ウシオのマルチチップLEDを用いれば、この2波長を1パッケージから出力でき、血中酸素濃度の計測部を大幅に小型化することが可能です。さらに、カスタムでフォトダイオードを搭載し、2波長のLEDを独立に駆動すれば、1パッケージで計測の機能までも担うことができます。

また心拍数のモニタリングはヘモグロビンの吸収が最も強い525nm近辺の波長が用いられます。カスタマイズしたマルチチップLEDを用いれば、心拍と血中酸素濃度の両方の計測を最小のフットプリントで実現可能なため、特にウェアラブル機器などへの搭載に適しています。
 

用途例2‐PCR検査装置などの検体検査装置の高機能化・ダウンサイジング

血液や尿などの検体検査は現在の医療では欠かせませんが、その多くに蛍光計測、吸光度計測といった光学的な方法が用いられます。

従来これらの光学的な計測にはメタルハライドランプやUVランプ、キセノンランプ、レーザーなどの光源が用いられてきましたが、現在はLEDが中心です。フットプリントが小さく長寿命、単色性の高い発光スペクトルといったLEDの特性は検体検査機器の小型化に大いに寄与しています。特に複数の計測を1台で行うような複雑な機器には、複数波長を1パッケージから出力するマルチチップLEDが用いられ、さらなる小フットプリント化や高性能化を実現しています。使用される波長は計測方法に依存しますが、特に蛍光計測の場合には検体に加える試薬の蛍光励起に適した波長―例えば405nm、525nm、640nmなどが多く用いられます。

なお、COVID-19の流行に伴いPCR(ポリメラーゼ連鎖反応, polymerase chain reaction)検査という言葉が広く知られることになりましたが、このPCR法の検出部にも光学的な方法(蛍光励起、吸光度)が用いられています。特に多項目を計測する場合などには波長も複数用いる必要があるため、フットプリントが小さいマルチチップLEDを用いることで検出部の小型化が可能です。
 


水分・糖分の検査などSWIR域の用途にも

加工食品や果物、野菜などの水分や糖度の計測にもLEDの光が用いられます。SWIR(短波赤外、Short wave infrared)と呼ばれる1000-1750nmの波長域には特に有機物の特徴的な吸収が多く存在し、 水は1450nmに、糖は1500~1650nm近辺に吸収帯があります。これらの吸収を光検出器あるいはイメージセンサで捉えることで、食品等の中の水、糖をはじめとする様々な物質の計測が可能です。ウシオはこれら用途に最適な世界最高出力・効率のSWIR域のLEDを幅広く取り揃えております。

前述した血中酸素飽和度測定の場合と同様に、計測対象(水、糖等)の吸収波長と吸収のない波長(リファレンス波長)を1つのLEDパッケージにまとめたマルチチップLEDは、最小のフットプリントで高精度な計測に必要な照明を提供します。 
 

さらなる高集積化―1パッケージに8チップを搭載 

さらに多波長を用いた複雑な照明の需要に応えるべく、1つのパッケージに最大8種類のチップを組み込むことができる新しいパッケージを開発中です。
 


僅か2.9 mm x 2.2 mm のフットプリントに最大8つの異なる波長のLEDチップおよびフォトディテクタ―を搭載可能でそれらは独立に駆動することが可能です。高機能化が進む光学式バイタルセンサや分光センサ等のアプリケーションに最適です。

ウシオのEpitexシリーズは、今回ご紹介したマルチチップLEDをはじめ、UV~SWIR(365~1750nm) をカバーする多くのLEDをラインアップしています。詳細はこちらをご覧ください。

  • Epitexシリーズについて

    epitexシリーズは、365nmから1750nmまでの紫外、可視、近赤外、SWIRの波長をカバーしており、その性能・品質には30年以上のチップ技術(エピタキシャル成長、プロセス等)及びパッケージング技術(放熱設計、光学設計等)の豊富な経験が活かされています。またパッケージもEDC、SMBB、SMT、マルチチップSMTなどの標準パッケージに加え数多くの形態のパッケージを提供しています。