世界初 発光波長193nmのArFエキシマランプを実用化

― レーザを用いず半導体製造用レジスト、材料開発を可能に ―

ウシオ電機株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:菅田 史朗、以下 ウシオ)は、世界初となる波長193nmの単色光を発する誘電体バリア放電エキシマランプ(以下 エキシマランプ)を開発し、実用化に成功しました。
これにより、線幅45nmの実現を目指すArF液浸リソグラフィプロセスに対応するレジストや各種材料など、レーザでしか行えなかった波長193nmを使用した実験や研究開発などが、ランプで手軽に行えるようになり、2008年9月、研究開発用として販売開始を予定しています。
なお、今回発表のエキシマランプを搭載した照射装置を、12月5日から幕張メッセで開催されるセミコンジャパン2007に参考出展し、デモンストレーションを実施する予定です。

※2007年10月30日現在 ウシオ調べ

主な特長

  1. ガス交換が不要
    ランプを使った照射装置なので、レーザーのように煩雑なガス交換は不要です。
    ガス配管や有毒ガス除外装置も不要です。
  2. メンテナンスが容易
    定期的なランプ交換のみの簡易なメンテナンス。光軸調整も不要。
  3. 照射範囲の選択が自由
    ランプと灯具の組み合わせチョイスにより、さまざまな照射エリアに対応できます。
  4. 持ち運びの出来るポータブルサイズ
  5. イニシャルコストは、半導体リソグラフィ用ArFレーザの数分の1
[左]ArFエキシマランプ [右]ArFエキシマランプを搭載した照射ユニット

[左]ArFエキシマランプ [右]ArFエキシマランプを搭載した照射ユニット

参考資料

開発の背景

線幅100nm以細の露光技術が求められる現在の半導体製造では、ArF(フッ化アルゴン)エキシマレーザ(発振波長193nm)が主流となっており、さらに、このArFエキシマレーザを応用した液浸リソグラフィは、線幅45nmを実現する上で最も有望視されています。

しかし、レンズとウェーハの間を純水で満たす液浸方式では、ウォーターマーク、マイクロバブル、残渣などによる欠陥、さらに水が浸出して起こるレジストのパターン輪郭の劣化など、さまざまな問題が発生しています。また、対応するレジストや材料の設計には、レジストと流体の相互反応、酸の拡散と浸出、重合体と添加物の混合で生じる分子の異方性など、考慮すべき問題が多く、レジスト・材料メーカーにとって大きな課題となっています。

これらを解決するため、多くのレジスト・材料メーカー、大学などの研究機関では、ArFエキシマレーザを購入し、先端レジストの開発に取り組んでいますが、レーザ自体が高価であること、フッ素ガスボックス等付帯設備が必要なこと、メンテナンスが煩雑であること、照射幅など実験条件の変更が難しいこと、などの理由により柔軟な実験・研究が難しいのが現状です。

そのため、より手軽に193nm光を照射できる実験装置開発の要望が強く、今回、ウシオでは、Arfレーザと同じ波長193nmの発光を実現することで、柔軟な実験・研究開発を可能にしました。

ArFエキシマランプの発光原理

誘電体で構成した発光管の外側には電極が固定され、発光管の中には放電ガスが充填されています。今回発表するArFエキシマランプには、アルゴンとともに低濃度のフッ素が充填されています。

電極に交流の高電圧を印加すると、発光管内で細い針金状の放電プラズマ(誘電体バリア放電)が多数発生します。この放電プラズマは高エネルギーの電子を包含しており、かつ、瞬時に消滅するという特徴を持っています。

この放電プラズマにより、放電ガスの原子が励起されて、瞬間的に励起状態の分子(ArF*:エキシプレックス)となります。このエキシプレックス状態から元の状態(基底状態)に戻るときに、ArFエキシプレックス特有の波長(193nm)を発光します。

誘電体バリア放電エキシマランプの主な用途

エキシマランプは、充填するガスの種類により、126nm/146nm/172nm/222nm/308nm といった単色光を効率よく照射することができ、半導体やFPD製造の現場を中心に、主に以下の用途で使用されています。

液晶パネルやHDDディスクの光洗浄/レジストアッシング/レジスト残渣のアッシング/プラスチック基板の洗浄/金属表面の洗浄、改質/Low-kキュア/PDP蛍光体評価/分析評価前の洗浄/ガスの分解/酸化膜の生成/除電/乾燥/ガラス・フィルムの張り合わせ/繊維の改質/有機EL封止管の接着性向上/有機ELの仕事関数アップ など