ウシオ電機が岐阜大学、アクトリーと共同で 世界初、常温かつ無触媒でNOxを分解できる「VUV直接脱硝」技術を開発

ウシオ電機株式会社(本社:東京都、代表取締役社長 菅田 史朗、以下 ウシオ)は、国立大学法人 岐阜大学(所在地:岐阜県、学長 森 秀樹、以下 岐阜大)および、株式会社アクトリー(本社:石川県、代表取締役社長 水越 裕治、以下 アクトリー)と共同で、世界で初めて、排ガスに含まれる大気汚染物質のNOx(窒素酸化物)※1を、VUV(真空紫外線)を利用し、常温かつ無触媒で脱硝できる「VUV直接脱硝」技術を開発しました。

脱硝とは、船舶等のディーゼルエンジン、火力発電所、ゴミ焼却場などの排出ガスに含まれる大気汚染物質であるNOxを、無害な窒素や水蒸気に分解する技術で、近年、国際的な排出規制の強化を受け、環境保全や省エネルギーの観点から非常に注目されています。

現在、脱硝には主に選択接触還元法(SCR法)が使われていますが、触媒が消耗品となりコスト高である上、特定の温度域以外では性能を発揮しないという問題があります。また、触媒を使わず、アンモニアを高温で分解し、NOxを還元する方法(SNCR法)も開発されていますが、1000℃程度の高温で起きる反応であるため、ガスを再燃焼させる機構とエネルギーが必要となります。

これに対し、ウシオ、岐阜大学およびアクトリーは、NOx/アンモニア/酸素が共存する排気ガスに直接VUVを照射することで、世界で初めて、触媒が不要で、かつ温度にも依存しない脱硝技術を開発しました。これにより、従来のような触媒が必要なく、常温でも脱硝が可能となり、従来技術の適用が困難であった船舶のディーゼルエンジンなどの低温の排出ガス※2の脱硝も可能になります。

脱硝技術の比較

触媒技術
VUV直接脱硝
無触媒還元
(SNCR法)
選択接触還元
(SCR法)
触媒の有無

不要

不要
×
処理温度

常温
×
1000℃

350~450℃

なお、本技術の概要は、8月5~6日に開催された第22回日本エネルギー学会大会において発表されています。

 ウシオは、中期経営ビジョンの一つとして「資源・環境・CSRを念頭においた事業展開」を掲げ、独自の環境方針※3のもと、環境性能と要求性能を両立する技術・製品開発に積極的に取り組んでおり、本技術の早期実用化・製品化を目指すとともに、今後も環境への貢献を推進していきます。

 
※1 NOx(窒素酸化物)とは、火力発電所やゴミ焼却場、ディーゼルエンジンなどの燃料を燃焼させることによって生成し、光化学スモッグや酸性雨などを引き起こす原因となる大気汚染物質。
人体に対する作用としては、強い酸化作用のため、細胞を傷害するので、粘膜の刺激、気管支炎、肺水腫などの原因となる。中国はじめ各国でも、NOxに対する規制は年々厳しくなっています。

※2 船舶のディーゼルエンジンからの排気は、180℃以下の低温であることと、触媒を被毒する硫黄酸化物を高濃度で含むため、従来法の適用が困難で、無触媒かつ低温処理が可能な脱硝法の開発が求められています。
また、IMO(国際海事機関)によるNOx3次規制が2016年から発効され、1次規制より80%以上のNOx低減が義務付けられています。

※3 ウシオの環境への取り組みについては、Webサイト(http://www.ushio.co.jp/jp/csr/index.html)でご覧いただけます。

VUV直接脱硝イメージ

国立学校法人 岐阜大学について

1949年設立。本部岐阜県岐阜市。「学び,究め,貢献する」地域に根ざした国立大学として、5学部、大学院7研究科を擁する。環境科学分野は、生命科学分野と並んで、大学の重要テーマと位置づけられています。http://www.gifu-u.ac.jp/

株式会社アクトリーについて

1971年創立。本社石川県白山市。産業廃棄物の焼却炉をはじめ、環境関連プラント事業を専門とする「環境創造企業」。廃棄物処理のみならず、マテリアルリサイクル、サーマルリサイクル、エネルギー回収、温暖化ガス削減といった関連技術はさらに重要性を増しています。http://www.actree.co.jp/