USHIO

光技術情報誌「ライトエッジ」No.11(1997年10月発行)

レーザー学会学術講演会第17回年次大会 講演予稿集

(平成9年1月)

24pIII5
レーザー学会学術講演会第17会年次大会
エキシマランプを用いた非線形光学結晶のエッチング
Etching of nonlinear optical crystals using an excimer lamp

竹添法隆、横谷篤至、黒澤宏、佐々木孝友、五十嵐龍志、松野博光
N.Takezoe,A.Yokotani,K.Kurosawa,S.Sasaki,T.Sasaki,T.Igarasi,H.Matuno
[宮崎大学・工 大阪大学・工 ウシオ電機(株)]
[Miyazaki Univ,Osaka Univ,USHIO INC]

1. はじめに

有機線形光学結晶は、非線形光学定数が大きいなど、魅力的な性質を有している反面、柔らかくてもろく、機械加工が困難でデバイス作成が難しいという短所を有しているため、新しい加工技術の開発が望まれている。筆者らは、最近開発された極短波長の真空紫外光を手軽に照射出来るエキシマランプを用いた有機材料の加工技術の開発を進めており1.2、今回、この技術の有機非線形光学結晶の加工への適用を試みたので報告する。

2. 実験

光源として投入電力約20Wのヘッドオン型XeおよびArエキシマランプ(ウシオ電機製)を用いた。発光中心波長はそれぞれ172nm(7.2eV)および126nm(9.8eV)である。10 Torr.の空気中、およびAr雰囲気中で、約12m/cm2の照度でサンプル結晶に照射した。サンプル結晶としては、劈開したLAP(L-arginine phosphate monohydrate)、LHBF(l-histidine terrafluoriborate)の単結晶を用いた。照射前後の表面状態の変化を、主にAFMを用いて観察した。

3. 結果および考察

図1に10Torr.の空気中で行ったXeエキシマランプ照射前後のLAP結晶の表面のAFM像および断面形状を示す。照射前の劈開に伴って形成された鋭いステップ状の表面が、滑らかな形状に変化している。LHBF結晶でも同様な蛍光が観察された。エッチング速度は両結晶とも、約0.5nm/min.程度であった。またLAPの場合、エッチング後、数時間空気中で放射すると、エッチングされた部分の一部がもとの部分よりも高く盛り上がっていく現象が観察された。これは、真空紫外光で分子内の有機部分が分解され、表面に吸湿性の高いリン酸化合物が残るため起こる現象であると思われる。そこで、POの結合エネルギー(6.8eV)より十分高い光子エネルギーのAr.エキシマランプを用いて、Ar雰囲気中で照射を行ったところ、空気中に放置しても変化しないエッチング面が得られた。

4. まとめ

エキシマランプから放射される真空紫外光を用いたフォトエッチングにより、有機非線形光学結晶が加工出来ることがわかった。この技術は単独で加工に用いるほか、表面荒さが照射により滑らかになることにより、ダイヤモンドターニングや研磨などと併用して、加工傷を軽減するような使い方も可能と考えられる。

  • 1) 竹添他:第56回秋期応用物理学会学術講演会予稿集No.3 26a-SQ-29(1995)
  • 2) 竹添他:レーザー学会学術講演会第16回年次大会講演予稿集 25AIV6(1996)
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