レーザーダイオード(LD)

製品・技術 超微粒子の検出に貢献するレーザーダイオード

2022.09.05

重要度を増す超微粒子の計測・管理

 クリーンルームにおけるクリーン度管理に代表される微粒子のモニタリングは幅広い産業で不可欠となっています。その代表的な計測手法がレーザー光の散乱を用いた方式です。下図に示すように、気相または液相の計測対象フローに対しフロー側方からレーザー光を入射しパーティクル存在時に発生する散乱光を光検出器で計測します。

 
半導体産業では微細化の進展により、問題とすべきコンタミネーションのサイズが極めて小さくなってきており、数十ナノメートルサイズのパーティクルのモニタリングが必要となってきています。また医薬品・食品工業では細菌等の微生物汚染を防ぐ手段としてパーティクルの計数管理を行っていますが、消費者意識の高まりを受けより厳格な管理が求められています。
 

Rayleigh散乱領域での散乱の様子と必要なレーザー照明

 粒子による光散乱の様子は、波長に対する粒子の大きさで大きく様相が違い、粒子径が波長よりも十分に小さい場合はRayleigh(レーリー)散乱理論で、粒子径が波長程度の場合はMie(ミー)散乱理論でよく説明できることが知られています。


Mie散乱領域では、前方散乱(入射光の進行方向への散乱)が優位となりますが、散乱光同士の干渉により散乱光角度分布は散乱体の形状を反映した複雑なパターンになります。一方Rayleigh散乱領域では前方・後方散乱が優勢となります。ただしこれには偏光による依存性がありますのでレーザー光の偏光方向に注意が必要になります(後述)。一般に計測したい最小粒径はレーザー光波長よりもずっと小さく、Rayleigh散乱領域での計測となります。
 ここで、Rayleigh散乱の強度(I)は次式にて表されます、


  • I1, I2はそれぞれ散乱平面(入射光・散乱光両ベクトルで規定される面)に垂直、平行な偏光での散乱強度です。I1o, I2oはそれぞれの偏光の入射光強度、r, nは粒子の半径と屈折率、λは入射光波長、dは散乱点から観測点までの距離、θは散乱角(入射光・散乱光ベクトルの成す角)です。
    この式からまず、散乱強度は粒径(r)の6乗に比例していること、すなわち粒径が小さくなると急速に散乱強度が小さくなる(粒径が1/2になると散乱強度は1/64になる)ことが分かります。
     同じく散乱強度は入射光波長(λ)の4乗に反比例し、散乱強度を大きくするためには入射光波長を短くすることが有効であることが分かります。例えば波長850nmを基準とした場合、波長を660nmとすれば散乱強度は2.75倍に、405nmにすれば19.4倍にすることができます。またレーザーの集光スポット径の理論限界は波長に比例するため、散乱の弱さを補うべく光束密度を高める意味においても短波長光は有利になります。ただし波長の変更には光検出器の特性や蛍光の発生による影響などを考慮する必要があります。
    偏光に関して、偏光方向が散乱面に垂直なときの散乱強度(I1)は散乱角(θ)成分を持たない、すなわち等方的に散乱するのに対し、偏光が散乱面に水平の場合 (I2)はcos2θに比例するため、例えば側方散乱(θ=90°)の成分は0となります。フォトディテクターを側方散乱検出位置に置く場合は、偏光が垂直な入射光のみが計測に寄与することになります。ウシオのレーザーダイオードには各製品のデータシートに偏光方向情報をTEモード/TMモード(それぞれレーザーダイオードの活性層に対して水平/垂直な偏光方向)として記述しております。

    光散乱式微粒子モニターに適したレーザー製品例

  •  ウシオのレーザーダイオードの多くの選択肢の中から、光散乱式微粒子モニターに適した製品例をいくつかご紹介します。粒径が小さくなると急速に散乱強度が落ちることから、できる限り光束密度が大きい照明が必要であり、single modeの高出力レーザーが適しています。
     

  • 波長660nm帯はDVD用として広く普及した波長帯で、多くの計測機器、センサーもこの波長帯で光学系を含めた設計がなされており、今も広く用いられています。HL65221DGシリーズは660nm帯での高効率・高出力を高温動作においても達成すべく開発された最新のレーザーダイオードです。光出力は200mW(CW)またパルス動作では400mWの高出力を誇ります。最高75℃での動作が可能です。
     HL63641DGシリーズは波長639nmで200mWのハイパワーを実現したsingle modeレーザーダイオードです。最新の設計で電力効率を従来の28%から33%に改善しており、システムの省エネ化、熱設計の簡略化に寄与する製品です。同じく640nm帯のsingle modeレーザーダイオードであるHL63653TGは200mWのハイパワーを直径3.8mmの小型パッケージ(TO-38)で実現しており、機器の小型化・省スペース化に寄与します。
    波長405nmのHL40071MGおよびHL40161MGシリーズはそれぞれ光出力300mW/175mW(CW) とシングルモードとしては最高水準の光出力を実現したレーザーダイオードです。特にHL40161MGシリーズは最高85℃での動作が可能であることも特徴です。これらの製品はパーティクル、モニターをはじめ、短波長光を用いた計測やバイオメディカル分野における蛍光励起用に適した製品です。
    ここにご紹介した製品以外にも、ウシオのレーザーダイオードは幅広いラインアップでご要望にお応えします。詳しくはウシオレーザーダイオード webページをご覧ください。

     


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