レーザーダイオード(LD)

レーザー技術・サポート情報

半導体レーザの基本動作原理や、データシート上の記号・特性定義、取扱い時の注意事項などの技術情報をご紹介します。また、よくあるご質問と回答を掲載しています。ご検討、ご使用の際にご一読ください。

使用上の注意点

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素子性能を十分に発揮し、より高い信頼性をもってご使用いただくために、システム設計時や測定取扱い時にご配慮願いたい事項および注意点について説明します。

1. 絶対最大定格について

データシートに規定されている絶対最大定格は、瞬時たりといえども絶対に越えないようにしてください。
特に、次の点に注意してください。

  • LD を動作させる場合、AC 電源スイッチの ON-OFF、あるいは出力調整時に発生するスパイク電流で素子が破損することがあります。素子の使用に当たっては、必ず電源の過渡特性をチェックして、スパイク電流レベルで素子が最大定格をオーバーしないことを確認してください。
  • LD は、最大発光出力を越えてドライブしますと、反射鏡面が物理的な損傷を受けて瞬時破壊したり、劣化を誘発し、その信頼性が著く損なわれます。
  • 最大定格は、ケース温度 25°C における値が規定されています。したがって、温度が高くなるにつれて最大発光出力や許容損失は低下し、動作範囲が制限されますので、できるだけ余裕のある設計をしてください。
  • 最大定格以上の逆電圧は絶対に印加しないでください。

2. 静電破壊について

素子は、静電気により破壊もしくは劣化する危険性がありますので、静電破壊防止にご配慮ください。静電破壊は、人体に帯電している静電気、あるいは検査装置から発生する異常パルスおよびはんだゴテの漏洩電圧、運搬キャリアの材質が不適切である事等が原因で起こります。
使用に際しては、以下のような注意をお願いします。

  • 人体衣服に帯電した静電気による破壊を防止するため、取扱中は人体を高抵抗 (通常 1MΩ程度) を介して接地し静電気を放電させてください。
  • はんだゴテの漏洩電圧が素子に印加されないようにするため、はんだゴテはアースしてください。
  • 運搬中の容器、治具は、輸送中の振動などで帯電しないものを使用してください。導電性容器やアルミ箔などを使用するのが有効です。

3. 保管について

  • 保管条件は、温度 5~40°C、湿度 20~70%とし、できるだけ低温・低湿度に保ってください。また、出荷より2年以内に使用することを推奨します。また、急激な温度変化により、水分の結露が起きないようにしてください。乾燥窒素雰囲気中 (露点–40°C) に保管することを推奨します。
  • 保管の雰囲気は、有害ガスがなく、できるだけ塵埃の少ない状態にしてください。
  • 保管の容器は、静電気の帯びにくいものにしてください。

4. 安全性について

レーザ光は、見える見えないに拘わらず、目や皮膚などに障害を起こすことがあります。
使用に際しては、以下のような注意をお願いします。

  • 特にレーザダイオードの動作時にレーザ光の出射部や集束されたビームを直接覗き込まないでください。
  • レーザ光路を観察する場合は、蛍光板か赤外線カメラ等を使用して下さい。
  • レーザダイオードを医療機具に使用する場合は特別の留意が必要になりますので、事前に弊社にご相談ください。
  • レーザの安全に関しては、必ずJIS C6802「レーザ製品の放射安全基準」、21 CFR Part 1040.10に従ってください。
  • また、必ず詳細を JIS 6802、21CFR Part 1040.10の最新版でご確認の上、必要な安全対策を講じてください。

5. LD のパッケージの取扱い

  • 窓ガラス表面を汚したり、傷つけたりしますと光出力が低下したり、ファー・フィールド・パターンが乱れたりしますので触れないようにしてください。汚れがついたときは、綿棒にエタノールをつけ軽くふきとってください。
  • キャップを強くはさむなどしますと、窓ガラスのクラックや封止部の気密劣化の原因となります。
  • リード線を根元より曲げるとガラス溶着部がクラックし、気密劣化の原因となります。
  • パッケージの切断、加工、変形は出来る限り行わないで下さい。放熱のため圧入する等どうしても実施する必要がある場合には、過剰な外力によりLDやPD、ワイヤーやガラスキャップなどに影響を及ぼさない様に最新の注意を払って下さい。
  • 放熱板への取付けについて
    LD のパッケージは、必ず放熱板に取付けてご使用ください。ダイオード本来の高い信頼性を失わないために、パッケージへの機械的ストレスを最少にして十分な放熱効果をあげることが必要です。
  • 放熱板は動作させる条件によって異なりますが、50 × 50 × 2mm3以上の銅あるいはアルミ板を使用してください。
    注) ご参考です。高出力 LD は、このサイズより大きな放熱能力が必要になります。
  • 放熱板と素子のステムとの接触面は、平坦 (▽▽仕上げ以上) にしてください。また、放熱板の取付面での突起と反りおよびねじれはいずれも 0.05mm 以下としてください。
  • パッケージを放熱板にはんだ付けしないでください。
  • 取付ける際、工具がキャップに当たりますと窓ガラスクラックを招く恐れがありますのでご注意ください。

(6) はんだ付けについて

  • はんだ付けはリード線の根元から 1.0mm 以上離れた位置で行なってください。
  • フラックスが飛散して窓ガラスやレンズ部へ付着しないようにしてください。
  • はんだ付け時間は、260℃以下で、10 秒以内、または350℃以下で、3.5 秒以内としてください。

6. 動作時の注意点

(1) 静電破壊について
素子は静電破壊を起こしやすいのでそれを防止するため、取扱いや実装回路設計時には次の点に注意してください。

  • 作業台を電源アースラインと同電位にしてください。
  • 作業者は、人体アースをしてください。その際は、リストバンドを装着し電源アースラインと同電位部に接続してください(図 1)。
  • 高周波的にサージが発生する恐れのある装置は、素子の近くで動作させないでください。
  • 駆動回路のリードがアンテナとなり、誘導電界で素子が破壊する恐れがあります。表 1 に LD のサージ破壊防止対策の(例)を示します。
図 1 リストバンド装着例
図 1 リストバンド装着例

(2) LD を動作させる場合
LD を動作させる場合は、次の点に注意してください。

  • 放熱板を取り付けてください。その大きさは、動作する時間や出力にもよりますが、最初条件が決まらない場合は比較的大き目の放熱板 (50 × 50 × 2mm3 銅またはアルミ) を使ってください。
  • また、可能であればFANからエアーを供給して下さい。比較的小さい風量でも放熱効果が得られ、LDが破壊する危険性を低減することが出来ます。
  • 駆動回路は、APC (Automatic Power Control) 機能を有していることが望ましいのですが、回路が複雑になるにつれて調整ミスにより破壊させる場合が多々ありますので、最初に単に動作させてみるだけの目的では、簡単な定電流回路をおすすめします。
  • LD駆動回路の例を図2に示します。図2では、LDが点灯する電流を決める定電流回路を、オペアンプとトランジスタQ3、抵抗R1を用いて構成しています。APCを実施する場合には、トランジスタQ3のベース電位を制御する様にして下さい。
  • また、LDを変調する回路としてトランジスタQ1とトランジスタQ2で構成する高速スイッチ回路を示しています。LDを高速に変調する場合には、トランジスタQ1とトランジスタQ2のベース電位に小振幅差動信号を入力すると、LDを高速に変調することが可能になります。
  • 電源電圧VCCは、LDの降下電圧に合わせて、適切な値を決めて下さい。例えば、赤外LDや赤色LDの場合には、LDの降下電圧及びトランジスタの動作電圧を考慮して、一般に5V~6V程度が望ましいと考えられます。
  • このような回路構成にする事で、電源VCCから流れる電流を一定にすることが出来るので、電源電流の変化が少ない、回路動作の安定したLD駆動回路が実現できます。
図 2 LD 駆動回路 (例)
図 2 LD 駆動回路 (例)

表 1 LD のサージ破壊防止対策 (例)

項目 内容 仕様例
人体アース 作業者はきちんとアースをとっているか 1MΩの抵抗を介して腕に巻く (リストバンド式)
測定装置、検査装置や作業台のアースは共通になっているか シールドルーム使用時もアースは共通とする
アースのレベルを管理しているか 10Ω以下
電源 立下げ電源から個々の測定器電源へは、Noise Filter を通して配線する
電源個々に Noise Filter を入れる C と R で構成
電源自体は、通常 ON 状態にしておき、ON · OFF は外部SW で行う
停電時電源 OFF 順序制御
リレーのチャタリング
作業関係 電灯・同一室内 (同一 line) の電源線の ON · OFF 時は作業を一時中断する
梱包・測定作業の際は、イオンブローを行うか、弱い負イオン雰囲気内で行う (大量に製品を移動する場合も同じ)
はんだゴテ バッテリー式はんだゴテ
治具 · その他 キャリア治具 · 梱包ケースの導電化 (特に個別ケース)
作業場に導電マットを敷く 1x106 ~1x109Ω
室内雰囲気の湿度・管理 RH50 ± 10%目標
製品の端子間をショートする
ボリュームのガリ ボリュームの定期交換