レーザーダイオード(LD)

レーザー技術・サポート情報

半導体レーザの基本動作原理や、データシート上の記号・特性定義、取扱い時の注意事項などの技術情報をご紹介します。また、よくあるご質問と回答を掲載しています。ご検討、ご使用の際にご一読ください。

記号と定義

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1. 絶対最大定格

絶対最大定格は、いかなる外部条件の変動においても越えてはならない値です。特に規定しない限りはケース温度 Tc=25℃の値が規定されています。なお、特性の温度依存性は、個別仕様で規定します。

表 1 絶対最大定格

項目 定義
光出力
Po, Po (pulse)
連続 (C.W.) 動作、ないし規定条件でパルス動作させた場合の最大許容出力です。
逆電圧
V R
素子に逆電圧が加わる場合に許容できる最大値を示します。なお、PD内蔵の LD パッケージについては、LD 逆電圧を VR(LD)、PD 逆電圧をVR(PD)と区分し表示しています。
動作温度
Topr
素子のケース温度の値で定義します。製品により異なります。
保存温度
Tstg
素子を保存する場合の周囲温度です。製品により異なります。

2. 光学的電気的特性

各製品データシートに掲載した各品種の光学的電気的特性には、限界値と標準値とが示してあります。以下に光学的電気的特性の各項目について、その定義を概説します。

表 2 LD の光学的電気的特性

項目 定義
光出力
Po, Po(pulse)
規定された順電流 I Fを加えたときの光出力を表わします。
しきい電流
Ith
図 1 において A は自然発光領域、B はレーザ発振領域に区別できますが、レーザ発振を開始する電流をしきい電流 Ith といいます。実際上はB の直線 (例: 最大光出力の 80%と 20%を結ぶ直線) を延長し X軸 (電流軸) との交点の値としています。
動作電流
Iop
規定光出力時の動作電流です。
動作電圧
Vop
規定光出力時の動作電圧です。
スロープ効率
ηs
単位駆動電流当たりの光出力の増加分で図 1 において B 部分の傾きを示します。
ドループ特性
-Rth
図 2 において周波数 600Hz における、duty = 10%時の初期値を P0、 および duty = 90%時の最終値を P1とした時、次式で計算される値を熱抵抗と定義します。
ドループ特性
ビーム拡がり角
(水平)
θ//
ビーム拡がり角
(垂直)
θ⊥
非点隔差
As
レーザダイオードから出射された光は、図 3(a)のように拡がります。この光の強度をレーザダイオードの活性層に対し平行方向 (図で X 軸上)、垂直方向 (図で Y 軸上) で測定すると図 3(b), (c)の分布がえられます。これを遠視野像 (ファーフィールドパターン) といいます。この分布の 50%の強度の点の幅 (半値全幅 = FWHM : Full Width at Half
Maximum) をそれぞれ水平方向拡がり角θ//、垂直方向拡がり角θ⊥といい、角度 (deg.) で表わします。
また、図 3(b)と(c)の分布は、レーザ光の幅が最も狭くなる位置が、図3(d)に示すとおり、異なっています。この差を非点隔差と定義します。
発振波長
λp
レーザダイオードを動作させた場合の発振波長と強度分布 (スペクトル) の例を図 4 に示します。スペクトル強度が最大となる波長をλp と定義します。
立上り、立下り時間
tr, tf
図 5 に示すようにパルス応答特性において、ON 時に定常時の 10%から 90%にいたるまでの時間を立上り時間 tr、また OFF 時に定常時の90%から 10%にいたるまでに要する時間を立下り時間t fと規定します。
モニタ電流
Is
受光素子が内蔵されているタイプでは、その受光素子の感度をモニタ電流 ISで示します。定められた光出力 POにおける受光素子の電流値を表わします。
暗電流
I DARK
光がまったくあたらない状態で、規定の逆電圧を加えたときに PD に流れるリーク電流です。
容量
Ct
規定の逆電圧を加えたときの素子の端子間容量です。
図 1 光出力 対 順電流特性
図 1 光出力 対 順電流特性
図 2 ドループ特性
図 2 ドループ特性
図 3 ビーム拡がり角と非点隔差
図 3 ビーム拡がり角と非点隔差
図 4 発振スペクトル特性
図 4 発振スペクトル特性
図 5 t r , t f 規定
図 5 t r , t f 規定