レーザーダイオード(LD)

レーザー技術・サポート情報

半導体レーザの基本動作原理や、データシート上の記号・特性定義、取扱い時の注意事項などの技術情報をご紹介します。また、よくあるご質問と回答を掲載しています。ご検討、ご使用の際にご一読ください。

光素子の動作原理

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発光の原理

原子や分子内部の電子エネルギーは、図 1 のようにエネルギー準位という飛び飛びの値をもっています。電子が異なるエネルギー間で遷移するとき、次式のような波長の光を吸収したり放出したりすることがあります。

発光の原理

C : 光速度
E 1 : 遷移前のエネルギー
E 2 : 遷移後のエネルギー
h : プランク定数 (6.625 × 10–34 J · s)

図 1 エネルギー準位図
図 1 エネルギー準位図

この遷移過程には図 2 のように 3 種類あります。
第 1 は図 2(a)のように電子が安定した低いエネルギー準位 E 1から光を吸収して高いエネルギー準位 E 2 へ遷移するもので、これが共鳴吸収です。

第 2 は図 2(b)のように、電子が高いエネルギー準位 E 2 から、より安定な低いエネルギー準位 E 1 へ遷移し、このエネルギー差 | E 2 – E 1 | を光として放出するもので、これが自然放出です。この場合準位 E 2 にある電子は互いに関係なく遷移して行くので、放出光の時間的関係 (位相) は揃っていません。このような光はイン・コヒーレント光であり、自然放出光の特長です。

この現象はランダムに起こり、個々の光の位相、方向などは何ら関係がありません。熱平衡状態下では、低いエネルギー準位 E 1 に電子の存在する確率が、高いエネルギー準位 E 2 に電子の存在する確率よりも高いので、発光より、図 2(a)に示すような電子が光のエネルギーをもらい E 1 から E 2 へ移る吸収の方がまさっています。
発光を起すためには E 2 に電子の存在する確率が高い状態 (反転分布) にする必要がありますが、発光ダイオード(LED)では電流を流してやることでそれを実現しています。これを電流注入形といいます。

第 3 は図 2(c)のように高いエネルギー準位 E 2 にある電子が入射した光により強制的に低いエネルギー準位 E 1へ遷移させられる場合であり、これが誘導放出です。このとき発生する光が誘導放出光であり、入射光に共鳴した状態で放出されるので、その位相は入射光の位相と同じです。このような光はコヒーレント光であり、レーザダイオード(LD)の光はこの誘導放出を利用したものです。

図 2 エネルギー準位と遷移過程
図 2 エネルギー準位と遷移過程

電気回路の場合と同様に、発振には損失を上まわる利得ばかりでなく、帰還作用も必要です。レーザ光は誘導放出による増幅作用と鏡などにより帰還作用をもたせて発振させたものです。
図 3 は最も基本的な光共振器であるファブリ・ペロー共振器です。
LD は劈開によりチップの両端面が反射鏡になっており原理的には図 3 と同じようになっています。
入射した自然放出光のうち反射鏡方向に進むものは誘導放出作用で増幅され、反射鏡で反射されて同じ位置にもどります。この間反射鏡で透過、回折する光や、共振器内での散乱、吸収などによる損失があり、増幅作用による利得がこの損失よりも小さいと光は減衰してしまいます。LD の場合は電流を流して増幅作用を強化し、利得と損失とがつり合うと出発時ともどったときの光強度が等しくなります。この状態がしきい値であり、さらに利得が増加するとレーザ発振します。

図 3 レーザの基本構造
図 3 レーザの基本構造

半導体レーザでの励起は p-n 接合を利用した注入励起が主です。そして半導体結晶ではガス・レーザ (たとえば HeNe レーザ) に比べて原子が密に存在するため、大きな利得が得られ、反射率 30%、共振器長 300µm 程度で発振させることができます