世界初、紫外線でインプラントの接合能力向上と治療期間短縮を
実現する紫外線照射装置を欧州で販売開始

― UCLAと共同開発 ―

ウシオ電機株式会社(本社:東京都、代表取締役社長 菅田 史朗、以下 ウシオ)は、2013年11月30日から、歯科のインプラント治療で使用されるチタン製人工歯根の表面を紫外線照射により活性化することで、インプラントと骨との接合能力を約3倍以上改善させる※1と共に、治癒期間を約半分に短縮※2できる、世界初※3のインプラント用紫外線照射装置「TheraBeam® SuperOsseo」(以下、スーパーオッセオ)」をオランダの子会社(USHIO EUROPE B.V. )を通じ、欧州域内32ヵ国で販売開始いたします。

開発の背景 

歯科インプラント治療とは、骨細胞がチタンと結合しやすい性質を利用して、あごの骨にチタン製の人工歯根(インプラント)を埋め込み、骨細胞とチタンを結合させることで歯を復元する施術で、世界中で年間数百万人が受けているといわれる、広く普及した歯科治療方法です。

しかし、インプラント表面は製造されてからの時間経過に応じた自然現象として表面に炭素化合物が付着することで劣化し、徐々に親水性を失い、ほとんどの場合において使用時には親水性が無い状態になっていることが、米カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校(UCLA)歯学部 小川隆広教授の研究チームによって発見されました。
さらに同チームは、インプラント表面に付着した炭素化合物は特定の紫外線を照射することで除去され、インプラント表面の親水性が改善すること(紫外線による光機能化技術※4)により、骨細胞との結合能力が向上できる治療方法を考案していました。

これに対しウシオは、40年以上に渡って培ってきた、半導体やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などの製造プロセス向け紫外線照射装置の開発ノウハウを元に、小川隆広教授の研究グループと共同で、独自のUV光源を搭載したインプラント用紫外線照射装置を開発、「TheraBeam®」シリーズ※5として、世界で初めて製品化することに成功しました。

本装置を使用することで炭素化合物の付着により劣化したインプラントの表面状態を製造直後の状態まで復元し、インプラントと骨との接合能力を約3倍以上改善させる※1と共に、治癒期間を約半分※2にすることが可能となりました。
これにより、従来のインプラント治療と比べて以下のメリットを患者様にご提供でき、より安心・安全なインプラント治療が可能になります。

紫外線による光機能化技術の主な特長

治癒期間の短縮

従来、インプラントをあごの骨に埋め込んだ後、平均6ヵ月程度必要とされてきた治癒期間を約半分※2に短縮し、平均3ヵ月程度にすることが可能。

受療機会の拡大

インプラントと骨の接合能力が向上することで、接合面積が小さい小型のインプラントによる治療が可能になるため、あごの骨の厚みや幅が不足している患者様でも骨形成など事前の外科処理なく、受療が可能。

低侵襲性

小型のインプラントが使用できるため、骨の中の神経を損傷する可能性が低減、インプラント周辺炎や合併症などのリスクも低下。

販売と今後の展開について

ウシオは、2013年10月30日には欧州域内の医療製品の販売に必要とされるCE申請を完了しており、11月30日より、オランダの子会社(USHIO EUROPE B.V. )を通じて、ドイツやイタリアを始め欧州域内32ヵ国での販売を開始します。

また、2014年度中には、米国での販売を開始する予定です。 ウシオはこれからも臨床現場との綿密な連携のもと、光の専門メーカーとして医療分野が直面する課題を解決し、治療や検査における患者様の痛みや負担を減らQOL医療の実現に向けた光医療機器・サービスをご提供してまいります。

なお、2013年11月16日(土)~17日(日)に、じゅうろくプラザ(岐阜市文化産業交流センター)で開催される「日本口腔インプラント学会中部支部総会・学術大会」内において、小川隆広教授が光機能化技術について講演する予定です。

※1)接合速度が約3倍以上改善(出典:Funato et al., Int J Oral Maxillofac Imp 2013; 28: 1261; Suzuki et al., Imp Dent 2013;22:481)

※2) 治癒期間が最大50%低減(出典:Funato et al., Int J Oral Maxillofac Imp 2013; 28: 1261; Suzuki et al., Imp Dent 2013;22:481)

※3)2013年10月1日現在自社調べ

※4)光機能化技術とは、有機物を分解・除去する性質を持つ特定の紫外線を照射することで、インプラントの材料であるチタン表面に付着した炭化水素を除去し、濡れ性を改善(親水化)し、劣化したインプラントの性能を製造直後の状態に復元させる技術。紫外線は、インプラントを埋め込む直前に15分間照射し、準備も含めて約20分で完了するため、患者様に麻酔を施している間に処理完了できるため簡便であり、歯科医および患者様への負担感が少ない。

※5)「TheraBeam®」シリーズとは、ウシオ電機が開発・製造・販売している紫外線を使用した医療機器製品の総称。2008年9月には、白斑、乾癬、アトピー性皮膚炎などが保険適用となる紫外線皮膚治療器「セラビーム® UV308」の販売を開始している。

製品仕様

【販売名称】  TheraBeam®SuperOsseo
【一般名称】  Dental Implant Surface Conditioning System
【寸   法】  250(W)×305(D)×257mm(H)
【重   量】  約10kg

装置開口部(左)と、内部の照射イメージ(右)

紫外線照射前(上)と、照射後(下)の比較

小川隆広 教授 略歴

UCLA歯学部ワイントロープセンター、先端補綴学、インプラント、生体材料学講座教授(終身教授位)、骨・インプラントサイエンス研究チーム(LBIS)ディレクター。1990年 九州大学歯学部卒業、1994年 同大学院博士課程卒業、2004年 米国カリフォルニア州歯科医師特別免許取得、2011年 UCLA歯学部教授(終身教授位) 【受賞歴】2010年 国際歯科医学学会 William J. Gies賞、2011年 米国補綴学会最高学術賞、2012年 Academy of Osseointegration William R. Laney Award 最高研究論文賞。
http://www.ucla-ogawa-lab.org/

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