低濃度の亜酸化窒素(N2O)ガスとメタン(CH4)ガスを、分解・無害化できる技術を開発


ウシオは、温室効果ガスである亜酸化窒素(以下 N2O)ガスとメタン(以下 CH4)ガスを、低濃度であっても光技術を用いて1リアクターで分解できる技術を開発しましたので、お知らせします。

地球温暖化係数がそれぞれ二酸化炭素(CO2)の300倍、25倍と非常に高いN2OとCH4は、下水処理や医療麻酔、廃棄物処理などの現場で放出されています。特にN2Oは低温触媒での分解や放出されたガスの捕集が難しく、現状ではその対策が困難な状態です。N2OとCH4の分解方法は現在、高温燃焼や高温触媒方式が知られていますが、高温にする際に大量のCO2を排出してしまうことや触媒時のアンモニア利用による排水処理などが課題となっています。

これらの課題に対し、ウシオは創業以来培ってきた紫外線技術を応用し、これらの2種類のガスを低濃度にも関わらず、1プロセスで分解・無害化できる技術を開発しました。また、高濃度のガスに対しても有効です。

具体的には、波長172nm の紫外線を発するエキシマランプを用いて、N2O・CH4と空気を混合させたガスに(100秒前後)照射する実験を行いました。その結果、低濃度(50ppm・100ppm)、高濃度(5%(50,000ppm))に限らず、N2Oは70%程度、CH4は100%の分解率を達成できることを確認できました。

 


この技術は、現状対策が困難である低濃度の温室効果ガス(N2O・CH4)を1リアクターで分解を実現できるだけでなく、高温処理を必要としない常温・常圧の状態、かつ、触媒や還元剤なども必要としないことが最大の特徴です。

例えば下水処理場でこの技術を活用した場合、汚水流入量が1日30,000m3程度の中規模下水処理場であれば、今回の実験結果から年間N2O削減量2トン、CH4削減量5トンとなり、CO2換算で年間725トンの削減が理論上可能であることが検証できました。
(条件: N2O:70%・CH4:100%分解を想定、N2O濃度30ppm・CH4濃度150ppm、温暖化係数N2O:300・CH4:25)

なお、今後は実用化に向けさらに研究・開発を進め、2025年に実証実験を開始し、2030年の事業化を目指します。

ウシオは、2030年長期ビジョン「光のソリューションカンパニーへ」の達成に向けて、未来の社会課題を「光」を軸としたウシオの事業で解決し、社会的価値の拡大を通じて、経済的価値の成長につなげていくことを掲げています。その中で、全世界共通の大きな課題である地球温暖化に対してウシオが創業以来培ってきた光学・光源・バイオなどの技術を活かし貢献するための研究・開発を進めており、今回の開発はその活動の一環によるものです。

ウシオは今後、地球温暖化対策においても、社会実装を通して「地上炭素ネットゼロと、人々の幸せを両立できる世界」に「光」で貢献していきます。

※ CO2を基準にして、ほかの温室効果ガスがどれだけ温暖化する能力があるか表した数字のこと。N2OやCH4CO2と比較し、排出量は少ないものの温暖化係数が高いことから、近年これらの排出に対しても対策が必要であると言われています。

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