ウシオ、大阪大学の「メタンガスのギ酸・メタノール化」の共同開発研究へ参画


ウシオ電機株式会社(本社:東京都、代表取締役社長 内藤 宏治、以下 ウシオ)は、この度、大阪大学先導的学際研究機構(機構長:尾上 孝雄)の「メタンガスのギ酸・メタノール化」の共同開発研究へ参画しましたのでお知らせいたします。

家畜ふん尿の嫌気性発酵で得られるバイオガスは、温室効果ガスであるメタンが約60%含まれており、エネルギーとして活用できます。現在、そのバイオガスのエネルギー活用のため各地でプラントが建設され、メタンガスをボイラーや発電機の燃料として利用して熱や電気を取り出していますが、その過程で二酸化炭素が発生するという課題があります。また、取り出した電力の活用目的は、固定価格買取制度(FIT)※1を利用した売電というケースが大半を占めますが、そのFITも近い将来に終焉を迎えるといわれており、FIT終了後のバイオガス活用について多くの議論がされています。

同機構の大久保 敬教授らの研究グループは、二酸化塩素を用いた光反応で、CO2を排出することなく常温・常圧下で空気とメタンからメタノールとギ酸を作り出すことに世界で初めて成功しており※2(図1)、2018年2月に発表しています 。
 
                                              図1 二酸化塩素によるメタンの光酸化の反応式


そこでウシオはこの度、大阪大学が中心となって活動している本コンソーシアムに対し、これまで培ってきた光技術を使い、その光反応に最適な「光」とリアクターを提供することとなりました。

この技術を応用することで、バイオマス事業・酪農・下水処理場などで排出されるバイオガスの一部を、温室効果をもたらすことなくギ酸・メタノールといった貯蔵、運搬可能な液体エネルギーとして利用することが可能となり、エネルギーの地産地消や地域の循環型酪農などへの貢献が見込まれます。今後は実用化に向けさらに研究・開発を進め、2023年に実証実験を開始し、2027年の事業化を目指します。

ウシオは、2030年長期ビジョン「光のソリューションカンパニーへ」の達成に向けて、未来の社会課題を「光」を軸としたウシオの事業で解決し、社会的価値の拡大を通じて、経済的価値の成長につなげていくことを掲げています。その中で、全世界共通の大きな課題である地球温暖化に対してウシオが創業以来培ってきた光学・光源・バイオなどの技術を活かし貢献するための研究・開発を進めており、今回の参画はその活動の一環によるものです。

ウシオは今後、地球温暖化対策においても、社会実装を通して「地上炭素ネットゼロと、人々の幸せを両立できる世界」に「光」で貢献していきます。

※1  再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度
※2  2018年2月発表。
Kei Ohkubo, Kensaku Hirose, Light-Driven C-H Oxygenation of Methane into Methanol and Formic Acid by Molecular Oxygen Using a Perfluorinated Solvent
Angew. Chem. Int. Ed. 2018. 57, 2126-2129.



■用語説明
【ギ酸】乳牛の飼料であるサイレージを生産する際に添加剤として使用されている。最近では水素キャリアとしてのポテンシャルも期待されており、触媒開発の研究も盛んにおこなわれている。

【メタノール】別名メチルアルコール。燃料や溶剤などとして広く使用されている。また、フェノール樹脂、接着剤、酢酸などの基礎化学品の原料である。最近では、直接メタノール燃料電池の実用化が期待されている。しかし、その合成は高温・高圧を要することが問題となっている。


 

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