EUVAでのDPP開発で発光点出力1kWを実現、LSI量産用EUV露光用光源の実現に端緒を開く
このたび、EUVAは、EUV―DPP光源の開発において、発光点出力1kWを実現いたしました。この結果、LSI量産ラインで要求される露光装置用EUV光源に必要な集光点出力100W以上の実用光源の実現が大いに期待できることとなりました。今回の成果は、EUVAの組合員企業であるウシオ電機(株)、その子会社であるドイツのXTREME社及び、PhilipsEUV社との協力により実現したものです。
発光点出力1kWを実現したDPPのタイプは回転電極型LA-DPP (Laser Assisted DPP: レーザ融合型DPP)です(参考図1)。液体Snを塗布した回転電極にレーザを照射してプラズマを発生させ、そのプラズマが種になって放電が生起し、EUV光が得られるという原理のDPPです。レーザは放電を起こすためのトリガー(スイッチ)の役割を果しております。
LA-DPPは、従来の固定型電極DPPでの問題点であった電極寿命が飛躍的に延び、ほぼ半永久的な寿命となること、高品質・高安定な点光源が得られること、除熱機構の採用により高出力化が容易なこと、などの優れた特徴があります。
発光点1kWの実現には、NEDOからEUVAへの委託研究による高信頼化技術開発、およびEUVAでの自主研究による高出力化技術開発が大いに寄与しております。中でも、独自のアイデアに基づき、NEDOの支援により開発が進んだレーザトリガー技術を適用することにより、光源の高出力化、高信頼化が大きく進歩いたしました。この技術開発により、放電入力に対する発光点出力の変換効率(CE)が、従来の1.5倍程度以上、良くなりました。この高CE化により発光点での高出力化、延いては集光点での高出力化が可能になります。さらに、電源パルス周波数については、従来の5kHz程度から15kHzと3倍の高繰り返し化を達成し、高出力化が進展しました。高CE化とともに電源周波数の高繰り返し化が、この度の発光点1kWの実現に貢献しました。
EUVAの支援の下、組合参加企業であるウシオ電機は、その子会社であるドイツのXTREME社、Philips EUV社とともに、LA-DPPの実用化開発を推進しています(光源装置モデル、参考図2)。これまでの開発で、発光点420Wで長時間連続運転、Duty100%が実現しております。今後、発光点1kWにおける長時間連続安定動作を実現するとともに、発光点出力1kWから集光点出力100W以上を得るために、コレクタなど集光光学系の開発に注力することとしております。EUVAといたしましては、早期に集光点100W以上の実用的な光源技術を完成させ、EUV露光装置のLSI量産ラインへの導入を確実なものとなるよう促進していく所存です。
用語説明
EUVA:Extreme UltraViolet Lithography System Development Association
技術研研究組合極端紫外線露光システム技術開発機構
NEDO:New Energy and Industrial Technology Development Organization
新エネルギー・産業技術総合開発機構
XTREME社:ウシオ電機(株)が100%の資本を有するドイツのEUV光源メーカ
PhilipsEUV社:オランダRoyal Philips社のドイツの子会社。EUV α装置の光源にDPP方式のEUV光源を供給している。XTREME社と協力してEUV–DPP光源を開発中。Philips EUV社は、技術資源を含め、EUV光源事業の全てをウシオ電機(株)に譲渡する予定。
DPP光源: DPP(Discharge produced plasma)とは放電で生成するプラズマからEUV光を発生させるEUV光源
LPP光源:LPP (Laser produced plasma)とはレーザで生成するプラズマからEUV光を得る光源
発光点出力:発光点であるプラズマが発光するEUV光の出力
集光点出力:発光点でのEUV光出力はコレクタ(後出)で露光光学系の入り口であるに導光される。この露光光学系の入り口を集光点と呼び、この集光点におけるEUV光の出力が集光点出力。露光機の生産性は集光点出力で決まる。世界の露光機メーカが合同で提示する量産用EUV露光機に必要な集光点出力は115W(レジスト感度5mJ/cm2)。
コレクタ:発光点からのEUV光を集光点に集光するための光学素子。発光点出力が大きくなるとコレクタにかかる熱負荷が大きくなり、高熱負荷用コレクタの開発が必要
Duty:Duty Cycleのこと。Duty Cycle=発光時間/(発光時間+発光休止時間)。(発光時間+発光休止時間)が繰り返されるので、Duty Cycleと表現。
繰り返し:EUV光源はパルスで発光する。1秒当たりのパルス数を繰り返し(周波数)と呼び、Hzの単位で表現。1kHzの繰り返しでは1秒間に1,000回パルス発光。
熱負荷:発光点であるプラズマからはEUV光以外の光(放射成分)やエネルギーをもった粒子(非放射成分)が放出。放射、非放射成分がコレクタの当たることにより、コレクタは高温になるので、プラズマから放出される放射、非放射成分はコレクタの熱負荷。
参考図1 LA-DPPの原理図

参考写真:EUVA/XTREME社/PhilipsEUV社により開発中のDPP光源装置

本件に関するお問い合わせ先
技術研究組合 極端紫外線露光システム技術開発機構 研究企画部
TEL: 044-221-6151 URL:http://www.euva.or.jp