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独自技術SoTの誕生。

九州大学システム情報科学研究院I&Eビジョナリー特別部門の興教授と共同研究でシリコーン樹脂を用いたマイクロTASデバイスの開発に取り組んでいた時のことです。蛍光標識した生体分子を測定するために、蛍光測定装置の試作を行っていたのですが、その際に蛍光測定装置の迷光・散乱光抑制対策を検討する中でシリコーン樹脂を用いたモノリシックな光学系「SoT:Silicone Optical Technology」を発明しました。

通常、光路は空間(エアー)で形成されていますが、SoTでは光路と導波路界面での屈折率の違いによる反射を抑制するために、光路に透明シリコーンを使用しています。この界面は同一材料でできているので屈折率の違いによる反射が大幅に抑制され、迷光や散乱などが低減されます。またシリコーンは加工性にも優れ、ガラスに近い特性を持ち物質特有の光も少ない。さらに熱や衝撃に強いため、小型高性能な光学パーツとしてさまざまな機器に組み込むことが可能となりました。

SoTは、九州大学システム情報科学研究院I&Eビジョナリー特別部門興雄司研究室との共同開発成果です。

残念ながら開発した技術は、そこでは採用されませんでした。しかし同じく共同研究を実施していた九州大学農学部の久原教授から、その技術を用いて吸光度計を開発してはどうかと、アドバイスをいただいたのです。確かにラボでは分析装置は共有で、待ち時間も長い。測定のために幾度かのピペットワークも必要で、精神的、肉体的なストレスも発生します。さらにバイオ関係の研究室の半数以上が女性で、夜遅くまで実験しています。こうした様子を見て、実験を効率よく行える新しい分析装置が必要だと感じていたのです。

開発に着手するにあたり、久原先生からは「分析メーカーが作る従来の装置の真似をするのではなく、"電機メーカーがつくる分析装置"と言うコンセプトで開発してはどうか?」と追加のアドバイスがありました。そこで電機メーカーとしてできる限りの小さいサイズの試作品を作成して展示会に出品したところ「あまりにも小さ過ぎる」と、当初の評判は良くなかったですね(笑)。

ng/mLを実現したウシオ独自のSoT搭載。

ウシオ独自の光技術「シリコーン・オプティカル・テクノロジ(Silicone Optical Technology : SoT)」は、シリコーン樹脂を用いたモノリシックな光学系。樹脂への機能材料分散により迷光や散乱光の抑制、耐振動性・衝撃性にも優れており、ガラスなどを用いた従来の光学系に比べ小型高性能化を実現できます。

好きなときに、どこでも使える手のひらサイズの吸光度計。

その後、改良を重ね、製品化し、2015年9月から出荷を開始しています。電池駆動で持ち運べるほど小型なので、わざわざ移動しなくても、実験ベンチで測定が行えます。また特別な消耗品を必要とせず、サンプルチューブのまま測定が可能です。必要なときにすぐに測定できるので、 測定待ちによるサンプル変性の心配もありません。スマートフォンやタブレットを使って、ワイヤレスで測定が行え、測定データはPCで読み出して、撮影した写真と一緒にレポート編集することもできます。さらに従来装置と同等の性能でありながら、一人1台所有できる価格帯を実現しました。

タブレットと組み合わせたデモンストレーションでは、測定の簡便さ、測定時間の短さ、そしてサイズの小ささに多くの方が驚かれます。実際の測定操作はサンプルチューブをセットして測定ボタンを押すだけ。また分析装置メーカーの方からも、良い製品だとコメントをもらっています。ぜひこれからも、お客さまの期待に応えていきたいと思っています。

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