193nm光の「ArFエキシマランプ」販売を開始
― 線幅32nm半導体の実験・研究コストを大幅ダウン ―
ウシオ電機株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:菅田 史朗、以下 ウシオ)は、193nm光を放射する誘電体バリア放電エキシマランプ※1(以下「ArFエキシマランプ」)を、2009年4月から販売することを決定いたしましたので、お知らせします。
これに先立ち、12月3日から幕張メッセで開催される「セミコンジャパン2008」に、最先端半導体製造の実験・研究用として、「ArFエキシマランプ」を搭載した照射装置を参考出展し、デモンストレーションを行う予定です。(ブースNo.4D-702)
線幅100nm以細の露光技術が求められる現在の半導体製造では、リソグラフィ用光源として、ArFエキシマレーザ(発振波長193nm)が主流となっています。さらに、線幅32nmの実現に向けては、このArFエキシマレーザを使用した液浸リソグラフィが最も有望視されています。
しかし、液浸方式の実用化には課題※2が多く、その解決のための実験や研究を進めるうえで、半導体デバイス・マスクメーカー、レジスト・材料メーカー、大学などの研究機関では、高価なArFエキシマレーザを購入し、フッ素ガスボックス等の付帯設備を揃えなければならず、また、煩雑なメンテナンスが必要であることが大きなボトルネックとなっています。
ウシオは、2007年11月、このArFエキシマレーザの代替品として、世界で初めて193nm光を放射する「ArFエキシマランプ」を開発しており、今回の「ArFエキシマランプ」は、およそ1年をかけて、照度の安定性や長寿命化、電源の小型化、装置化などの改良を加え、製品化したものです。
これにより、従来の高価な装置・設備、ならびに煩雑なメンテナンスが不要となり、大幅な開発費の節減、柔軟な研究開発を可能としました。
※1:誘電体バリア放電の短時間放電が多数生じる特徴を生かして、希ガス原子や、希ガス原子とハロゲン原子によって形成されるエキシマからの光を放射する放電ランプのこと。充填するガスの種類により、126nm/146nm/172nm/222nm/308nm といった単色光を効率よく照射することができ、液晶パネルやシリコンウェハの光洗浄、レジストやレジスト残渣のアッシング、基板や金属表面の改質、Low-kキュアなど、半導体やFPD製造の現場を中心に使用されています。ウシオの液晶パネル製造における、パネル洗浄用エキシマランプの世界シェアは約80%(ウシオ調べ)。 |
※2:ウォーターマーク、マイクロバブル、残渣などによる欠陥、さらに水が浸出して起こるレジストのパターン輪郭の劣化など、さまざまな問題が発生しています。また、対応するレジストや材料の設計には、レジストと流体の相互反応、酸の拡散と浸出、重合体と添加物の混合で生じる分子の異方性など、考慮すべき問題が多く、レジスト・材料メーカーにとって大きな課題となっています。 |
1.主な特長
- 1)大幅なコストダウン
ArFエキシマレーザに比べ、イニシャルコストを10分の1以下に削減。 - 2)安全(危険なガスの保有、管理が不要)
ランプを使った照射装置のため、ArFエキシマレーザに必要とされるフッ素ガスを使用せず、安全。ガス配管や有毒ガス除外装置も不要です。 - 3)柔軟性のある研究・開発が可能
メンテナンスは定期的なランプ交換のみ。光の角度や焦点を合わせるための光軸調整も不要。 また、装置は持ち運びのできるポータブルサイズ (W400mm×D200mm×H150mm、重さ7kg)なので、実験・設置場所を選びません。 - 4)照射範囲の選択が自由。最大照射エリアはArFエキシマレーザの10倍
ランプとランプハウスの組み合わせ選択により、さまざまなサイズ(最大100mm×100mm)の照射エリアに対応できます。
[左]ArFエキシマランプ [右]ArFエキシマランプを搭載した照射ユニット
2.主な用途
ArFレジストの感光、キュアリング等の評価、ArFリソグラフィに関わるレンズなどの硝材等の耐久性試験・評価、マスクの評価、レジストの硬化、Low-K膜の硬化など
3.販売について
1)販売開始時期 | 2009年4月上旬 |
---|---|
2)販売目標 | 初年度:10台、以後、年間約50台 |
3)予定販売価格 | 500万円(税別) ※ランプハウス、電源、組み込みランプ含む |
4)販売対象 | 半導体デバイスメーカー、マスクメーカー、レジストなどの材料メーカー、 検査・レーザ装置製造メーカー、大学などの研究機関、他 |
172nmエキシマランプの詳細はコチラ