光洗浄

VUV/O3cleaning、 UV/O3cleaning ひかりせんじょう

解説

光洗浄とは、ドライ洗浄法の一つで、波長200nm以下の紫外線(Ultra Violet: UV)、遠紫外線、真空紫外線(Vacuum Ultra Violet: VUV))を用いて、ガラスやウェハなどの表面に付着した有機物(汚染物質)を除去(気化)すること。

紫外線が有機化合物分子に作用し、励起した分子の化学的結合が切断、分解することは古くから知られている。光洗浄法は、これに加え、紫外線放射によって同時に発生するオゾン、酸素ラジカル、ヒドロキシラジカルの強力な酸化作用を利用して、有機化合物を一気に炭酸ガス・水などに分解・変質し、気化する。
光源としては、低圧水銀ランプ(低圧UVランプ)エキシマランプなどがあるが、半導体や液晶基板の製造工程では、主に、主波長172nmのXeエキシマランプが用いられる。

<光洗浄(VUV/O3洗浄、UV/O3洗浄)の基本原理>
①酸素を含む雰囲気ガス中にUVを照射し、活性種(O3や原子状酸素など)を生成させる。
②有機化合物(有機物汚染)において、UVによる結合の切断や、活性種による酸化が生じる。
③これによって、有機化合物は単純な分子(CO2、H2O、O2など)に分解され、ワーク表面から気化し、除去(洗浄)される。

(注)無機物汚染に対する光洗浄の事例として、金属汚染に対し、金属と反応するハロゲンガスを用いる方法も提案されているが、あまり一般的ではない。

(1)UVとエネルギー
紫外線(UV)は電波や可視光と同じく電磁波の一種であり、そのフォトンエネルギーEは次式で与えられる。
E=hc/λ
hはプランク定数(6.626×10-34J・s)、cは光速(2.998×108m/s)、λはUVの波長(10-9m)

この式で、フォトンエネルギーは波長に反比例することから、波長が短いほどエネルギーが高いことが分かる。例えば、波長172nmの真空紫外線(VUV)をこの式に当てはめると、フォトン1個当りのエネルギーは1.15×10-18J(7.22eV)で、モル(6.02×1023個/mol;アボガドロ数)当りでは167kcal/mol(698kJ/mol;1cal=4.19J)である。
 

(2)各種ラジカルと酸化能力
酸素を含んだ雰囲気ガスに真空紫外線(VUV)を照射することで、さまざまな活性種が生成されるが、生成効率や寿命の違いなどから、それぞれの生成量に違いが見られる。主に生成される活性種は酸素原子3個からなるオゾンであるが、これ以外にも、さらに反応性に富むと言われている原子状酸素(O(1D),O(3P))などのラジカルが生成される。これらは寿命が大変短い代わりに反応性が高いため、洗浄に大きな役割を果たしていると考えられている。