USHIO

光技術情報誌「ライトエッジ」No.2/特集 液晶バックライト光源(1995年春発行)

テレビジョン学会誌 Vol.48, No.9, P.1110~1113

(1994年)

3-3 直視型,投射型用光源とLCDの色再現
Back-Lights for Direct Viewing LCDs, Projection LCDs and Color Reproduction of LCDs

*ウシオ電機株式会社 ランプ開発部 蕪木清幸*,田川幸治*
Kiyoyuki Kabuki and Yukiharu Tagawa(Ushio Inc., Himeji)

1.まえがき

近年,液晶ディスプレイ(LCD)は,デバイスの改良により解像度,応答速度,コントラストなどの表示性能が急速に進歩して,カラーテレビに採用されるようになってきた.CRTなみの明るさと色再現を実現するために,非発光体であるLCDの表示に必要なバックライトに対して,より高い性能が求められている1)

ここでは,LCDの直視型および投射型用バックライトとして使用されている各種ランプの特徴と,一部の光学系を含めた色再現について述べる.

2.各種ランプの特徴と光学系

LCDは,小画面の直視型と大画面の投射型に分けられる.直視型用バックライトでは,コンパクトで消費電力が小さい小型蛍光ランプ,投射型では,光利用を効率良くするために発光面積の小さいショートアークメタルハライドランプ,ハロゲンランプ,およびショートアークキセノンランプが用いられている.

2.1 各種ランプの特徴

(1)小型蛍光ランプ

LCDの直視型用バックライトに使用されている小型蛍光ランプは,バルブ内面に希土類3波長蛍光体が塗布されている.蛍光体は,水銀の254nmの紫外線を可視光に変換し,水銀の可視光の輝度スペクトル(特に436nm)の重ね合わせで,色再現に適した効率の高い発光スペクトルが得られる.図1に代表的な蛍光ランプの発光スペクトルを示した.希土類3波長蛍光体は,赤(Y2O3:Eu),緑(LaPO4:Tb,Ce orMgAl11O19:Ce,Tb),青(SrCaBa)5(PO4)3Cl:Eu or(BaMg2Al16O27:Eu)の各波長域にピークを有している2)

ランプは,電極の種類により熱陰極型と冷陰極型に分類される.形状としては,いずれも直管の他にU型,W型およびL型があり,バルブ径は2~10mmである.

(2)ショートアークメタルハライドランプ

メタルハライドランプは,水銀とハロゲン化金属を発光物質としている.金属の原子および分子発光であるため,封入する金属によりさまざまな発光スペクトルが得られ,色温度4000~9000Kの範囲で演色性に優れたものを作ることが可能である.また,ショートアークメタルハライドランプは,光学的に有利な点光源としての特性も兼ね備えており,LCDの投射型用バックライトの主流となっている.

図2に示されるメタルハライドランプの発光スペクトルは,LCDプロジェクタのバックライトとして使用されている代表的なDy-Nd-Cs系ランプの例である.連続スペクトル分布を有し,色温度が7500K,発光効率が75lm/Wである.

現在は,赤の波長域の発光を増やし全体的な色バランスが良くなるように,各種金属(Li,Sn等)の採用と,金属蒸気圧を上げるための改良がなされている.

(3)ハロゲンランプ

ハロゲンランプの発光スペクトルはプランクの放射則で決まり,フィラメントの温度と寿命とはトレードオフの関係にある.図2には,3000Kのハロゲンランプの発光スペクトルが示されている.500nm以下の発光が少ないので青の色再現は狭くなるが,コンパクトで安価であるので,ポータブルタイプの小型の単板式LCDプロジェクタに採用されている.また,発光効率においては,従来20~25lm/Wであったが,発光管に赤外線反射膜を付けたり,熱伝導率の小さいキセノンガスを封入することで,35lm/Wまで改善が可能である.

(4)ショートアークキセノンランプ

キセノンランプは,キセノンガス中の放電による発光を利用しており,太陽光に近い連続スペクトル分布を有している.また,ショートアークキセノンランプは,現存するランプの中で最も点光源に近く,光学的な面においては非常に優れたランプである.従来から,映写機やスライドプロジェクタの光源として使われている.

2.2 LCDの直視型,投射型の光学系

(1)直視型の光学系

近年,パソコン,ビデオカメラ等では,エッジライト方式(なかでも導光板方式)が主で,他の分野もこれに同調しつつある.一部の用途で直下型のバックライトが用いられており,この場合,多くはU型やW型等の異形ランプである.LCDバックライトとして蛍光ランプを使用する場合,光学系は一般に図3に示す導光板方式が用いられる.導光板方式は,蛍光ランプからは光を反射ミラーによって透明のアクリル板に入射させ,アクリル板中での反射を制御して導光板前面に出射させる方式である.導光板方式では,ユニットの出射面にプリズムシートを入れ光の指向性の制御を行うことで,見かけ上の導光板ユニットの光の利用率は100%程度にまできている.

(2)投射型の光学系

投射型カラーLCDでは,図4に示すように単板式と3板式の2方式がある.いずれもランプからの光は,ミラーまたはレンズにより効率良くLCDパネル面に集められ,投射レンズによりスクリーン上にその像が投影される.

3.CRTと直視型,投射型LCDの色再現

3.1 CRTの色再現

受像3原色の色度と白色の色度は,各方式でそれぞれ表1のように定められている.ただし,各社でCRT用蛍光体の特性にばらつきがあり,この規格を完全に満たした製品はない.色度再現範囲(色域)は,特に緑の領域で各方式で定まるものより狭いのが実状である.

表1 カラーテレビの方式と3原色および基準白色の色度座標

3.2 直視型の色再現

ランプから出射した光は,導光板を通じLCDパネル,カラーフィルタ,直線偏光フィルタ等を透過して人間の目に入る.以上のプロセスを経るため,色域は各材料の分光透過率の影響を受けるが,主としてランプの発光スペクトルとカラーフィルタの赤,緑,青各色の透過スペクトルの積で決まる.

一般に蛍光ランプの発光スペクトルは,カラーフィルタと導光板のアクリルなどにおける吸収により青の波長域で大きく減衰し,利用率が悪くなる.このため,カラーLCDに使用される蛍光ランプの発光スペクトルは,蛍光体の配合比により,青の波長域の強度をあらかじめ上げておくことが必要である.実際,色温度に直すと10000K付近で設計されることが多い.また,2W以下の小消費電力で,輝度の高いランプが要求されているので,より発行率の良いランプでカラーフィルタとのマッチングがはかられる.

図6の色再現は,図5のフィルタの分光透過率と図1の発光スペクトルを掛け合わせた計算値,およびRGB単独の蛍光体で作られたランプの実測値例である.

3.3 投射型の色再現

図4に示すように,単板式投射型と3板式投射型では,色分解の方法が異なる.単板式投射型では,直視型と同じように液晶パネルのカラーフィルタで行われ,3板式投射型では,ダイクロイックミラー(DM)で行われる.カラーフィルタの分光透過特性は,ある程度限定されるが,TiO2とSiO2の多層膜から成るDMは,分光透過(反射)特性を比較的自由に制御することができる.したがって3板式投射型では,ランプとDMの分光特性のマッチング次第では,明るさの犠牲を少なくしてNTSC方式よりも広い色域の実現が可能である.

バックライトがハロゲンランプやキセノンランプである場合は,発光スペクトルが決まっているので,使用するカラーフィルタまたはDMの分光特性のみで色域が決定される.また,メタルハライドランプにおいては,さまざまな発光スペクトルを得ることが可能ではあるが,現在のところ実用化されている系は限られている.したがって,同様に色分解フィルタの特性で色域が決まる.

図7に示した色域は,図5のカラーフィルタの分光透過率と図2の各種ランプの発光スペクトルからの単板式を想定した計算例である.ハロゲンランプにおいては,青の領域の発光スペクトルが小さいので効率の良い出力を得るために,緑に近い波長域まで透過する青のカラーフィルタを用いる必要がある.したがって実用上は,青の色域がかなり狭くなる.図8には,メタルハライドランプが使用されている3板式LCDプロジェクタの実測例を示した.この例では,設定色温度でNTSC方式に合った色再現を可能にするために,DMと液晶の制御で緑の出力を抑え,RGBの出力バランスがとられている.

4.むすび

LCDの直視型においてバックライトに要求される性能は,高輝度,省電力,省スペースおよび広い色再現である.小型蛍光ランプは発光効率が60lm/W(熱陰極ランプ)程度まできており,管径も電極で制限されるφ2程度でまで可能である.小型蛍光ランプ以外で将来考えられるバックライトは,平面発光タイプのELや平面型蛍光ランプである.しかし,現行品では発光効率が不足しているので,新たなブレークスルーが必要である.小型蛍光ランプの発光は,図1に示すように輝線の集合に近いが,色再現の観点からは,スペクトル分布を再検討する余地ありと思われる.

投射型においては,ハロゲンランプとキセノンランプでは発光スペクトル分布改善の余地がない,メタルハライドランプでは,封入物質の選択で近い将来,より広い色域が実現できるランプが開発されると予想される.

また3節で述べたように,LCDの直視型,投射型にかかわらず,色再現は色分離フィルタの分光透過とランプの発光スペクトルに大きく依存しているので,お互いのマッチングが必要である.さらに,設定白色の色温度に合ったRGB出力の理想的な3波長型光源でない限り,色再現と明るさとはトレードオフの関係にあり,どちらを優先させるかを選択し,バランスをとることが必要である.

(1994年4月27日受付)

蕪木 清幸(かぶき きよゆき)
昭和57年,日本大学工学部機械学士課程卒業.同年,ウシオ電機(株)に入社.以降,各種放電ランプの開発に従事.現在,ショートアークメタルハライドランプの開発を担当.

田川 幸治(たがわ ゆきはる)
昭和60年,広島大学大学院理学研究科博士課程前期修了.同年,ウシオ電機(株)に入社.以降,各種放電ランプの開発に従事.現在,小型蛍光ランプ(直管タイプ)の開発を担当.

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