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光技術情報誌「ライトエッジ」No.2/特集 液晶バックライト光源(1995年春発行)

平成5年度照明学会全国大会予稿集 P.24

(1993年)

24 短アークメタルハライドランプの直流点灯と寿命特性
Lumen maintenance improvement of the short arc metal halide lamp by direct current operation

東 忠利 有本智良 富永健二(ウシオ電機抹式会社)
Tadatoshi Higashi,Tomoyoshi Arimoto and Kenji Tominaga

1.はしがき

高輝度で高演色性が得られる短アーク形メタルハライドランプは、液晶投射形TVやOHPなどの光学機器の光源として近年盛んに利用されている。光学機器用のランプでは高演色性の要請からDyなどの希土類ハロゲン化物が封入され、高輝度の必要性から石英ガラスの使用限界に近い高管壁負荷で点灯されている。また点灯電源は光の脈動を避け、かつ音響的な共鳴現象を避けるため周波数250-500Hz程度の矩形波の交流で点灯されている。この種のランプでは希土類元素が石英ガラスを侵食して早期にランプ内面に白濁を発生し、この白濁が光学機器への有効光束を減少させ、寿命を決定する要因になっている。

報告者は、この白濁を抑制するための手段として、直流点灯によるカタホリシス現象を利用することを考え、実験した結果、著しい白濁抑制効果が得られたので報告する。

2.交流点灯時の白濁発生状況

30W/cm2以上の高管壁負荷の希土類ハロゲン化物入りランプをアーク軸を水平にして点灯すると、まず石英ガラスの上側内面管壁に白濁が発生し、点灯時間とともに白濁面積が拡大する。この白濁物質は既に報告例があるように(1)シリカ結晶であり(クリストバライト)、またこの現象はSn,Tl,In,Csなどのハロゲン化物では起きず、希土類を封入したときに発生するため希土類原子の還元作用に基ずく触媒作用と推定される。

3.直流点灯による白濁の抑制

この白濁の抑制方法として結合力の強い臭化物の封入などが提案されているが、矩形波点灯と良好な発光特性を望む限り必ずしも十分な効果が得られていない。報告者らは新しい白濁抑制方法として直流点灯によるカタホリシス現象の活用を試みた結果、白濁の抑制に効果的な手段であることを確認した。

実験:内径9mm、アーク長5mm、内容積約0.4ccのランプにDy,Sn,In,Csなどのハロゲン化物を適量封入した150Wランプを回転放物面鏡に取り付け1000時間の点灯試験をおこなった。結果は少なくとも上側管壁の白濁はまったく発生せず、下側管壁に若干の曇りが認められただけであり、スクリーン光束の推持率も1000時間で75%と良好であった。

図1は試作ランプの直流点灯時の分光分布(全光)であり、図2(A),(B)はアーク軸上の陰極から1/4,3/4の位置における発光の分光分布である。

250Wランプ(内径10.5cm,アーク長6mm)でも同様に白濁防止に著しい効果があることを確認している。

4.結論

水平点灯の高負荷短アーク形メタルハライドランプの寿命特性で最も問題になっている白濁防止に直流点灯が非常に有望な手段であることを確認した。

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