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光技術情報誌「ライトエッジ」No.2/特集 液晶バックライト光源(1995年春発行)

平成7年度照明学会全国大会予稿集 P.306~307

(1995年)

「液晶ディスプレイ用バックライトの技術課題」
S-6 投写液晶形ディスプレイ用バックライト
Trend of the back-lights for the LCD projector

東 忠利(ウシオ電機抹式会社)
Tadatoshi Higashi

1.はしがき

投写形液晶ディスプレイ用の光源と光源光学系の必要条件は

  • ①光利用率の向上のために点光源に近い高輝度光源であること、
  • ②赤、緑、青の3成分を適当な強度比で発光していること、
  • ③適当な寿命時間をもっていること、
  • ④光源光学系は光の平行度良く、スペクトル的および強度的に一様な光を液晶パネル上に照射できること

などであろう。

現在はこれらの条件を比較的満たしている光源として

  • (a)一般的には希土類のハロゲン化物を封入したショートアークメタルハライドランプが多く用いられているが、
  • (b)特に高輝度で大出力を必要とする場合はショートアーク形キセノンランプが、
  • (c)小出力で安価な光源としてハロゲンランプ、などが使用されている。光源光学系としては
  • (d)一般には回転放物面鏡が用いられているが、小さい単板液晶パネルの場合は回転楕円鏡と凹レンズの組み合せも使用される。

2.光源系への要望事項

(1)寿命特性:

これらの光源は発光長がほぼ5mm以下のランプで寿命も500-2000時間であり、フロントタイプのプロジェクターに対してほぼ十分な寿命をもっている。しかしリアタイプのプロジェクター用としては2000時間の寿命では短い感じが強く、5000時間以上の長寿命光源が要望されている。

(2)高輝度性:

反射形液晶のように特に高輝度が必要な場合はショートアーク形キセノンランプが使用されているわけであるが、キセノンランプは効率が低いことと、ランプ電圧が低いため、電流値が大きくなり、点灯回路(安定器)が大型、高価になる欠点があるため、メタルハライドランプでアーク長3mm以下、さらには2mm以下へのショートアーク化への要望が高まっている。

(3)色バランス:

日本および米国向けの9300Kと欧州向けの6500Kの白色色温度とを同じ機種で実現するためには光源は7500K位で色度は黒体放射軌跡よりもピンク側にずれているくらいが都合がよいが、メタルハライドランプでは特にアーク長を短くすると水銀線が強くなり、緑側にずれる傾向が強くなる。

(4)色むら、照度むら:

データプロジェクターなど静止画系受像器の場合は色むら、照度むらへの要求が厳しくなる傾向があるが、これは集光効率の向上とは相反関係にあり、従来のフロストランプの使用以外に、もっと効果的な手段が望まれる。

3.光源の改良

(1)長寿命化:

希土類ハロゲン化物入りメタルハライドランプを250-500Hz程度の矩形波で点灯するランプでは、点灯中に石英管に白濁が発生し、ランプの全光束はあまり低下しなくても、集光効率が低下することによりスクリーン光束が低下し、スクリーン光束の低下が寿命を決める主原因になっている。アーク長より短くするに従い、白濁の発生も早まる一方、同じ白濁が発生したときの光束の低下率が大きくなるため、寿命が急速に短くなる傾向がある。

希土類ハロゲン化物入りランプの寿命を改良する方法として封入物組成の選択や管壁冷却法などが行われているが(1)効果は比較的小さい。白濁の発生を効果的に抑えるには2つの方法が考えられる。一つは矩形波による点灯でなく直流で点灯し、発光物質の偏りにより白濁を抑制する方法であり(2)(3)、もう一つは白濁を発生しない発光物質を使う方法である。

  • (a)高管壁負荷の希土類ハロゲン化物入りメタルハライドランプにおける石英管の白濁の発生は希土類元素原子の還元作用に基ずくものと推定されるため(2)希土類元素原子が管壁に付着するのを抑制する手段として、直流点灯を利用するものである。当面はスクリーン光束の低下が寿命原因とならないレベルまで白濁を抑制することが可能になった。アーク長3mmの150Wランプ、250Wランプのスクリーン光束の維持特性を図1に示す(4)。直流点灯方式は初期効率が低いことがデメリットであるが点灯回路が安価になるメリットがある。

  • (b)白濁を起こさない発光物質を利用することによりスクリーン光束の低下が寿命原因とならない光源を作ることも可能と考えられる。

(2)高輝度化:

集光効率の向上、マイクロレンズ付き液晶、反射形液晶への応用やDMDプロジェクターへの応用など、ますます単アーク長の光源が要求されるようになってきた。集光効率の向上のためにはアーク長3mm以下、新光学系への適用のためには2.5mm以下、反射形液晶への適用のためには2mm以下のアーク長が要請される。

これらの要請にも最近の技術ならば応えることができるようになったと思われる。

(3)色バランス:

アーク長が短くなると水銀の発光線が強くなり発光色が緑方向にずれるが、適当な発光物質がなく、完全にこれを補正することは困難と思われる。

(4)色むら、照度むら:

アーク長を短くして集光効率を上げると電極スポットが画面上に出るようになり、照度均一性が悪くなり、色むらなども目立つようになる。今まではこの対策としてランプにフロストを施していたが、それでは短アーク長にした効果が減少するので、インテグレータを使う方向に進むと思われる(5)

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