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光技術情報誌「ライトエッジ」No.8(1996年9月発行)

(July 09,1996)

シリカガラス製Xeランプバルブに発生する真空紫外光誘起歪み

ウシオ電機株式会社 技術研究所 応用開発部
森本幸裕

緒言:

シリカガラスが電離放射線または荷電粒子に曝された場合、micro-and/or macroscopicなど様々な構造変化が起きる。microscopicには照射誘起の点欠陥の生成であり、macroscopicにはmicroな構造変化に伴われるシリカガラスの圧縮、膨張、その結果としてひび割れなどがある。

古来、上記現象の多くはシリカガラスのnegativeな特性として捉えられ、研究の対象とされてきた。しかし、最近ではイオン注入技術による表面改質、導波路の形成や紫外線照射によるオプティカルファイバーグレーティングの形成など、照射効果をpositiveなものと捉えウシオ電機株式会社では、現在のところ、シリカガラスの照射効果はnegaiveなものと捉えられており、発光管構成材料であるシリカガラスの照射損傷でランプの機能を損なわないようにとの観点から研究を行っていた。本論文はその研究成果の一部であり、真空紫外線(VUV)照射によって誘起される歪みの発生原因の一つを明らかにしたものである。読者の皆様の参考になれば幸いであり、また願わくば、ご意見を伺いたい。

要旨:

VUV光放射を受けることによって、キセノンランプに入れ仕込んだ2種類のシリカガラス(GE214,Suprasil P20)試料に歪みが発生した。応力から計算される歪みエネルギーは試料への入射光の積算エネルギーに比例した。照射試料の表面から200μm深さまでの密度が照射前に比べて約1%増加した。この綿密化が試料に応力を引き起こしたわけである。SiSi結合、E'中心、非架橋酸素空孔中心、SiOH、SiHなどの点欠陥が観察された。これら微視的構造変化のほとんどは綿密化した部分に起こっており、この部分ではまた、160nmから165nmのVUV光が吸収される。この層のSiSi結合の数は他の欠陥の数よりも多く、応力の増加とSiSi結合の数の間には直線関係が認められた。著者は、応力発生の起源の1つはSiSi結合の生成であると推察する。一方で、試料中のSiOHとSiHは応力を減少された。SiSi結合生成による応力発生と、SiOHとSiHによる応力減衰挙動は2種類の試料について、実験誤差以内で一致した。

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