USHIO

光技術情報誌「ライトエッジ」No.10(1997年6月)

第1章 はじめに

1. はじめに

光の利用分野には、照明としての利用、光化学反応の利用、加熱作用の利用、情報の伝達、処理等の分野がある。今回は照明としての利用のうち、情報機器の読み取り用の照明光源について特集する。財団法人光産業技術振興協会の調査によれば、日本に於ける光産業の生産額は1986年に1兆円に達し、その後も順調に伸び、1995年には前年比6.8%増の4兆3380億円に達し、1995年の電子機器及び電子部品の生産額合計21兆7400億円に対して光産業規模は日本の電子産業の約20%を占めるまでに成長した。これは半導体素子及び集積回路生産額の4兆7880億円、コンピュータ及び周辺装置生産額4兆7400億円に匹敵する規模である。図1-1に示すように分野別に見ると、情報分野が84.3%(3兆6560億円)、通信分野が13.6%(5910 億円)、その他エネルギー分野が2.1%(890億円)となっている。

製品別に見ると全体の生産額の約70%の3兆910億円が機器、装置であり、約30%が光部品である。機器、装置のうち、約50%(1兆6200億円)が光ディスク、約30%(8980億円)が光入出力装置、約10%(3310億円)が光伝送機器、装置である。

光部品のうち約50%(6270億円)がディスプレイ素子、約15%(1910億円)が発光素子、約10%(1270億円)が受光素子である。光産業の伸び率は1995年度の前年比6.8%であり電子工業の伸び率(年平均0.1%)を大きく上回り、光産業は今後も情報化、マルチメディア社会を支える基幹産業として成長していくと考えられ、図1-2に示すように2000年には5兆5 千億円~7兆1千億円になるとの試算もある1)

図1-1 光産業分野別生産額(1995年度)

図1-2 光産業全体生産額(2000年度生産額の予算)

そして世は、マルチメディアの話題で賑わっており、インターネット、イントラネットと情報関連の話題が多い。従来からのメタリック系の伝送路で音声メディアに加え非音声メディアであるデータ通信やファクシミリ通信さらには画像,動画通信が行われてきたが、更に光ファイバーが基幹以外にも使われ始めその広帯域、小減衰という特性を生かし大量の情報を扱える環境が整った。

加えて半導体やデジタル信号処理技術、コンピュータの進化は著しい。その結果、音声、文字、記号、静止画、動画等を一元的に扱うマルチメディアに対する期待が高まっている。情報メディアには前記のように各種あるが表現のしやすさ、情報の量、理解のしやすさはそれぞれ特徴があり効率的に伝達するために、場面により使い分けたり組み合わせたりして用いれば、より正確、よりスピーディ、リアルに伝達できる。これらでは各種の情報をコンピュータや、デジタル系に取り込み処理や伝達がされている。これらに代表されるように情報をデジタル化し処理伝達することが主流になろうとしている。これらを支える情報機器には情報を読み取り、情報を処理し、記録、伝達、表示(ディスプレイ又はプリントアウト)する機能が必要とされる。これらの機能を達成するために、光が使われ、各種の光源が使われており、光源の能力を最適に引き出すために、駆動回路が使われている。この特集号ではこれらの情報機器のうち読み取り機能を持つ機器とその光源、光源の駆動方法についてささやかな情報を提供させていただきいささかでもお役にたてれば幸いと考える。

2章ではどのような情報機器にどのような光源が使われ、それらの光源の役割は何かについて概説する。

3章では読み取り機能を持つ機器のうち、スキャナ、複写機、ファクシミリについて解説し、デジタル化に伴う、CCDと光源との関係について解説する。

4章においては読み取り機器に使われる光源のうち、冷陰極蛍光ランプ、熱陰極蛍光ランプ、セミホット蛍光ランプ、内部電極蛍光ランプ、外部電極蛍光ランプ、ハロゲンランプ、LEDおよびLD、EL、更に情報機器用光源ユニットの構造、特性、技術動向、用途例等について解説する。

5章では各種ランプの駆動回路の現状と動向について解説する。

(鈴木義一)

Copyright © USHIO INC. All Rights Reserved.