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光技術情報誌「ライトエッジ」No.11(1997年10月発行)

留学レポート 4

ウィスコンシン大学に学んで

ウシオ電機株式会社 E104 プロジェクト
酒井基裕

当社では「会社の発展と一人ひとりの人生の充実をめざす」という創業以来の企業理念に基づき、能力開発の機会提供の一環として海外留学制度が導入されています。私はこの修士課程に留学して参りました。ウィスコンシン州はミシガン湖の西、内陸側に位置する州で、州都マディソンはシカゴから北へ車で3時間、緯度としてはちょうど札幌と同じ位のところにあります。大学はマディソンの中心近く、湖に囲まれた非常に環境の良い所に立地しています。夏には湖に浮かぶヨットを眺めながらテラスで食事をしているとリスがエサをもらいにやってきます。しかし、冬の寒さは折り紙つきで、停留所バスを10分も待っていると頬はピリピリ、体の芯から冷えてしまいます。(そんな中で一度私は30分もバスを待ってしまいました)

さて、私の師事したLawler 教授は原子物理学を工学的な応用へ橋渡しをすることにご尽力されており、ランププラズマのモデリング、計測、モデルに必要な基礎データの収集、ダイヤモンド薄膜作製のためのプラズマプロセスの研究で業績があります。最近では活動の範囲を広げられ、宇宙物理学で必要な基礎データの収集も重要な研究課題の一部となっています。そして、私の留学1年目の研究課題は、ちょうどその宇宙物理学で必要とされている「Fell(Fe+)の振動振動子強度測定」と決まりました。これはハッブル宇宙望遠鏡の打ち上げで真空紫外領域の精度の良いデータが求められており、NASAからの依頼で研究を行ったものです。研究成果はアメリカ物理学会(DAMPO,GEC など)で発表し、最終的にはAstronmy & Astrophysics Supplement Series 誌に投稿いたしました。DAMOPでの発表の詳細については本誌No.8 (96年9月号)をご参照ください。

研究が一段落ついたころ、2研究課題を何にするか教授と話す機会がありました。そのまま別の元素(具体的にはCo)の計測を続けてもよかったのですが、折角Lawler 先生の元に来ているのだからランププラズマの計測をさせてもらいたいという私の希望が受け入れられ、2年目はプラズマ計測をテーマとするこに決まりました。測定法については色々と論議を尽くしましたが、時間の制約等もあり結局X線による水銀密度の測定を行うことになりました。X線源にはMamagraphy(乳癌早期発見用レントゲン)を使用しました。これはちょうど隣のビルにあるMedical Science GroupのX線用Imaging plateを使用していただきました。この場を借りて改めてお礼申し上げます。測定法に色々工夫を重ね、ようやくランプ内の水銀が観測され始めた頃、2年間の留学生活の終わりが訪れました。言葉や生活にもようやく慣れ、研究もちょうどこれからという時でしたが、いつまでも学生に戻っているわけにはいきません。研究はPost Doc.の人に引き継がれ、10月に当地マディソンで開催されGECにて発表される予定です。

学ぶべきことをまだまだ沢山残して心残りの面もありますが、非常に充実した2年間を過ごさせていただきました。後輩諸君もきっと何かを発見できることと思います。忙しい仕事に何とか区切りをつけて、折角素晴しい制度があるのですから、どんどん海外に出て、知識のみならず、文化・習慣を吸収してほしいと思います。

研究室の仲間と

凍った湖の上にて

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