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光技術情報誌「ライトエッジ」No.13(1998年7月発行)

レーザー学会学術講演会第18回年次大会

(1998年1月)

レーザー学会学術講演会第18回年次大会
22p IV5

無声放電励起真空紫外希ガスエキシマランプによる
有機物質の超微皿加工(2)
Nano-scale photo-processing of organic materials using rare-gas excimer VUVlamps

宮崎大学・工 徳永 晋次、吉原 真哉、河中 準二、横谷 篤至、黒澤 宏、窪寺 昌一、佐々木 亘
Miyazaki Univ. S.Tokunaga,S.Yoshihara,J.Kawanaka,A.Yokotani,K.Kurosawa,S.Kubodera,and W.Sasaki

1. はじめに

無声放電励起真空紫外希ガスエキシマランプは、高ガス圧中においても安定な放電を保つことができ、従来の水銀ランプより高出力・短波長の新しい真空紫外光源であることから、様々なプロセシング、科学反応制御などの幅広い応用力が期待されている。

真空紫外光による物質プロセスは、一光子あたりのエネルギーが7~10eV と有機物質を構成する分子の解離エネルギーよりも非常に高いことから、熱支援を伴わない光化学反応により加工が進む低温無損傷加工が可能となる。前回、アクリル樹脂に異なる発光波長(Ar2 *126nm,Kr2 *147nm,Xe2 *172nm)の光を室温において照射した結果、いずれの波長においても平均加工速度が毎分数nm 程度の超微細加工が可能であることを報告した。

真空紫外ランプの室温照射による加工において、光解離された分子が物質から脱離する機構を調べることは興味深く、今回アクリル樹脂表面における吸収スペクトル強度が、真空紫外光照射で変化することを確認したので報告する。

2. 実験方法

図1 に無声放電励起希ガスエキシマランプの照射実験装置を示す。

試料となるアクリル樹脂は、一部金属で被覆することで照射部と未照射部との区別をし、照射チャンバー内(真空又は、Ar)に設置した。

放電部からの試料表面までの照射距離を変え、Ar2*光を異なる照射強度で、300 分照射した。真空紫外光を照射した試料は、表面観測をAFM にて、表面分析をFT-IR にて行った。

3.実験結果

図2 にAr2*光照射後、均一に加工されたアクリル樹脂をFT-IR により分析した赤外吸収スペクトル強度を示す。照射部と未照射部とでは、吸収スペクトル強度に変化が見られ、特に構成元素の中で最も結合エネルギーの高いC=O(7.6eV)の赤外吸収度が照射部には、増加していることがわかった。これは、C=Oが他の分子よりも脱離しにくいため、表面における存在比が高くなったことを意味しているものと考えられる。また、照射前後の表面状態の変化、照射強 度の違いによる表面分析の変化についても報告する

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