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光技術情報誌「ライトエッジ」No.14

平成10年度照明学会・全国大会(1998年7月29日~31日)
平成10 年度照明学会第31 回全国大会

(1998年10月)

37. 維持率改善型キセノン水銀ランプ

大西安夫 富永健二 戸田光 若畑康彦 杉岡儀陸 中野真知子
(ウシオ電機株式会社)

1.はじめに

キセノン水銀ランプと集光系を組み合わせた装置は、紫外線硬化や半導体の周辺露光などに広く使用されている。特に集光ミラーの焦点とランプ陰極輝点の位置を高精度で固定した装置は、近年の主流である。この装置の光出力の劣化の原因は、①ランプ陰極の溶融損耗により、陰極輝点の位置が集光ミラーの焦点からずれること、②ランプ陰極損耗による陰極輝点の広がりが陰極輝点輝度を低下させること、③陰極溶融損耗物が蒸発して発光管内面に付着し、紫外線透過率を下げることである。従って、ThO2-W 陰極よりも動作温度が約1000°C低いBaO 系-W 陰極1)にすること、及び長時間エミッタが安定して供給可能な構造にすることで上記① ② ③の問題を解決した。その結果2000 時間の連続使用で、装置の365nm 光出力の劣化がないキセノン水銀ランプを完成したので報告する。

2.測定方法

図1 に測定系を示す。集光ミラーと直径5mm の光ファイバを組み合わせた紫外線照射装置(ウシオ電機製スポットキュア)に、陰極を下にして垂直にとりつけた。光ファイバ出口の365、254nm の光出力を測定した。

3.ランプ構造

陰極の基体構造は穴加工されたW 棒の中でBa0 系-W が焼結された構造である(図2)。陰極輝点が広がらないようにするためと、陰極からのエミッタ蒸発を少なくするために陰極先端径とエミッタ供給路の径を同一にした。また消耗したエミッタを補給するために、エミッタ供給路よりもエミッタ濃度の高いプール部を設けた。また動作温度をさげるため、ThO2-W 陰極よりも陰極体積を大きくしている。

図3 に今回開発した250W キセノン水銀ランプの概略図を示す。

4.ランプ寿命特性

図4 に図1 の測定系においての365、254nm の光出力の維持率を示す。365nmでは2000 時間において維持率100±4%であった。254nm では2000 時間において維持率90±4%であった。

5.おわりに

今回開発したキセノン水銀ランプは、2000 時間連続使用で、装置出口におけ365nm 光出力がほとんど劣化しないものであり、さらに長寿命も期待できる。

参考資料

図5 紫外線照射装置の概要

図6 従来型ThO2-Wプール型BaO-W陰極の概略図

図7 ランプの概略図

図8 寿命テストと光出力評価

図9 キセノン水銀ランプの分光分布

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