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光技術情報誌「ライトエッジ」No.14

平成10年度照明学会・全国大会(1998年7月29日~31日)
平成10 年度照明学会第31 回全国大会

(1998年10月)

40. 光量が安定化されたエキシマ紫外線照射装置の開発

岡本昌士 朝比奈隆 菱沼宣是 松野博光
(ウシオ電機株式会社)

1.はじめに

これまで、誘電体バリア放電エキシマランプを含めた真空紫外光源には、一般の光源と同様に、点灯初期から温度的に安定するまでの期間において、またランプが新品の状態から寿命末期に至るまでの期間において、光量が変動するという特性があった。このたび、光量フィードバックにより、これらの変動を補正して安定化したエキシマ紫外線照射装置を開発したので、その概要を報告する。

2.構成

図1 に回路の構成を示す。有効発光長700mm のXe2*(波長172nm)エキシマランプ13 本を並列に接統し、定格総合ランプ投入電力を1.8kW とした。電流トランスCT により検出されるランプ電流を、インバータ制御回路F がフィードバック制御することにより、ランプ投入電力は精密に安定化される。光照射面の大きさは650×780mm である。今回は、光量センサP1 の検出信号に基づき、統合制御回路Mがインバータ制御回路に対して調光制御を行うことにより、紫外線光量を安定化した。調光制御は、ランプ投入電力をデューティサイクル比変調することにより行った。また、紫外線による光量センサの感度劣化による不正確を排除するために、シャッタS を備えた標準の光量センサP2 をさらに設け、これにより定期的、自動的に校正動作を行えるようにした。

3.結果

20 分間の連続点灯時の点灯初期からの紫外線光量変化を図2 に、また、60 秒点灯/60 秒消灯の周期における60 分間の点滅点灯時の紫外線光量変化を図3 に示す。点灯初期からの紫外線光量変動の幅は、連続点灯では2.5%、点滅点灯では2.6%であった。なお、図2、図3 において、点灯直後にスパイク状の光量ピークが見られるが、これは点灯を確実にするために、意図的に、点灯直後の短時間のみ100%の調光制御を行っていることによる。

図 3 . 点滅点灯時の紫外線光量変化

4.まとめ

光量フィードバックにより点灯初期から温度的に安定す るまでの期間において光量変動が少なく(図2、図3)、ま たシャッタ付き光量センサで校正することによりランプが新品の状態から寿命末期に至るまでの期間 においても光量変動が少ない、そしてデューティサイクル比変調により調光制御時の配光ムラの少な いエキシマ紫外線照射装置が実現できた。

Development of the stabilized excimer UV light source.
Shoji Okamoto, Takashi Asahina, Nobuyuki Hishinuma, Hiromitsu Matsuno

参考資料

【資料1】装置写真
・写真は弊社のエキシマ紫外線照射装置の一例で、液晶パネル基板のドライ洗浄などの用途に使用されている。

【資料2】装置外観
・今回報告をする内容は、図の照射装置を用いて実験したもの。
・ランプを13本実装しており、照射窓の大きさは、650×780mm。
・総合定格電力は、1.8kw。

【資料3】誘電体バリア放電ランプの構造
・次にランプについて簡単に説明。
・ランプは、誘電体バリア放電ランプ。
・石英ガラスの2重管構造になっている。
・内管の内側に金属電極、外管の外側に金網電極を配置し、両電極間に交流の高電圧を印加する。
・封入ガスは、キセノンで、波長172nmの真空紫外エキシマ光が、外管から放射される。

【資料4】従来
・ところで、従来のエキシマ紫外線照射装置には課題があった。
・点灯開始直後では光量が高く、その後は徐々に低下するという点、および、
・ランプが新品のときは光量が高く、その後は徐々に低下するという点である。

【資料5】課題
・この課題は、光量フィードバックにより連続的に調光し、安定化すれば解決できるが、その前に解決しておくべき困難な問題点があった。
・第1の問題点は、調光により点灯電力を下げたとき、照射面積の配光分布が不均一になり易いという点。
・第2の問題点は、光量検出のための光量センサが、紫外線により劣化するという点である。

【資料6】解決策
・我々はこれらの問題点の解決のために、次の方法を用いた。
・第1の問題点については、調光に際しては、デューテイサイクル比変調を用いることにより、照射面の配光分布の不均一を避けるという方法。
・第2の問題点については、光量フィードバックのための光量センサの他に、シャッタ付きの光量センサを設け、これにより前者の光量センサ、すなわち、光量フィードバックのための光量センサを校正するという方法である。
・以降、これらを具体的に説明。

【資料7】回路の構成
・図は、照射装置の電気回路の主要部を示す。
・インバータ、昇圧トランス、共振回路により交流の高電圧を発生し、ランプに印加。
・13本のランプは並列接続される。
・ランプの真空紫外光量は、光量センサ1で連続的にモニタリングし、光量フィードバックを回す。
・また、このセンサを校正するための光量センサ2を設け、これには感度劣化防止のためのシャッタを設けた。

【資料8】ランプ印加電圧波形
・まず、デューテイサイクル比変調について説明する。
・ランプ印加電圧は交流高電圧であるが、その包絡線を図示している。
・ランプに投入する平均電力が高い場合と、低い場合を模式的に示している。
・このように、点灯電力を下げるときに、ランプオンの期間を短くする方法を、ここでは、デューテイサイクル比変調と呼んでいる。
・ただし、ランプの立ち消えを防ぐため、この期間は、不完全オフにしている。
・なお、点灯開始直後は、全てのランプの点灯を確実にするため、短時間だけ、100%の変調を行っている。
・ランプオンの期間は、定格電力の点灯であるため、平均電力を下げても照射面の配光分布の不均一が生じにくくなる。

【資料9】調光にともなう…変調の有無の関係
・この効果の実測結果を示す。
・横軸は、調光したときの出力光量の強さ、縦軸は、不均一の出やすさを表す。
・単に電圧を下げて調光する場合には、出力光量を絞った場合に不均一が大きくなっている。
・これに対し、デューテイサイクル比変調を用いることにより、その不均一の増大を抑制することができた。

【資料10】調光制御のブロックダイアグラム
・次に、この変調と光量フィードバックとを、組合わせて実現する、装置構成につき説明する。
・図は、制御のブロックダイアグラムを示す。
・MPUは、デューテイサイクル比変調された電力目標信号を生成している。
・回路は、この信号と、実際のランプ電力信号との誤差が小さくなるように、アナログ的にフィードバック制御を行う。
・一方、ランプの真空紫外出力は、光量センサ1により検出され、MPUに取込まれる。
・MPUは、取込まれた光量データと、目標光量との誤差を調べ、その誤差が小さくなるように電力目標信号のデューテイサイクル比を変更、すなわち、ディジタル的なフィードバック制御を行う。
・結果として、ランプの真空紫外光量が安定化される。

【資料11】連続点灯時の真空紫外光量変化(安定化あり)
・実測結果を示す。
・グラフは、点灯開始後の20分間の光量変化を表したもので、光量フィードバック安定化を行うことによって、光量変動を2.5%に抑えることができた。

【資料12】点滅点灯時の真空紫外光量変化(安定化あり)
・グラフは、点灯1分間、消灯1分間の点滅点灯したときの、1時間の光量変化を表したもので、光量フィードバック安定化を行うことによって、光量変動を、2.6%に抑えることができた。
・なお、点灯開始直後のスパイク状のピークは、先に述べたように、短時間だけ、100%の変調を行っていることによる。

【資料13】光量センサ感度校正フロー
・次に、光量フィードバック用光量センサの感度を、シャッタ付きの光量センサにより校正する機能の実現につき説明する。
・図は、感度校正処理のフローを示す。
・ランプの点灯中に、光量センサ2を保護しているシャッタを開き、光量センサ1および2の検出信号を取込み、光量センサ1の感度補正係数を更新する。
・この処理は、光量フィードバック安定化と並行して、MPUが自動的に実行する。

【資料14】光量センサ1の校正動作
・グラフは、この校正動作に伴う出力光量の変化を実測したもの。
・横軸は、時間、縦軸は、出力光量。
・この期間は、光量フィードバックによって正常に安定化された点灯である。
・消灯期間中に、光量センサ1の受光面の一部を遮蔽して、模擬的に、センサの感度が劣化した状態を、故意に発生させた。
・そのため、次に点灯すると、光量フィードバックによって光量が大き目に出た。
・そこで、校正動作付きの点灯を起動すると、速やかに元の正常な光量に復帰した。
・すなわち、光量センサの感度変動が、補正されることが確認できた。
・なお、元の光量に復帰する際の繰返し再現性は、3%以内であった。

【資料15】まとめ

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