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光技術情報誌「ライトエッジ」No.14

平成10年度照明学会・全国大会(1998年7月29日~31日)
平成10 年度照明学会第31 回全国大会

(1998年10)

S5. 投射型液晶用光源・光学系

―技 術 動 向―
東 忠利(ウシオ電機株式会社)

1.はじめに

投射型液晶ディスプレイは教育用・娯楽用の映像機器としての用途のほか、最近はパソコン用データプロジェクタとしての需要が増えており、大形TV の一方式としても注目されている。液晶のような非発光形画像素子を利用した投射型表示機器では表示画像をスクリーンに投射するために別の高輝度光源が必要である。ハロゲンランプ、キセノンランプ、交流点灯形メタルハライドランプなどの光源は以前から使用されていたが、ほぼ過去3 年内に新しく製品化され、現在では主流となっている投射用光源に直流点灯形メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプ、反射器内蔵セラミック製キセノンランプがある。まだ研究下の光源として無電極HID ランプがある。ランプは放物面、楕円面な どの反射鏡と共に使用されるが、最近本格的に採用され始め、光利用率および照射品質の向上に顕著な寄与をしている光学素子にオプティカルインテグレータ、ps 偏光分離変換素子、プリズム光合成素子などがある。これら光源と光学系の概略を紹介する。

2.ハロゲンランプ

液晶プロジェクターには光学機器用ハロゲンランプと呼ばれる低電圧動作(12-24V)の小形(50-150W)ランプが使用されている。ハロゲンランプは安価であるが効率が低く、寿命が短い欠点がある。

3.メタルハライドランプ

高演色性と高輝度の要請から短アーク化した稀土類金属ハロゲン化物入りのランプが使用されている。当初は交流点灯形ランプであったが、1994 年に長寿命が得られる直流点灯形ランプが製品化され(1、2)、液晶プロジェクター用光源の主流となっている。直流点灯形ランプでは放電管内壁の白濁の発生が著しく抑制され、寿命が3-5 倍程度に長くなる(1、2)。直流点灯には点灯回路も小形・安価になる長所があるが、初期スクリーン光束は10-20%低い。

アーク長は当初の交流形では5-6mm であったが、光学系からの短アーク化要請により直流形150W ランプで1.5mm(3)、250-260W ランプで2.5mm 前後(4)が実用化されている。メタルハライドランプの寿命は設計方針によって変化する。データプロジェクター用ランプの寿命は2000 時間に設計されることが多いが、TV 用リアプロジェクターでは目標寿命5000 時間の設計となっている(5)

4.キセノンランプ

種々の定格の石英製キセノンランプがあるが、電力300W~1kW については前面透過窓をサファイヤとした反射鏡内蔵形セラミック製ランプがある。キセノンランプは反射形画像パネルによる大形プロジェクタに多用されている。ランプ寿命は1500 時間程度である。

5.超高圧水銀ランプ

超高圧水銀ランプの水銀蒸気圧を100 気圧以上に高めると連続スペクトル成分が増加し、高色温度の投写用光源としては使える赤色スペクトルが得られる。この原理の超高圧水銀ランプで、アーク長1.4mm 以下の100W(6)、120W ランプが実用化された。100W ランプでは5000 時間以上の長寿命が、120W ランプでも2000 時間以上の寿命が期待されている。

6.無電極HID ランプ

無電極HID ランプは数万時間の寿命が得られるが、投射用ランプは研究段階にある。無電極HID ランプの点灯にはMHz 域高周波誘導電界とGHz 域マイクロ波電磁界との二つの方法がある。投射用光源には反射鏡との相性が良いマイクロ波点灯が適していると思われる。

7.液晶照明用光学系

最近のプロジェクターでは光源からの光を液晶パネルに均一な照度分布で効率よく集光させるために(1)小形の結晶化ガラス製反射鏡が一部の機種に使用され始めたほか、(2)均一性と集光率を両立させるオプティカルインテグレータ(7、8)(3)光の有効利用を図るps 偏光分離変換素子(9)(4)集光率を高める光合成プリズム(10)などの3 光学素子が標準的に使用され始めた。

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