USHIO

光技術情報誌「ライトエッジ」No.16

■レーザー学会学術講演会/第19回年次大会 1999年(平成11年)1月28~29日
28aVII3

(1999年3月)

真空紫外エキシマランプを用いた
ポリマーのフォトエッチング

Photo-etching of polymers with VUV excimer lamps
[宮崎大学・工、ウシオ電機(株)*]柳田英明、河崎泰宏、前薗好成、野村涼、竹添法隆、横谷篤至、
黒澤宏、村野博光*、五十嵐龍志*
[Miyazaki Univ, USHIO INC.*]H.Yanagita, Y.Kawasaki, Y.Maezono, R.Nomura,
N.Takezoe, A.Yokotani, K.Kurosawa, H.Matsumoto*, and T.Igarashi*

1.はじめに

固体にレーザーを照射した場合、熱過程と非熱過程が混在するのが普通であり、二つの過程を区別することは難しい。また、吸収係数の大きな材料の場合では、熱作用が主過程となる場合が多い。ところで、真空紫外光を出す希ガスエキシマランプは、レーザーと異なりパワーは非常に低いものの準連続光が得られるので、材料のエッチングや加工、さらには改質などに利用できる手軽な光源である。このランプの照射では、試料の温度がほとんど上がらないので、熱作用のないプロセスが可能となる。今回は、PMMAにキセノン(172nm)とアルゴン(126nm)のエキシマランプ光を照射してエッチングを行った結果について報告する。

2.実験及び結果

真空チャンバー内に試料をおき、 1~10Torrのアルゴンガスないしは空気雰囲気内でエキシマランプを照射した。ランプ光の強度は、キセノンで50mW/cm2、アルゴンで5mW/cm2であった。 Figure. 1に、エキシマランプをPMMAに照射したときのエッチング速度の結果をまとめた。空気中でキセノンエキシマランプを照射した場合、酸素の光解離によって発生した活性酸素でエッチングが進み、その表面はかなり凹凸の激しい結果となった。一方、アルゴンガス中でのエッチングでは、ランプ強度に応じたエッチング速度が得られ、この場合はあきらかにフォトエネルギーによる結合切断が生じた結果のエッチングであり、その表面はスムースなものであった。照射光源の光強度が一桁違うのに、エッチング速度は5倍程度しか異ならない結果は、高エネルギーフォトンのほうが効率よく結合切断される結果であると考えられる。表面形状の時間変化などからエッチングプロセスについて考察する。

3.考察

どちらの光源とも表面の平滑化が時間とともに進んでいるように思われるが、雰囲気ガスの違いにより表面形態には違いがみられる。アルゴン雰囲気中でエッチングを行った場合は、量子的に光エネルギーでのエッチングが進み、空気雰囲気でのエッチングでは、ガスラジカルによるラジカルエッチングが進んだと考えられる。この結果から、ラジカルエッチングよりもフォトンによるエッチングのほうがその加工表面は滑らかになると言える。

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