光技術情報誌「ライトエッジ」No.21(2001年4月発行)
日本食品技術アカデミー第11回講座
(2000年12月)
閃光パルス殺菌
高見和朋
1. 光パルス殺菌の概要
基本システムは、次の通りで、電源、コンデンサ、照射部(ランプハウス)で構成される。基本構成は、カメラのストロボ装置と同様のシステムで、電源やランプを改良することで、殺菌に有効な紫外線を強力に出力出来るように対応している。装置の構成としては、これ以外にワークの搬送系や、装置全体の制御系が必要だが、弊社では、搬送系や装置全体の制御系は対応しておらず、殺菌ユニットを装置メーカーに販売するスタンスを取っている。
2. 光パルス殺菌の歴史
この技術は80 年に弊社にて発明された。その後、80 年代後半からアメリカのPurePulse 社が装置開発に着手し製品を発売した。更に、FDAの認可を取得し、一般に認知されるようになった。現在は、有力な新規の非加熱殺菌として、多用途で開発が進められている。現在、殺菌に用いられている光源には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンフラッシュランプの3タイプがある。これまでは、紫外線への変換効率が高く、寿命が長い低圧水銀ランプが大半だったが、最近は紫外線の高出力化に対する要望が強く、高圧水銀ランプやキセノンフラッシュランプが用いられるケースが増えてきている。
3. キセノンフラッシュランプ
殺菌で使用されるキセノンフラッシュランプの分光分布は、次の図の通りで、殺菌に有効な紫外線を多く含むブロードな光を特徴としている。このランプは、1 回の発光時間がわずか数百マイクロ秒の光であり、ピーク時の出力が非常に高いのにも関わらず、総エネルギーとしては、比較的低く、所用電力もピーク時の出力を考えると、さほど大きくない事を特徴としている。弊社では20年以上前からこのランプの製造、販売を行ってり、高い技術力を誇っている。
4. 光パルス殺菌の特徴
- ● 強力な殺菌効果(短時間殺菌)(黒黴、芽胞菌等も殺菌可)
- ● テーリングが発生しない
- ● 制御が容易(瞬時点灯可能)
- ● 残留物が発生しない
- ● ワークへの影響が少ない
- ● 省スペース
特に強力な殺菌効果と容易な制御が大きな特徴になっている。
5. 市場トレンド
- ● 食中毒の発生
- ● PL 法の導入
- ● HACCP(食品衛生管理手法の導入)
- ● 環境ホルモン等食品添加物の問題
- ● 食品加工時の変質の問題
- ● 輸入食品との競争の激化
- ● ゼロエミッション
食品業界における市場のトレンドは上記の通りで、このような状況の中では、非加熱・廃棄物が出ない・高い殺菌効果を特徴とした光パルス殺菌は、非常に注目を集めている。
6. 殺菌のメカニズム
光パルス殺菌の殺菌メカニズムには、次の2 つの効果がある。
●紫外線殺菌効果
200~300nm までの紫外線照射により、菌のDNA を損傷させ殺菌を行う。
●加熱効果
菌に吸収された光が熱に変換され、瞬間的に加熱されることにより殺菌を行う。
7. 殺菌効果
(1)Bacillus subtilis (枯草菌)
(2)Aspergillus niger (黒カビ)
(3)UV ランプとの比較
8. 光パルス殺菌の問題点
- ● 陰になる部分の殺菌はできない
- ● 表面のみの殺菌しか出来ない
光の当たる部分しか殺菌が出来ない
9. 実用化可能なキーワード
- ● 対象となる菌種が、芽胞菌もしくは黴等のUVランプでは殺菌が出来ない用途。
- ● ワークの関係で、薬剤や加熱処理がしずらいもの。
- ● 短時間で処理する必要があるもの。
- ● 殺菌装置の設置スペースに余裕が無いもの。
- ● 殺菌対象面が陰になりにくいもの。
10. 殺菌実験
弊社内には、殺菌テスト用のデモ装置があるために、必要が有れば殺菌テストも可能です。