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光技術情報誌「ライトエッジ」No.21(2001年4月発行)

電子ジャーナル「2001FPDテクノロジー大全」

(2000年10月)

UV/O3洗浄用エキシマ光照射装置

EXCIMER PHOTON SOURCE
菱沼 宣是

1. はじめに

UV/O3 洗浄は紫外線を使って活性酸素を発生させ、同時に基板表面に付着した有機物を分解、酸化揮発除去するドライ洗浄方法である。大気中に置かれた基板に真空紫外線を照射するという簡便な方法であり、1980年代後半に入ってLCD産業の発達に伴って製造工程に導入されるようになった。ウェット処理の前工程、成膜工程の前洗浄等として使用され、光源には低圧水銀灯が用いられていた。

近年、基板サイズの大型化、処理時間の短縮化が求められ、エキシマ光照射装置はこの要請に応えるため開発したものである。

UV/O3 洗浄の原理を下記に示す。

光は波長が短いほどそのエネルギーは大きく、有機物(CmHnOk)を分解する能力に優れている。従って172nmエキシマ光の洗浄能力は従来の低圧水銀灯より優れている。

2. 光源と特徴

本装置は172nmに中心波長を持つXe2*エキシマランプを搭載したエキシマ光源である。

装置の構造について概説する。

基本構造を図1に示す。金属ブロックに設けた複数本の円筒溝にエキシマランプが固定されている。金属ブロックは水冷できるように冷却水の流路を備えており、ランプは金属ブロックを介して冷却される。ランプとランプの間には山形のミラーが設けてあり、窓面の放射照度分布を均一にすると同時に光を有効に取出す働きをしている。ランプ、金属ブロック、山形ミラーは金属容器内に収められている。金属容器は窒素ガスの入口、出口を備え、容器内はエキシマ光の吸収の少ない窒素ガスで満たされている。ランプ前面には真空紫外光を効率良く透過する窓ガラス(合成石英)が設けてあり、窓ガラスよりエキシマ光が照射される。

光源の特徴として

  • ① 寿命を損なわず瞬時点灯点滅点灯が可能
  • ② 温度上昇が少なく低温処理が可能
  • ③ 平面窓のため清掃性がよくメンテナンス性に優れる

といった点が挙げられる。寿命を損なわず点滅点灯が可能であることは必要なときにのみ点灯すれば良いことを意味し、実質的に長寿命化につながり、ランプ交換回数が少なくて済むことになる。写真1は750mmx940mmの窓を持つ照射装置UER759412-172の写真である。UER759412-172の概略仕様を表.1に示す。

基板サイズの大型化に伴い一括露光洗浄方式が困難になり、現在ではスキャン方式の高出力ユニットを提案している。最大対応スキャン幅1040mm、窓面放射照度はMAX50~60mW/cm2である。一括露光方式、スキャン方式とも用途に応じて設計対応している。

図1 光源の概略構造

写真1 750mmx940mm平面光源

表1 UER759412-172の概略仕様

3. オプション

エキシマ光の放射照度の測定には弊社製ハンディモニターVUV-S172/UIT-150-Aを提供している。Xe2*エキシマ光専用の照度モニターで、紫外光を可視光に変換し、シリコンフォトダイオードで検出している。検出出力の値つけはNISTで校正を受けたフォトダイオードを基準にしている。

照射装置にはオプションとして光出力一定化機能をもたせることもできる。処理条件を一定にすると共に、ランプ負荷を軽減できるためランプの長寿命化にも効果が期待できる。

4. おわりに

クリーンルーム内はコーキング剤からの揮発有機物、壁表面の塗料からの揮発有機物など空気中に有機物が浮遊し易く、基板表面は汚染されやすい環境にある。高輝度化、高精細化など製品品質向上の要求に伴い、有機物汚染の問題がクローズアップされるものと思われ、エキシマ光照射によるドライ洗浄はこの問題解決に応え得るものであると考えている。簡便でありながら高品質な洗浄効果が得られ、品質向上に寄与できるものと期待される。今後のFPD産業の発展に貢献できることを切望する。

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