USHIO

光技術情報誌「ライトエッジ」No.25(2002年10月発行)

JELMA Journal 電球工業会報
資料館めぐり

(2002年7月)

姫路科学館
-アトムの館-

豊間根 孝雄
(ウシオ電機株式会社)

姫路科学館 外観

姫路科学館『アトムの館』は、1993年、姫路市郊外の緑豊かな地に開館した総合科学館です。館内の2階から4階には、『地球』『郷土の自然』『科学』『宇宙』の4つをテーマにした常設展示と、直径27mドームに300席を配置した日本最大級のプラネタリウムがあります。また、1階特別展示室での企画展をはじめ、各種講座や催し物が随時開催されています。

正面玄関を入ると、明るいエントランスホールが広がり、まず巨大なフーコー振り子が目に入ってきます。

3階の天井から吊り下げられた振り子は、ワイヤーの長さが15.6m、真鍮の重りの重さが107kgあり、振り子の回転にしたがって、床面のピンが倒れるように設計展示されています。地球の自転を感じながらピンの倒れる様子を眺めていると、暫し時の経つのを忘れてしまいます。姫路科学館では1日に約206度回転するそうです。また、エントランスホール内には、ジルコニウムの輝きでビッグバンを表した壁画のレリーフなど、様々な興味深い展示物もあります。

その他、1階には受付、プラネタリウム、企画展を行う特別展示室、軽食・喫茶や簡単な記念品などを販売するミュージアムショップがあります。館内の案内については、受付の学芸普及員に問い合わせれば快く対応していただけます。

フーコの振り子

1F プラネタリウム

プラネタリウム会場に足を踏み入れると、巨大なドーム型の天井が広がり、15度傾斜した床面には約300席が配置されています。

会場は大きく分けて、中央にある投影機本体、後ろ側にある操作卓(コンソール)と半球形のドームスクリーンの3つで構成されています。

あまりご存知ないと思いますが、日本はプラネタリウムが大変普及している国で、ドーム径15m以上の大型プラネタリウムの設置台数は世界1位になるそうです。姫路科学館のドーム径は27mで世界第3位の大きさを誇ります。

中央にある恒星投影機は、ランプと光学部で構成された投影機と、投影機を支え位置決めをする機構部からなります。姫路科学館の投影機は1球1光源レンズ投影方式で、光源には5kW特殊ハロゲンランプが使われており、ハロゲンランプ1灯式では世界最大の大きさです。これにより、肉眼では見ることのできない(7.5等級までの)恒星を含め、約28,000個の星を映し出し、加えて惑星投影機で太陽などの惑星の動きを組み合わせることで、実際に宇宙にいるような臨場感を演出してくれます。

恒星投影機の中で活躍しているランプは5kWの特殊ハロゲンランプだけではありません。恒星の中には「ブライトスター」と呼ばれる特に明るい恒星があり、個々の「ブライトスター」の光源として自動車ヘッドランプ用ハロゲンランプが活躍し、数ある星の中でより強い光を放っています。その他周辺に使われているスライドプロジェクタ等で使われている光源(キセノンランプ等)も含めると、プラネタリウム全体で使われるランプ数は100灯以上にのぼります。

番組は、前半の生解説「今夜の星空案内」と後半に自動演出で宇宙の話題を紹介する「一般番組」を中心に構成されており、学校休業日には、家族で楽しめる「家族番組」も投影しています。「今夜の星空案内」では、解説者が今夜姫路で見られる星空について、その見方やポイントなどを丁寧に説明してくれます。また姫路科学館では年間5本の自主制作番組を作製しており、他では観られないオリジナル番組を楽しむことができます。

講演時間外にもかかわらず、星空を投影していただきましたが、直径27mドームスクリーンに映しだされる映像はドームの大きさ故の奥行きが感じられて、かなり迫力があり、観る者を魅了します。

プラネタリウム 内観(1)

プラネタリウム 内観(2)

3F 不思議で楽しい科学の世界

3階展示室には、明るく広いフロアに、カラフルな展示物がたくさん並んでいます。

ここでは、音・光・運動・電気・化学など、現代生活の基盤となっている科学の基礎について、実際に展示物に触れ、動かすことによって楽しく学ぶことができます。子どもには最も人気のあるフロアで、子どもの歓声が絶えないようです。

光に関する展示物は、「光と人のふれあい」のスペースに、「光とプリズム」「光ファイバー」「ホログラフィー」「幻の像」などの展示があります。中でも興味深かった展示のひとつに「光の仲間」と題した展示があります。この展示は色彩豊かなオブジェを「①白熱灯」「②蛍光灯(紫外線灯)」「③水銀灯」「③ナトリウム灯」の4種類の異なる光源で照らし、その色彩の見え方(演色性)を体験できる展示です。

家庭やホテルのロビーなどで使われる①白熱灯は赤味を帯びたソフトで、暖かい雰囲気を演色します。これと対称的に③ナトリウム灯は、ナトリウム原子によるD線(589nm)の放出により全体が黄色っぽく、演色性の悪いことが判ります。ご参考までに、食塩にアルコールを染み込ませて暗室で燃やすと、食塩中のナトリウムイオンによる炎色反応で、ナトリウム灯と同じような演色性を体験することができます。

今や家庭の明かりも用途により選ぶ時代となり、今後私たち光源メーカにとって用途に応じた光を提案していくことがますます重要になることを感じました。

また、同階のサイエンスシアターでは、学芸普及員が子どもを対象に、『放電の実験』『静電気の実験』を始めとする様々な演示実験をおこなっています。(指定時間帯のみ)

3階 展示フロア

光の仲間

4F 夢と感動の宇宙コーナー

宇宙コーナーでは、なぞと感動に満ちた宇宙の姿を体験できます。太陽望遠鏡や銀河の3次元画像、宇宙旅行を楽しめるスペースショップなど、宇宙の不思議を体験できる装置もたくさんそろっていて、私たちを暫し未知なる宇宙空間にいざなってくれます。

中には『太陽体重計』『月体重計』『木星体重計』などの面白い測定器もあり、それぞれの惑星での自分の体重を知ることができます。ちなみに私の太陽体重はなんと2212kg、月体重は12.4kgでした。

4階 宇宙フロア

その他の展示

今回ご紹介できませんでしたが、1階特別展示場では期間限定の特別展示が観られ、2階常設展示場では、恐竜を始めとするさまざまな化石などから、地球の素顔にせまるとともに、私たちの身近な植物や動物の姿を知ることができます。

イベント

姫路科学館では小学校低学年から中学生とその親を対象とした「実験工作教室」「お母さんの科学教室」「自然観察会」などのイベントが随時開催されています。親子で科学や自然に触れ、有意義な一日を過ごすのも良いのではないでしょうか(各イベントへの参加は事前申込みが必要です)。

最後に、急な訪問にも関わらず、丁寧にご説明いただいた技術主任の吉岡さんを始めとする姫路科学館の皆さんに、心から感謝申し上げます。

「姫路科学館-アトムの館」

所在地:

  • 〒671-2222 兵庫県姫路市青山1470-15
  • TEL 0792-67-3001
  • FAX 0792-67-3959
  • http://www.city.himeji.hyougo.jp/atom

休館日:

  • (1)月曜日(祝日・休日は開館)
  • (2)祝日・休日の翌日
    (但し土・日・休日は開館)
  • (3)年末・年始(12月28日~1月4日)

開館時間:午前9時15分~午後5時
(但し、入館は閉館の30分前まで)

入館料:

  • (1)常設展示
    一般400円・高校生100円・小人50円
  • (2)プラネタリウム
    一般400円・高校生100円・小人50円

交通:

  • (1)JR姫新線をご利用の方
    余部駅下車徒歩30分
  • (2)車をご利用の方
    JR姫路駅より約15分、
    山陽自動車道姫路西インターより10分、
    姫路バイパス太子東ランプより5分
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