USHIO

光技術情報誌「ライトエッジ」No.27/特集 放電ランプ(2004年4月発行)

1.はじめに

原始の荒々しい宇宙環境や地球環境のもと、紫外線と宇宙のチリの遭遇や宇宙線と原始大気の遭遇などにより、アミノ酸や塩基を含む複雑な有機物が形成され、当時の地球環境が連なったアミノ酸やRNA塩基を作りだし、やがてタンパク質ができ、生命体が発生したと考えられている。これらの生命体の多くは光を利用し生命活動を営んでいる。光なしではその後の地球における生物の高度な発展もなかったのではないかと思われるほど、生物の生命活動や人類の生活に光りは大きく係わっている。火を使うことで地球上の他の動物、中でも類人猿と明確な差を持つ我々人類にとって、太古の昔から太陽や燃焼の炎、そこから発せられる光や熱に大きな関心があったと想像される。

さて、太陽や炎による自然の光の話しから、人工光源による光、その中でも電気による光に話しを戻すと、光を発生する方法には大別すると熱放射とルミネッセンスの2種類がある。熱放射とは物体の温度を上げることによって光が発生する現象でありフィラメント電球は熱放射を利用した人工光源で、ルミネッセンスとは電気がガス空間や固体中を移動する際に光を発生する現象で各種放電ランプやEL、LED、レーザなどがこの原理を利用している。

電気による人工光源の歴史は、1800年代初頭には炭素電球の原型やアーク灯が出現し、1879年にエジソンが実用炭素電球を発明したことを皮切りに、1930年代には高圧~超高圧水銀ランプ・低圧ナトリウムランプ・蛍光ランプ、1944年にはキセンノンランプ、1961年にはメタルハライドランプなどの主要な放電ランプが発明され、その後も改良が行われ今日に至っている1)。1960年以降ではELやLEDなどの光源の実用化も急速に進んできた。レーザも1959年にはルビーレーザが出現、1960年にはHe-Neガスレーザが発明され、1962年には半導体レーザも出現している。最近では、人類の未来を確保する環境保護のため、これら人工光源に求められる内容も「明るさ・大光束光源、演色性」などから「省エネルギー、省資源、無公害、リサイクル化など環境を尊重した方向」に開発のウエイトが変化してきている。

光の技術はエレクトロニクス、ディスプレ、メカトロニクス、ケミカル、バイオ、コミュニケーション、エネルギーなど多くの分野で、最新テクノロジーをサポートしている。光が明かりであった時代から、光がエネルギーとして利用される時代に移りつつある。光は電磁波の一種で、波長的には電波(概ね100µm以上)とX線(概ね1nm以下)の間に位置する。最近ではX線と一桁しか違わない短い波長であるEUV光(13nm)の研究も半導体分野での実用化を目指して進んでいる。ウシオは創業以来、光の専門メーカーとして、光の創生と応用開発をお客様とともに続け、多くの製品群を生み出してきた。

次章でこれら各種の光を発生する人工光源について概要を説明し、以降、人工光源のうちウシオで扱っている放電ランプについて原理、構造、特性、用途、最近の製品動向などについて説明する。

本特集は、ライトエッジ15号として発刊した「放電ランプ特集号」が好評を持続していましたが、さすがに内容的にも多少古めかしくなったこともあり、内容を一新し最新の情報や製品を盛り込むとともに説明と資料を補強し、ライトエッジ27号「放電ランプ特集号」とすることにしたものです。基礎編では、各種放電ランプについての参考書としてもご活用頂き、読者の皆様方の光を使った研究や開発にいささかでもお役に立てれば幸いです。

(鈴木 義一)

Copyright © USHIO INC. All Rights Reserved.