USHIO

光技術情報誌「ライトエッジ」No.31 (2008年10月発行)

日本臨床化学会

(2008年8月)

マイクロ流体チップを用いた
微量血液分析システムの開発

草場恵子1)、小野美由紀1)、増本道子1)、堀田多恵子1)、松本茂樹2)、横川昭徳3)、栢森裕三1)、康東天1)
1)九州大学病院検査部,2)ウシオ電機株式会社,3) ローム株式会社

はじめに

現在、POCT機器を含む緊急検査機器や中小病院の検査機器として、簡便•迅速•給排水不要という点からドライケミストリーが広く使用されている。しかしドライケミストリーは、試薬が特殊な構造•原理をしたものが多く、試料のマトリックスの影響を受けるといわれている。現在我々が開発中のマイクロ流体チップを用いた微量血液分析システム(以下本システム)は、簡便•迅速•給排水不要という利点を持ちながら、現行の液状試薬を利用し、透過光•吸光度測定であるために標準化に適合でき、マトリックスの影響を受けない。また全血•血漿•血清と多種な試料を用い、25µLで最大5項目の同時測定が可能である。今回我々はCRE、UA、AST、ALT、 GGTの5項目について、本システムを汎用自動分析装置と性能比較したので報告する。

対象および方法

1.対象

当院の外来患者検体および入院患者検体のうち、血清およびEDTA-2K加血液の同時採血のあった97検体を用いた。

2.測定原理

チップ内に第一試薬•第二試薬がそれぞれ充填されており、チップの自転と分析装置内部ステージの公転を利用した遠心力のみで溶液処理を行い、透過光•吸光度の測定を行う。遠心分離工程が含まれているため、全血はチップ内部で分離される。

3.検討項目

CRE、UA、AST、ALT、GGTの5項目

4.検討内容

対照機器にH7700(日立ハイテクフィールディング)を用い血清•血漿•全血における相関を求めた。

結果

1.血清における相関

H7700をx、本システムをyとしたとき、
CRE r = 0.998、 y = 0.99x - 0.03、Syx=0.17
UA r = 0.993、 y = 0.98x - 0.04、Syx=0.31
AST r = 0.999、 y = 0.95x + 1.39、Syx=5.54
ALT r = 0.999、 y = 0.99x - 1.59、Syx=6.99
GGT r = 0.999、 y = 0.99x + 2.12、Syx=8.80
であった。

2.血漿における相関

H7700をx、本システムをyとしたとき、
CRE r = 0.998、y = 0.96x + 0.03、Syx = 0.18
UA r = 0.984、y = 0.94x + 0.01、Syx = 0.41
AST r = 0.999、y = 0.95x + 0.01、Syx = 4.51
ALT r = 0.998、y = 0.97x - 2.19、Syx = 6.80
GGT r = 0.999、y = 0.98x - 1.16、Syx = 6.82
であった。

3.血漿•全血における相関

H7700の血染をx、本システムの全血をyとしたとき
CRE r = 0.996、y = 0.93x + 0.04、Syx = 0.25
UA r = 0.987、y = 0.96x - 0.18、Syx = 0.37
AST r = 0.998、y = 0.93x - 0.43、Syx = 5.85
ALT r = 0.998、y = 0.95x - 0.45、Syx = 8.41
GGT r = 0.998、y = 0.97x - 0.51、Syx = 10.04
であった。

結語

今回検討した5項目についてH7700と本システムとの相関は良好であった。さらに全血と血漿における相関も良好であり、遠心時間を短縮できるため、緊急検査に有用であると考えられる。また本システムはチップ内の液状試薬を変えることで他の項目の測定も可能である。

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