光技術情報誌「ライトエッジ」No.32(2009年5月発行)
第19回生物試料分析科学会 ワークショップ1(生物試料分析科学会)
(2009年2月)
µ-TAS技術による
微量血液測定システムの開発
Ο中村貴之1),竹廣 敦1),森 敏博2),松本 茂樹3)
1):(株)三和化学研究所 2):ローム(株)3):ウシオ電機(株)
はじめに
POCT(point of care testing)は患者の傍らで主に医師・看護士が行う検査であり、「検査結果をその場で得ることができる」、「検査実施日に結果に基づいた医療・看護を行うことができる」、「患者が検査を身近に感ずることができる」等の利点があり、医療の質、患者のQOL(quality of life)の質等の向上に資する検査である。
近年、「医療法の改正」、「医療機関の役割の細分化」等により、医療現場におけるPOCTのニーズが高まっている。また、ニーズの高まりに伴いPOCTへの要求も高まり、大型分析装置と同等の精度が得られることは言うまでもなく、これまで以上の迅速化、簡便化、試薬やサンプル液量の低減化、システムの小型化が求められている。
(株)三和化学研究所は、ローム(株)及びウシオ電機(株)と共に新たなPOCT「微量血液測定システム」を開発した。今回、この「微量血液測定システム」について、基礎データを含めた紹介を行う。
システム概要
1. 構成
当該システムは、体外診断用医薬品「バナリストエースCRP」と専用測定装置「バナリストエース」で構成している。
(1)バナリスト エース CRP
- 1)測定項目
CRP(C反応性蛋白) - 2)測定原理
ラテックス凝集免疫比濁法 - 3)測定範囲
0.1~20mg/dL - 4)概要
- ・µ-TAS(Micro Total Analysis System)による体外診断用医薬品(以下測定用チップ)。
- ・測定用チップ上で全ての測定工程が完結。
- ・2次元コードに測定に必要な情報を全て集約。
(2)バナリストエース
- 1) 作動・動作原理
測定チップ上の2次元コード情報を読み取った
後、遠心方式により測定工程を自動的に実施する。 - 3)概要
- ・測定項目の拡張性を有し、最大10種類の測定用チップに対応。
- ・作動は、測定チップの2次元コード情報に基づき、全ての工程を自動的に実施。
- ・操作は、測定用チップの種類に関わらず共通。
2. 特長
- ・微量全血
- ・簡単操作
- ・迅速測定
- ・容易なメンテナンス
まとめ
当該システムは、検査に必要な全血絶対量4µLにより患者負担軽減を実現し、新生児から高齢者まで幅広い患者層に対応する。また、測定操作3ステップ、キャリブレーション不要とする操作の簡便化等、POCTへの要求事項全てに対応した。さらに、大型分析装置との相関関係も良好であり、医療ニーズに応える精度も確保した。このため、当該システムは細分化された医療現場、特に診療所において有用性を発揮し、医療に貢献できると考える。
また、当該システムの追加測定項目として、低濃度域CRP、 HbA1cの製品化を行っている。