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光技術情報誌「ライトエッジ」No.33(2010年8月発行)

2010太陽光発電技術大全(電子ジャーナル)

(2009年8月)

太陽電池特性評価用
ソーラーシミュレータ

永尾 嘉彦

1. はじめに

当社は、人工光源の中で最も太陽光に近いスペクトルを持つキセノンランプや、露光・殺菌・硬化などを目的とした各種水銀ランプ、プロジェクタや照明用ランプ、加熱用ランプなど、幅広い光源とそのランプを搭載した装置の開発・製品化を行い、さまざまな“光”を市場へ投入してきた。

中でも、20年以上前に、世界に先駆けて当社が手掛けた“宇宙開発用ソーラーシミュレータ光源装置”は、十数m径の照射エリアに対し、最大出力30kWのキセノンランプを十数灯配すことで、1SUN(100mW/cm2)に対応している。また、照射エリアを絞ることで、10SUNにも対応でき、その要素技術は、現在の露光光源装置やランプハウス開発のベースとして、大口径化、高スループット化、大出力化に貢献している。

さらに当社では、このソーラー技術をより使いやすくかつ導入しやすくした、簡易タイプのソーラーシミュレータを販売し、柔軟なソーラー実験・研究開発の実現を可能としているが、このたび、太陽電池検査用光源装置へのニーズの高まりを受け、本格的なセル評価用の“太陽電池検査用光源装置”の開発に着手した。そして、光学系の設計をはじめ、エアーマスフィルターや高安定化電源など、市場の要求に応える光源装置を開発した。この太陽電池検査用光源装置をリサーチモデルと位置づけ、ユーザー要求が多様化するインラインモデルのカスタマイズにも対応できる装置を提供していく予定である。以下にその概要を説明する。

2. 太陽電池検査用光源装置の開発コンセプト

本装置を開発する上で、以下の点を特徴とする開発 を行った。

  • ①生産ラインへの設置を可能とするため、電源を内蔵するとともに可能な限り小型であること。
  • ②使い勝手を追及した専用ランプおよび取り付け機構により、ランプ交換時の調整を不要とすること。
  • ③環境に配慮するために、消費電力を抑えること。
  • ④安全性に配慮した装置であること。

3. 既存の生産ラインへ対応可能

本装置は、1SUNを基本性能とし、JIS C 8912/8933ともに放射照度場所むら、放射照度時間変動率、スペクトル合致度など、全てクラスAを満たしている。さらに様々なインターロックを装備することで、生産ラインでの安全性に考慮している。専用開発された高精度キセノンランプおよび専用設計された取付け機構により、ランプ交換時によるランプ調整および場所むら測定(17点測光)も不要な上、電源一体化により小型化も実現した。

表1. JIS 等級分類

図1. PV Cell Tester 分光放射照度分布

4. ラインナップ

4.1 生産ライン向け光源装置

生産ライン向け光源装置(写真1)の特徴を以下に示す。

  • ①照射面積160x160mm、放射照度1SUN、JIS規格AAAの小型光源装置。
  • ②専用キセノンショートアークランプ使用。
  • ③フィードバック回路による照度安定化制御と新開発の高安定化電源を内蔵。
  • ④タンデム型ソレノイドによる、正確なシャッターの開閉が可能。
  • ⑤装置本体が325x684x794mmと小型のため、実験テーブル上にも設置でき、各種実験にも柔軟に対応。

なお、照射面積200x200mm、放射照度1SUN、JIS規格AAAをクリアし、新開発の高安定化電源を内蔵した光源装置を2009年内に生産予定である。本装置ベースのユーザーニーズに応じたカスタマイズ対応も可能である。

写真1. 生産ライン向け光源装置

4.2 研究実験用光源装置

研究実験用光源装置(写真2)は、以下に示す特徴により積層型セルの出力測定や近年問題になりつつある各種セルの耐久性などの加速テストを可能にした。

  • ①照射面積110x110mmに10SUNの放射照度の照射が可能。
  • ②キセノンショートアークランプを使用。
  • ③照射径10mm以下の集光照射も可能。
  • ④縦型直下照射方式で、放射照度250W/cm2以上の照射が可能。
  • ⑤照射部をボックス構造にすることができる。また、照射面に自動ステージやペルチェ素子などの冷却機構を置くことも可能。これにより、用途・目的に合わせた自由度 が向上。

写真2. 研究実験用光源装置

4.3 簡易研究・実験光源装置

簡易研究・実験光源装置(写真3)は、誰でも専門の研究者レベルの装置が使えるように開発されたものであり、使い方は簡単ながらも性能は専門レベルであるため、基礎実験を行う研究者に適したモデルである。

  • ①有効照射面積30x30mm。
  • ②キセノンショートアークランプを使用。
  • ③素材やチップの開発初期段階では、JIS規格全てにおいてクラスAは必要としないが、小型化を実現したため、テーブル上での実験が可能であり、装置の外殻温度も40°C以下と安全性に優れている。
  • ④照射レンズは交換方式のため、使用するレンズにより、高均一度照射、高照度照射、高平行度照射が可能。

写真3. 簡易研究・実験光源装置

4.4 ファイバ光源装置

ファイバ光源装置の基本構造は、簡易研究・実験光源装置のモデルと同様であるが、装置内部の光学系およびファイバ先端に取り付けるレンズにより、高均一照射が可能である。

この装置は、小型のセルやチップへの照射方向の自由度を高める目的のもので、実験ごとにワークを動かさずに出力先の角度を変化させることにより、様々な角度から当たった光束によるワークのエネルギーの測定が可能である。

5. おわりに

当社は、“光”の総合メーカーとして培ってきた光源・装置開発の経験を生かし、太陽電池業界に向けてキセノンランプのラインアップと装置のノウハウを集結し、各種太陽電池関連の検査装置開発を推進してきた。

今後も、研究開発モデル、生産設備としてのカスタマイズ化、さらには大型化への対応もマーケットトレンドに応じて進めていく。

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