USHIO

光技術情報誌「ライトエッジ」No.34(2011年3月発行)

月刊ディスプレイ12月号(テクノタイムズ)

(2010年11月)

太陽電池特性評価用ソーラシミュレータ

佐藤剛

1. はじめに

ウシオ電機は、人工光源の中で最も太陽光に近いスペクトルを持つキセノンランプや、露光・殺菌・硬化等を目的とした各種UV ランプ、プロジェクタ用ランプ、加熱用ランプ等、幅広い光源とそれらの光源を搭載した装置の開発・製品化を行い、さまざまな「光」を市場へ投入してきた。

中でも、20年以上前に、世界に先駆けて弊社が手掛けた「宇宙開発用ソーラシミュレータ光源装置(以下ソーラ)」は、Φ十数mの照射エリアに対し、最大出力30kWのキセノンランプを十数灯配すことで1SUNに対応。また、照射エリアを絞ることで、10SUNにも対応でき、その要素技術は、現在の露光光源装置やランプハウス開発のベースとして、大口径化、高スループット化、大出力化に貢献している。

弊社では、このソーラ技術をさらに使いやすく且つ導入しやすくした簡易タイプのソーラシミュレータを販売し、柔軟なソーラ実験・研究開発体制の構築を可能としている。さらに、近年の太陽電池検査用光源装置へのニーズの高まりを受け、本格的なセル評価用の「太陽電池検査用光源装置」の開発に着手。光学系の設計をはじめ、エアマスフィルターの開発、高安定化電源の開発など、市場の要求に応える光源装置を開発した。

この太陽電池検査用光源装置をリサーチモデルと位置づけ、顧客要求が多様化するインラインモデルのカスタマイズにも対応できる装置を提供していく予定であり、以下にその概要を説明する。

2. 太陽電池検査用光源装置の開発コンセプト

本装置を開発する上で、以下の点を特長とする開発を 行った。

  • ① 生産ラインへの設置に対応するため、電源内蔵であり尚且つ可能な限り小型であり、ユーザニーズに合わせたサイズ変更が容易であること。
  • ② 使いやすさを追及した専用ランプおよび取付け機構により、ランプ交換時の調整を不要とすること。
  • ③ 環境に配慮するために、消費電力を抑えること。
  • ④ 安全性に配慮した装置であること。

3.既存の生産ラインへ対応可能

本装置は、1 SUN(100mw/cm2)を基本性能とし、JISC8912/8933ともに放射照度場所むら、放射照度時間変動率、スペクトル合致度などすべてクラスAを満たしている。さらに様々なインターロックを装備することで、生産ラインでの安全性に考慮している。専用開発された高精度キセノンランプおよび専用設計された取付け機構により、ランプ交換時による、ランプ調整及び場所むら測定(17点測光)も不要な上、電源一体化により小型化も実現した。

4.ラインナップ

1) 生産ライン向け光源装置

  • ・照射面積180×180mm、放射照度1SUN、JIS規格AAAの小型光源装置
  • ・ユーザニーズに合わせた装置サイズの変更可能。
  • ・キセノンショートアークランプ専用設計で省電力、高輝度を実現
  • ・ランプ交換時の光軸調整不要
  • ・フィードバック回路による照度安定化制御と新開発の高安定化電源を内蔵
  • ・タンデム型ソレノイドによる、正確なシャッターの開閉が可能
  • ・装置本体が(325×685×794mm)と小型のため、実験テーブル上にも設置でき、各種実験にも柔軟に対応

写真1. 生産ライン向け光源装置

2) 研究実験向け光源装置

以下により、積層型セルの出力測定や近年問題にな りつつある各種セルの耐久性などの加速テストを可能 にした。

  • ・ 照射径100×100mmのサイズに1300mw/cm2(13SUN)の放射照度の照射が可能
  • ・キセノンショートアークランプを使用
  • ・ 照射部をBOX 構造にすることが可能。また、照射面に自動ステージやペルチェ素子などの冷却機構をおくことも可能。これにより、用途・目的に合わせた自由度が向上
  • ・照射径Φ10mm以下の集光照射も可能
  • ・温度制御装置との組合せでワークの温度制御を実現

写真2. 生産ライン向け光源装置

3) 簡易研究・実験向け光源装置

教育機関から企業の研究室までどなたでも容易に基 礎実験を行えるエントリーモデル。基礎研究に最適。

  • ・有効照射面積50x50mm
  • ・キセノンショートアークランプを使用
  • ・素材やチップの開発初期段階において、JIS規格すべてクラスAは必要としないユーザ向けに、小型化を実現した為、テーブル上での実験が可能であり、装置の外殻温度も40°C以下と安全性に優れている
  • ・照射レンズは交換方式のため、使用するレンズにより、高均一度照射、高照度照射高平行度照射が可能

写真3. 簡易研究・実験向け光源装置

4) ファイバー光源装置

基本構造は 3 )のモデルと同様であるが、装置内部の光学系およびファイバー先端に取り付けるレンズにより高均一照射が可能である。

この装置は、小型のセルやチップへの照射方向の自由度を高める目的のもので、実験の都度ワークを動かさずに出力先の角度を変化させることにより、様々な角度から当たった光束によるワークのエネルギーの測定が可能である。

写真4. ファイバー光源装置

5.まとめ

弊社は、「光」の総合メーカとして培ってきた光源・装置開発の経験を生かし、太陽電池業界に向けてキセノンランプのラインアップと装置のノウハウを集結し、各種太陽電池関連の検査装置開発を推進してきた。

今後も、研究開発モデル、生産設備としてのカスタマイズ化、更には大型化への対応もマーケットトレンドに応じて進めていく。

以 上

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