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光技術情報誌「ライトエッジ」No.37〈特集ウシオの新しい取り組み第二回〉 2012年6月発行

シネマ/特殊映像/デジタルサイネージ・メディアファサード

高フレームレート デジタルシネマ

Mike Perkins (CDS)、吉田 ひさよ (CDS日本支社)

映画が生まれた頃、カメラは手で操作する機械装置であった。カメラマンはクランクを持ち、それを回してフィルムを動かしていた。クランクを回す速さで、1秒あたりの撮影フレーム数が決まった。このことから、低フレームレートが非常に望ましいものとされた。なぜなら、低フレームレートであれば、フィルムの使用量が少なくて済み、カメラマンの疲労も少なかったからだ。

無声映画の時代、公的標準規格は毎秒16.6フレーム(16.6fps)と定められていた。この標準規格は必ずしも守られていたわけではなく、実際の映画の多くは16~23fpsで撮影されていた。映写機のフィルム再生は18fps以上であったが、フィルムが撮影時と異なるフレームレートで再生されることがよくあった。この混乱は、発声映画の導入まで是正されることはなかった。フィルムに音声が加わることにより、非常に安定した反復可能なフレームレートが必要になった。

実験により、良好な音質を確保しながらフィルムコストを最小限に抑える最適なレートは、24fpsであると判明した。以降、フィルム業界では、このレートが標準規格として使用されている。シネマ業界がデジタルフォーマットに移行しつつある現在、私たちは、これまでのあらゆる見解を再考するチャンスを迎えている。

フィルムコストを低く抑える必要性は、もはや当てはまらない。デジタルの世界では、フレームレートを高くしてもファイルサイズが大きくなるだけであり、データの保管コストは安価である。私たちは、容易にフレームレートを高くすることができる。そうすべき理由はあるのだろうか?

答えは明らかにイエスである。

シネマプロジェクターの究極の目標は、映画監督のビジョンをできる限り忠実に再現することである。つまり、技術的影響をできる限り取り除くということである。低フレームレートの映写は、本質的に、動きに関する技術的影響を受ける。これは、スクリーン上の画像と人間の目、そして脳による画像認識の相互関係に起因する。

映画の一場面で動きがあるとき、見る人の目は自然にそれを追いかける傾向がある。シネマにおける問題は、映写された動きが連続的ではないことである。映画は静止画像が連続したものであり、動いているものは、ある場所に1/24秒、次の場所に1/24秒といったように位置することになる。一方で、人間の目の動きは連続的である。このことが、現在の映画における最も好ましくない技術的影響のひとつの原因となっている。

人間の目がどのように働くかということと、映画がどのように機能するかということの相違により、早く動くものはぎくしゃくした動きに見えてしまう。映画のこのような技術的影響を改善するための方法は、フレームレートを上げることである。48fpsまたは60fpsのフレームレートを採用することで、目とスクリーンの相違を劇的に低減することができ、滑らかで、より自然に見える画像がもたらされる。

ジェームズ・キャメロン(タイタニック、アバター)やピーター・ジャクソン(ロード・オブ・ザ・リング)といった映画監督は、このイニシアチブの絶大な支持者であり、すでにこの技術を使用する映画を計画している。

写真1. 24fps(左)と60fps(右)のレーシングカーの映像
高フレームレートに対応したデジタルシネマプロジェクターで表示した場合は、非常に速いシーンであっても、ぼけることなく表示される。今までの標準的なフレームレートは1秒間に24フレーム(24fps)であったが、今後は60fpsが増えてくると言われている。

図1-1 立体視対応の映像を1秒間に24フレームで撮影し、右目用映像、左目用用映像をそれぞれプロジェクターに入力。
それをプロジェクター内部で3倍にして見せるのがTriple flashing。(24+24)×3という計算で144fpsという結果になる。

図1-2 立体視対応の映像を1秒間に48フレームで撮影し、右目用映像、左目用用映像をそれぞれプロジェクターに入力。それをプロジェクター内部で
2倍にして見せるのがDouble flashing。(48+48)×2という計算で192fpsという結果になる。Triple flashingよりDouble flashingの方が、よりスムースな映像表示となる。

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