光技術情報誌「ライトエッジ」No.39(2013年6月発行)
可視化情報全国講演会 2012姫路
(2012年10月)
デジタルホログラフィック顕微鏡による
時系列マイクロ3D3CPTV*
松尾 司(ウシオ電機(株))、木下 晴之(東大生研)、安木 政史(西華産業(株))、
大石 正道(東大生研)、大島 まり(東大生研)、藤井 輝夫(東大生研)、本 篤志(ウシオ電機(株))
Time-Series 3D3C PTV Using Digital Holographic Microscopy
Tsukasa MATSUO, Haruyuki KINOSHITA, Masashi YASUKI,
Masamichi OISHI, Marie OSHIMA, Teruo FUJII and Atsushi MOTO
ABSTRACT
This paper reports the development of a new micro 3D3C PTV method based on digital holographic microscopy (DHM), and its application to the 3D microscopic flow measurement. As a key device to materialize 3D3C PTV, we have used the DHM based on an off-axis holographic/interferometric optical system, which had been developed to measure the 3D geometry of a microscopic object or surface in 3D and in real time. Our developed 3D3C PTV system consists of the DHM system, a newly-developed tracer particle detection method, and a standard particle tracking algorithm. The 3D positions of tracer particles in the volume of 282 μm x 282 μm x 100 μm have been detected at 115 fps with in-plane and out-of-plane resolutions of 1 μm. By tracking those positions, we have successfully obtained the time-series 3D3C velocity vectors of a micro flow.
Keywords: Microfluidics, Digital Holographic Microscopy, Particle Tracking Velocimetry
1. 緒 論
3次元計測が可能なPIV/PTVとして、ステレオPIV1)や3次元PTV2)といった2台以上のカメラによる三角測量の原理を利用した方法があるが、カメラの台数分だけキャリブレーションが必要となり、システムが複雑となるデメリットがある。また、マイクロスケールでは、対物レンズ同士の機械的な干渉などの光学的要因によって、マクロスケールで利用される方法は適用困難であるため、3次元計測を実現するための様々な方法が考案され、実施されている3)。ホログラフィックPIV/PTV4)にはこのような不都合はないが、ホログラムの現像、再生工程にかかる時間のため、実用的な計測法とは言い難い。
よって、本研究では、これらの問題を解決し、マイクロ流れに適用可能な、デジタルホログラフィック顕微鏡(DHM)をベースとした3D3CPTVシステムの開発を目的とする。さらに、実際に3次元的なマイクロ流れを実測することで、本システムのマイクロ流体デバイス評価ツールとしての有用性を示す。
2. 計測システムと計測手法
2.1 システム構成
本研究では、トレーサ粒子の3次元位置を測定するために、内製したDHM形状計測機5)を用いた。本計測機の特徴として、
- ・オフアクシス方式の採用により時系列計測が可能
- ・テレセントリック構成のため歪みが生じない
- ・GPGPU対応の内製ホログラム解析ソフトウェアにより、フルフレームレートで30fps以上のリアルタイム再生が可能などが挙げられる。
光学系は透過光方式となっており、倍率20倍の対物レンズ(M Plan Apo 20X(、株)ミツトヨ)を用いた場合、視野領域は282μm×282μm、光学分解能は0.75μm、作動距離33.5mmとなる。また、カメラの撮影フレームレートは115fps、露光時間は0.8msに設定した。
2.2 3D3CPTVシステム
本研究で開発した、DHMによる時系列3D3CPTVシステムの解析フローをFig.1を用いて説明する。
まず、DHMにより、ホログラムを時系列記録する。次に、各時刻のホログラムに対して、高さの異なる明視野像をホログラム解析ソフトウェアで求め、3次元再生像を生成する。この3次元再生像に対して粒子検出処理を行うことで、3次元空間での粒子位置を出力する。最後に、隣接する2時刻の粒子位置結果を用いて粒子追跡を行い、3D3Cの速度ベクトルデータを出力する。なお、粒子追跡処理には、2時刻間で最近接の粒子を同一粒子とする基本的アルゴリズムを用いた。
3. 計測実験
本研究では、特に、Z方向の速度成分が大きい流れを作るために、Fig.2のような3次元微小流路を作製した。U字流路を縦置きにした構造となっており、折り返し部分でZ方向への流れができるように設計されている。流路はPDMS製であり、使用流体は濃度20%のグリセリン水溶液、そこにトレーサ粒子として直径2μmのポリスチレン粒子を体積比0.0025%の濃度で混入させた。流量は3μL/minに設定した。計測領域は、流れ折り返し部分を中心とする282μm×282μm×100μmとしている。
上記流れ内のトレーサ粒子を、連続した20フレームで位置検出した結果をFig.3に示す。この結果より、検出された粒子位置の時系列結果が3次元流れに対応した軌跡となっていることがわかる。また、上記流れをPTV解析した結果をFig.4に示す。この結果より、3次元マイクロ流れの3D3C速度ベクトルを計測できていることが確認できる。なお、各時刻における平均粒子検出数は56個であった。
4. 結論
マイクロ流れに適用可能な、DHMをベースとした時系列3D3CPTVシステムを開発した。更に、3次元的流れを実測し、対応する3D3C速度ベクトルデータを得ることができた。よって、本システムはマイクロ流れ計測ツールとして有用であると考えられる。
論文を探す
今号では、各種の光源(半導体露光用EUV、複写機用LED、高輝度・長寿命・高安定のLDLS、光加熱用ハロゲンヒータなど)や、光の装置・システム(インターポーザ基板用露光装置、スマートフォン・タブレット端末用UVキュア、新規蛍光免疫素子Q-bodyによる薬物検出システムなど)など、2012年春から2013年春にかけて発表した技術や市場動向の論文15件を掲載しました。
シリーズ「大学研究室を訪ねて」では、新しい機能性タンパク質と有機メソッドの創製に挑む、東京工業大学資源化学研究所の上田先生をお訪ねし、開発に成功され、今、話題を集めているQ-bodyを用いた免疫測定法をご紹介しております。
(2013年06月)