USHIO

光技術情報誌「ライトエッジ」No.40(2014年3月発行)

第30回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム(電気学会)

(2013年11月)

電磁バルブ開閉方式による
自動濃度調製モジュールの開発

森田 金市*(ウシオ電機株式会社)、阪本 一平(矢部川電気工業株式会社)
川口 俊一(北海道大学大学院環境科学院)
Automated Sample Preparation Module Using Electromagnetic Valves
Kinichi Morita*(Ushio INC.) Kazuhira Sakamoto (Yabegawa co.),
Toshikazu Kawaguchi (Hokkaido Univ.)

センサの信頼性を調べるために、多くの研究では検量線を作成して検出限界を求める。しかし、この検量線の作成にあたり、人の手による部分に起因する実験誤差は、センサの性能とは関係がないのにも関わらず、それもセンサの誤差の範囲として考慮されてしまう。特に、バイオセンサの研究では、標準溶液を作製するために、マイクロピペットを操作して、微量の生体由来の試料の濃度を調製する。例えば、わずか1µg/mL以下の抗体や抗原から1pg/mLの試料溶液を調製するためには、3回以上のマイクロピペットの操作を行ってその濃度を調製している。そのため、回数を重ねる毎にピペットの操作誤差が積算されて、微小領域における濃度の誤差は無視できないほどの大きさになってしまうことがある。そこで本研究では、人の手を介することなく、自動的に特定の濃度の標準溶液を作製する技術の開発を行った。これまで、マイクロ流路中の溶液の切替え方式では、スイッチングバルブが使われてきたが1-3、これは他に有効な代替するものがなかったためである。しかし、スイッチングバルブでは、その構造から内部にデッドボリュームが生じてしまうため、マイクロ流路中でこの目的のために使用することは難しい。また、電磁バルブを用いたマイクロ流路中での溶液の切替え方式では、電磁バルブに常に電圧を印加しなければならないために、熱を生じさせてしまう課題がある。この熱の課題は非常に重大であり、マイクロ流路中で電磁バルブを30分間程度使うだけで、溶液温度を80°Cにまで熱してしまう。そのため、これまで電磁バルブをマイクロ流路システムやトータルセンシングシステムで用いることはできなかった。

そこで、本研究では、温度上昇を抑止するために、低電圧で電磁バルブの開閉を維持できる回路を組み込み、従来の電磁バルブによる溶液温度上昇の課題を対策した。更に、超小型の電磁バルブ・ペリスタポンプと組み合わせた自動濃度調整モジュールを開発した。開発した装置(Fig.1)では、人の手によるマイクロピペット操作を再現し、電磁バルブの開閉のタイミングによって標準溶液の正確な濃度調製を実現した(Fig.2)。

Fig.1 diagram (a) and image (b) of the automated sample preparation module.

Fig.2 calibration curve (with error-bar) of red dye standard solution adjusted by the automated sample preparation module.

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