第92回日本産業衛生学会(2019/5/22)


光照射モジュールによるホルムアルデヒド分解と作業環境改善

 


〇内藤敬祐1)、後藤一浩1)、中家隆博2)、安田知恵2)、清原一益3)、吉田晃至3)、石田尾徹4)、保利一4)
 

1) ウシオ電機株式会社、 2) 関西環境科学株式会社、 3) 昭和電機株式会社、 4) 産業医科大学

 

1.目的 

 ホルムアルデヒドは病理検査、解剖実習などで使用されているが、毒性が高く管理濃度0.1ppmであり、実際の作業現場においてはニオイなど多くの課題があり、様々な研究報告がされている1)。 

 一方、平成24年7月に労働安全衛生法有機溶剤中毒予防規則等の改正により、多様な発散防止抑制措置が認められることとなった2)。特に欧米では空調負荷の削減を目的として、屋外排気ではなく、浄化した空気を室内に戻す方法が推進されており、既に装置が市販化されている。日本でも同方式の推進が行われているが、現在までに登録されているのは130台程度3)であり、普及しているとは言い難い。 

 このような背景のもと、我々はダクトレスの発散防止抑制装置の開発を行っている。今回は、開発中の光照射モジュールのホルムアルデヒド分解能力を測定したので、結果を報告する。 
 

2.実験方法 

 市販のドラフト型局所排気装置(MHT-0706STAC:昭和電機)の排気経路に光照射モジュール(開発品300W:ウシオ電機)を取付けて実験を行った。風量は排気装置の設定値を変更することで調整し、ホルムアルデヒドはパラホルムアルデヒド(168-20955:富士フィルム和光純薬)を加熱気化させ、測定点で所定の濃度が得られるよう調整した。ホルムアルデヒドの測定にはPID式VOC濃度計(Tiger 11.7eV ppb仕様:理研計器)、ガス検知管(91L, 91M:ガステック)を使用した。また、DNPHサンプラーと高速液体クロマトグラフィーによる分析も実施した。 
 

3.結果および考察 

 風量に寄らずホルムアルデヒド濃度が20ppmになるよう入口ガス濃度を調整し、風量を2m3/minを上限に振って分解特性を測定したところ、適正流量では8割以上のホルムアルデヒドの分解が確認できた。複数灯接続や循環式とすることにより、作業環境基準の0.1ppm以下まで除去可能であると考えられる。今後はより広範囲で当モジュールを使用して頂くために高効率化を行っていく方針である。また、当技術は吸い込んだホルムアルデヒドを分解するものなので、発生源から確実に揮発したホルムアルデヒドをモジュールに導入する気流制御技術が必須となる。 


【参考文献】 

1.  新村浩一他著:解剖学実習室ホルムアルデヒド環境の改善手法に関する研究、 
  空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集、2007年 

2.中央労働災害防止協会:有機溶剤作業主任者テキスト、2017年第8版 

3.西田和史著:労働環境における工学的対策の変遷と今後の展望(行政の立場から) 
 「発散防止抑制措置について」、第58回日本労働衛生工学会・第39回作業環境測定 
    研究発表会共同シンポジウム抄録p192-193, 2018年 

  
 

Copyright © USHIO INC. All Rights Reserved