日本結晶成長学会 第13回 ナノ構造エピタキシャル成長講演会

リジェール松山(ハイブリッド開催)(2021)


下部トンネル接合を有する青色端面発光レーザダイオード 


 

稲垣徹郎1, 三好晃平2,  竹内哲也1, 上山智1, 岩谷素顕1


1名城大学理工学研究科
2ウシオ電機株式会社 

 

   

背景

近年、下部にトンネル接合コンタクト層を用いた青色端面レーザダイオード(LD)が報告された[1]。この構造では、基板上にn層、トンネル接合、pクラッド層、活性層、nクラッド層が順に成長され、成長方向と逆方向に電流が流れる。すなわち、分極電荷の影響がN極性面上の従来素子と同様になり、注入効率の改善が期待される。上記、先行研究ではトンネル接合形成に有利なMBE法でエピタキシャル成長を行い、しきい値電流密度は3.4kA/cm2であった。我々は生産性の高いMOVPE法で、同じコンセプトのLDを作製、評価した。 


 

実験内容

作製したLD構造を図1に示す。MOVPE法により結晶成長し、GaN基板上にトンネル接合、続いてpn接合を反転させたLD構造を形成した。埋め込まれたトンネル接合を含むp層のMg活性化のために、エッチングによりp層を露出させた後に、横方向Mg活性化を行った。そのアニール条件は上部トンネル接合構造[2]と同じ条件である酸素雰囲気、725℃、30分であった。その後、図2に示す、共振器長1.5mm、リッジ幅15μmの端面発光LDを作製し、評価した。 



図1 下部トンネル接合を有するレーザー構造



図2 端面レーザの概略図


 


 

結果および考察

図3にパルス駆動時のJ-V-L特性を示す。波長447nm、しきい値電流密度1.5kA/cm2での発振が確認された。我々の知る限り、MOVPEで作製された下部トンネル接合LDの初めてのレーザ動作である。一方、劈開ミラーでのスロープ効率は0.42W/Aと、我々が作製した従来のpn接合LD(約0.8W/A)と比べて低く、注入効率の改善は見られていない。また、立ち上がり電圧も10Vと高く、トンネル接合の低抵抗化も必要である。 




図3 J-V-L特性




 

謝辞

本研究の一部は、文科省「省エネルギー社会の実現に資する次世代半導体研究開発」、私立大学研究ブランディング事業、新学術領域研究[16H06416]の援助によって実施された。



 

参考文献 

[1] Henryk Turski, et al. Proc. of SPIE Vol. 11280 1128010-1 (2020). 

[2] Y. Kuwano, M. Kaga. T. Morita, K.Yamashita, K.Yagi, M. Iwaya, T. Takeuchi, S. Kamiyama and I. Akasaki, Jpn. J. Appl. Phys. 52 08JK12.(2013) 


 

Copyright © USHIO INC. All Rights Reserved