室内環境学会学術大会
(2022/12)


222 nm紫外線による室内微生物の増殖抑制



 

内藤 敬祐1   寺田 庄一1      西尾 謙吾1

ウシオ電機株式会社
 


 

Abstract:

Low-pressure mercury lamps at 254 nm have been widely used for the sterilization of microorganisms, which are harmful not only to living organisms, but also to human health. Recently, UV-C irradiation at 222 nm has successfully exhibited an inactivating effect on microorganisms, which is safe to use for living spaces. In this work, we have confirmed the effects in inactivation and bacteriostasis of UV irradiation at 222 and 254 nm, using four types of fungi under illuminance conditions in living space. A dose of 0.25 µW/cm2 at 222 nm had a bacteriostatic effect.


キーワード:222 nm、紫外線、静菌


 

1.緒言

200–300 nm波長帯のUV-C紫外線を用いた殺菌には254 nm水銀ランプが広く用いられてきた。この波長は皮膚がんや白内障を引き起こす可能性があるため有人環境での使用は避けられてきた。
近年、222 nm紫外線は微生物に対して不活化効果を示すが、生体に対する安全性が極めて高いことが複数の医療機関や大学で確認され、有人空間での使用事例が報告されている1)。今回は、有人空間で使用可能な照射量の222 nm紫外線を用いて、生活空間で身近な微生物に対する不活化効果及び静菌効果を調査した。

 

2.方法

実験に用いた微生物は以下の4種である。
 Cladosporium cladosporioides NBRC. 6368,
 Penicillium citriumu NBRC. 6352,
 Aspergillus niger NBRC. 105649,
 Aspergillus fumigatus NBRC. 33022,
それぞれポテトデキストロース寒天培地(PDA培地)を用いて、25℃にて7日間培養し、胞子を形成させ、PBS(-)で胞子を回収し、106 CFU/mLに希釈したものを試験液として使用した。
不活化効果は、試験液をφ35 mmの滅菌されたプラスチックシャーレに3 mL投入し、紫外線を所定量照射したのちに回収、寒天培地に0.1 mL塗抹したのち所定条件で培養し、コロニー数を計測することで算出した。使用した照射光源は222 nmエキシマランプ(UXFL70-222B4-UIA、ウシオ電機)及び254 nm殺菌灯(SUV-6、アズワン)で、それぞれ液面における照度は0.1 mW/cm2とした。
静菌効果は上記試験液を希釈し、寒天培地に0.1 mL塗抹した際に約300 CFU/mLとなるよう調整したものに加え、中央に菌糸を植菌したものを試験平板とし、各種真菌の培養条件となる温度内に静置したのち、紫外線を照射、7日間継続し、試験平板に形成されるコロニー数の差を確認する方法で確認した。照度は工業規格における許容暴露量以下となるよう、0.1, 0.25及び0.76 µW/cm2の3条件で行った。
 


3.結果

各種胞子液に対する不活化効果の実験結果をFig. 1に示す。 Aspergillus fumigatusは222 nmの不活化効果が254 nmと比べ大きく、Cladosporium cladosporioidesも222 nmのほうが感受性が高い。他2種は波長による違いは確認されなかった。
静菌効果は4種の真菌全て及び全照度条件にて効果が確認された。紙面の都合上222 nm at 0.25 µW/cm2結果のみをFig. 2に写真で示す。
    
                 (a)Aspergillus fumigatus NBRC.33022



               (b)Cladosporium cladosporioides NBRC. 6368


                 (c)Penicillium citriumu NBRC. 6352


                 (d)Aspergillus niger NBRC. 105649

              Fig. 1 UV sensitivities of various microorganisms





               Fig. 2 Bacteriostatic effect of 222-nm irradiation

          

 

4.考察

IEC規格に定められるヒトの紫外線の許容暴露量は1日あたり22 mJ/cm2@222 nm、6 mJ/cm2@254 nmである。今回の不活化試験結果より、有人空間での使用においてUV-Cによる真菌胞子の不活化は困難であり、無人時に照度を上げるなど照射器または運用上の工夫が必要であることがわかった。
しかし、0.25 µW/cm2という極めて弱い照度においても有意な静菌効果が確認された。この条件は24時間連続照射で21.6 mJ/cm2であり、許容暴露量の範囲内であるため、有人空間で使用可能である。失活に満たない露光量であっても静菌効果が得られることより、有人空間における弱照度のUV-C使用は衛生環境を向上させる効果があると推定される。



 

5.まとめ

真菌4種について222 nm及び254 nm照射の失活効果、静菌効果の確認を行った。有人空間で使用可能な露光量では真菌の失活には工夫が必要であるが、静菌効果は得られた。222 nmの許容暴露量はIEC規格改訂の議論が現在行われていることから、有人空間で高照度での使用が可能になり公衆衛生により貢献すると想定される。



 

6.文献

1) H. Kitagawa. et al., Photodiagnosis Photodyn. Ther., 34, 102334 (2021)




 
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