石英ガラス
解説
石英ガラスとは、二酸化珪素(SiO2)からつくられるガラスで、通常のガラスに比べ、SiO2の純度が高いものを言う。
石英ガラスは、結晶構造を持たず、SiO4の正四面体を単位として不規則に結合している。これにより生じるずれを、不純物や欠陥構造が補償している。この結果、製法や不純物濃度の違いにより、特徴的な特性を示す。
一般的な特長としては、透光性が良い、耐熱性が良い、耐薬品性がよい、不純物が少ない、などがある。また、複屈折がなく、結晶石英よりも低い屈折率を有する。
用途には、照明用、光学用、理化学用、半導体工業用、液晶用、光ファイバ用などがある。
<石英ガラスの種類>
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溶融石英ガラス
天然の水晶の粉末を酸水素火炎や電気(アークプラズマや電磁誘導コイル方式の電気炉)などで溶融し、冷却した固体物質で非結晶質のガラスを形成する。原料に使う天然の水晶には、金属不純物が10〜100ppm程度と比較的多く含まれるが、コストメリットから多くの用途で使われる。
近年、精錬技術の向上に伴い、金属不純物の濃度は格段に減少している。
溶融石英ガラスは半導体製造用(炉心管、治具、洗浄槽)、ランプ部材などいろいろな用途に応用されている。 -
合成石英ガラス
化学的に合成した不純物の少ない、ほぼ100%の二酸化珪素(SiO2)から成るガラス性物質。通常、液体材料(SiCl4等)から作られる。
溶融石英ガラスに比較して、光学的な均質性や紫外線域や近赤外線域の透過特性に優れ、レンズやプリズムなどの光学部品用材料として、また、半導体や液晶製造用フォトマスクとしても使われる。
天然水晶を溶融して作った溶融石英ガラスとは区別して呼ばれる。
※水晶(rock crystal)は、鉱物名を石英(quartz)というが、石英ガラス(quartz glass)とは異なる。
水晶は結晶(crystal)であるが、石英ガラスは非晶質(amorphous)である。ガラス転移を経て溶融状態から固体になった、結晶ではない固体をガラスといい、一般的にはガラス転移を示す無機物質のことを指す。しかし、石英ガラスでは、一般のガラスのようにガラス転移がはっきり観測されない。
※結晶(クリスタル)は、原子がある程度の幾何学的規則性(単位構造の10倍程度の長距離秩序)をもって配列されている固体物質。たとえば、天然の、または合成された圧電物質や半導体物質である。
※クリスタルガラスは、完全に透明な鉛ガラスの一種で、容易にみがき仕上げができ、高屈折率を有する。歴史のそれぞれの段階で到達することのできた透明なガラスを水晶(ロック・クリスタル)にならって、いつしか、クリスタルまたはクリスタルガラスと呼ぶようになった。
したがって、クリスタルガラスはクリスタル(結晶)ではなく、あくまでもガラスであることに注意を要する。
<石英ガラスの英語表記>
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vitreous silica
全ての種類の石英ガラスに対する総称 -
silica glass
材料分野では正しい用語とされている。英語ではシリカ系ガラスの名称とまぎらわしいのでvitreous silicaがよく使われる。 -
fused silica
溶融法で製造する全ての石英ガラス -
synthetic fused silica
合成石英ガラス -
fused quartz
石英粉を直接溶融して作った石英ガラス -
quartz glass
fused quartz と同義語
quartz:シリカの結晶形で水晶(rock crystal)のこと。水晶の鉱物名を石英(quartz)という。
俗に、石英ガラスのことをいう場合もあるので注意がいる。